アジア金属マル秘発掘報告 〜インド|SERPENTS OF PAKHANGBA〜

アジアのメタルシーン
埋もれた秘宝を発見せよ!世界各地にはまだまだ知られざるバンドがうごめいている。ここではアジア圏に的を絞って探りをいれて掘り起こし、簡単な調査報告をしていく。その価値は未知数。
今回は即興演奏を取り入れたインドのアヴァンギャルドなオカルト・アート集団SERPENTS OF PAKHANGBA。
金属名:SERPENTS OF PAKHANGBA
産出地:マハーラーシュトラ州ムンバイ
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神秘なる存在の目覚め

それが実在する存在だったのか、もしくは今も実在しているのかは謎ではあるが、竜神や蛇神は世界のあらゆる国や地域で信仰と恐れの対象であり続けている。

さらに“Dragon(ドラゴン)”や“Serpent(サーペント)”と名の付く映画やアニメ、ゲームはもちろん、バンド名の中にもこれらの単語が組み込まれるのを目にすることが多い。つまり、その神秘性に魅了されたり憧れのようなものを抱く人々がどれほど多いのかの表れでもある。

さて、今回はそんな神秘的な竜/蛇神の名を冠したインドのバンドを紹介しよう。

中心となる人物はインド第二の都市ムンバイを拠点としているVishal J.Singh

祖母を含めた母方の家族がミュージシャンであったり、近親者が音楽好きという家庭環境で育ったことからクラシック、伝統音楽、ジャズ、フォークなどあらゆる音楽スタイルを聴いていた。そして彼の音楽的感性の鋭さに着目した両親の勧めもあってドラムやギターなどの楽器にも早くから触れるようになる。こうしてVishalは現在、複数の楽器が演奏できる映画音楽などの作曲家として活躍しているのだ。

また、作曲家としてだけではなく、ジャンルを問わずメタルからエレクトロ、ポップまで幅広い作品をプロデュースしてその手腕を振るうほか、INFINITE ASHESFEATHERS OF JATINGATHE FRACTURED DIMENSIONROBOTS PULLING LEVERSHOLOKAUSTVSTなどのバンドでも活動している(してきた)。

しかし、Vishalの名前を世界のメタル・マニアに知らしめたのはAMOGH SYMPHONYである。2009年のデビュー・アルバム『Abolishing The Obsolete System』を皮切りに単独で開始した彼のこのプロジェクトは、アルバムを出すごとに国外の一流ミュージシャンを徐々に加入させていくことになった。

近未来テクニカル・メタルの頂点となった2ndアルバム『The Quantum Hack Code』(2010年)では米国人と2名で。ジャンルのみならず次元をも超越し始めた3rdアルバム『Vectorscan』(2014年)はロシア人を加えた3人で。そして2019年の4thアルバム『Ⅳ Part 1』『Ⅳ Part 2』では、ロシア、ポルトガル、ドイツ(元OBSCURAのギタリストTom Geldschläger aka Fountainhead)からメンバーを集めて4人編成へと進化。ジャズ、メタル、エレクトロ、そして伝統音楽も取り込みながら先進的かつ前衛的に展開する圧巻の作品となった。いや、もはやそれは作品というよりは宇宙であり、精神世界の如き深さと広がりを感じさせると言ってもいい。

AMOGH SYMPHONY「Birds」

2019年に発表した『Ⅳ Part 2』に収録。

AMOGH SYMPHONY「Everything Is Now - In The Eye Of The Sun」

2019年に発表した『Ⅳ Part 1』に収録。
このAMOGH SYMPHONYによって、“天才”“奇才”と呼ばれるようになったVishal。彼が近年になってSERPENTS OF PAKHANGBAなる新たなバンドを開始したのだ。

変化自在の最高神

SERPENTS OF PAKHANGBA。このバンド名に組み込まれたPakhangba(パカンバ)とは、インド北東部に位置するマニプル州の主要民族であるメイテイ族に伝わる古代の竜神の名だという。

そしてその神話/伝承に登場するPakhangbaの特徴は自身の姿を自由に変えられること。SERPENTS OF PAKHANGBAはその柔軟なPakhangbaの性質を音楽に当てはめたサーペントたちなのだ。それは、フォークな要素とフリー・スタイルの即興を取り入れながらジャズ、ロック、メタル、アヴァンギャルドにヌルヌルとジャンルを移行していく変化自在の実験的音楽の芸術。

さらに彼らを特異なものとしているのはオカルティックな神秘性を発揮していことなのだが、それは追って触れていく。

SERPENTS OF PAKHANGBA第1形態

SERPENTS OF PAKHANGBAが鎌首をもたげるのは2019年。

最初に発表されていたメンバーは以下の通り。

Madhura Risley:ヴォーカル、スポークン・ワード、カズー
Vishal J.Singh:ギター、オーケストレーション
Manas Chowdhary:ベース、ディジュリドゥ
Fidel Dely Murillo:ドラム、パーカッション、ハンドソニック
Dhruv Mody:シタール、クラシカル・ヴォーカル、チャント、パーカッション
さらに、Kshitija Suryavanshiというダンス・パフォーマーも関わっている。

美術を学び、神秘世界へと進んだ女性ヴォーカリストのMadhuraはタロット占いやヒーラーとしての能力も持ち合わせている。ドラマーのFidelはパナマ出身でメタルからジャズ、ファンク、ラテン、EDMなど国境とジャンルを超えて活動中。シタール奏者のDhruvはタブラや南インドの古典音楽であるカルナーティックのヴォーカル・スタイルを学び、一時期はニュージーランドで活動していた経験もある。ベーシストのManasはアッサム州生まれでメタルからフュージョン、ブルーズ・バンド、あの世界的に有名なパーカッショニストTrilok Gurtu、さらにはサーランギ、シタール、サントゥールといった民族楽器のマエストロとの共演、映画音楽にも携わってきてた人物だ。

当時、MadhuraDhruvManasの3名は、Vishalと同じくムンバイを拠点としていたが、Fidelはニューデリー在住だった。

まずは、AMOGH SYMPHONYとは別の新しいバンドに着手した動機と、その人選について尋ねてみた。


Vishal:ネオフォークの要素を入れつつも前衛的かつ実験的でたくさんの即興演奏をベースにしたバンドを結成したいと思っていた。そこで、即興演奏に長けていているだけはなく、楽譜に載っている曲や作曲した曲の演奏も得意な地元のミュージシャンを探していたんだよ。Manasは2013年から知っていて、ボリウッド歌手として有名なMohit Chauhan(モヒット・チョウハン)が、リアリティ番組の音楽制作セッション中に彼を紹介してくれた。でも、実際にManasのことを良く知ることができたのは、AMOGH SYMPHONYの3rdアルバム『Vectorscan』に収録されている「Weather Report」という曲で彼にコラボレーションを依頼した時だよ。それ以来、彼と僕は「なにかバンドを組んでみよう」という話をするようになったんだ。また、Madhuraは共通の友人を通じて、DhruvとはBenchmark Studiosでのジャム中に出会った。その頃、ニュージーランドからインドに戻ってきたDhruvは、より多くのミュージシャンたちとの実験的なジャムを楽しみにしていたから、彼にBIRDS OF FIREの初リハーサルに参加しないかと誘った。実は当時、SERPENTS OF PAKHANGBABIRDS OF FIREという名前だったんだよ。Fidelは3年ほど前にインドに引っ越してきて、ニューデリーに滞在していたんだけど、Facebookで繋がって、彼の音楽に対するビジョンを理解するためにレストランでのランチに誘ったんだ。そしてその数日後、彼をジャム/リハーサルに招待することになった。2日間の強烈なライブ・レコーディング・ジャムを行った後、僕たちはSERPENTS OF PAKHANGBAというバンド名で2曲入りのEP(2019年3月にBandcampにて発表)に取り組むことを決定したんだ。だけどMadhuraはイギリスに帰らなければならず、Dhruvは演劇の演技のキャリアに集中していた。そういう経緯があって、自分とManasFidelが残り、このバンドの中心メンバーとなったというわけ。

AMOGH SYMPHONYとSERPENTS OF PAKHANGBAの違い

彼の話でおおよそは理解できたはずだが、ここで今一度、AMOGH SYMPHONYSERPENTS OF PAKHANGBAの違いについて整理してもらおう。

なぜなら、どちらのバンドも音楽ジャンルをまたいで音楽を創造する前衛的でプログレッシヴな方向性を持っており、初めてその音に触れる人は戸惑ってしまう可能性もあるからだ。


Vishal:この2つの異なるバンドに共通している一つのことは、マルチジャンルのアプローチであること。けれども、AMOGH SYMPHONYはより構造化された複雑な曲作りのアプローチで、自由な即興要素が控えめであるのに対し、SERPENTS OF PAKHANGBAは、よりシンプルな曲作りのアプローチとより多くの自由な即興要素を持っているんだ。そして、AMOGH SYMPHONYは4人のマルチ奏者にしてプロデューサー兼ソングライターの集団。一方、SERPENTS OF PAKHANGBAは4人の演奏者のうち1人がメイン・ソング・アレンジャーなんだよ。

隠された起源と伝説のパカンバ

バンド名に使用されているPakhangba(パカンバ)がマニプル州の主要民族であるメイテイ族に伝わる古代の竜神の名であるということはすでに話した通りだが、現在、マハーラーシュトラ州ムンバイ在住のVishalはアッサム州生まれのはず。その彼が、メイテイ族やマニプル州となる以前のカングレイパック/マニプル王国の紋章や神話/伝承に登場するPakhangbaを取り上げたのはなぜだろうか。


Vishal:自分はメイテイ/マニプリの父、そしてアッサムとパンジャブの混じった母の混血なんだ。生まれはアッサムなんだけど、僕らが“Ipa”と呼んでいた我が家のシャーマンのグルはマニプル出身だった。そして僕はその出自からメイテイ族だと言われている。


なるほど。Vishalのルーツに関連していたからということか。けれども、続く彼の言葉の中には、より深い意味と意義が込められてるように思う。


Vishal:さらにその自分の起源から、僕は古代メイテイ族のシャーマンの伝統と文化の一員であるわけ。けれども、それは時代の流れとともに習合されたり、隠されたり、ヒンドゥー、キリスト、イスラム教の宣教師などによって改宗させられていったものなんだよ。カングレイパックの起源はチベット人とモンゴル人の末裔に由来する。そしてPakhangbaは古代カングレイパックの伝説に登場する女神や神々の中でも最高の神なんだ。その神が持つ最大の力の一つは自身の姿をあらゆる形態に変化させることだった。けれども残念なことに、政治と宗教の関係で、カングレイパックとメイテイ族の起源を証明する文書はほとんど残っていないし、隠されてしまった。このカングレイパックや古代マニプルの歴史については多くの作家が本を残していて、そのうちのいくつかは今でもインターネット上で見ることができるけど、それらほとんどの詳細な情報源はもうどこにも見当たらないのさ。

オカルト・アート集団登場(2019)

SERPENTS OF PAKHANGBAは2019年3月4日に「Invocation」(約5分)と「Thus Sings The Midwife Of Planetary Transformation」(約11分)の2曲を収録したセルフタイトルのデビューEPをリリースする。
SERPENTS OF PAKHANGBA『Serpe...

SERPENTS OF PAKHANGBA『Serpents Of Pakhangba』EP(2019)

収録曲
01.Invocation
02.Thus Sings The Midwife Of Planetary Transformation
古代文字をバックにライオンの頭を持ったヘビが描かれたアートワークは怪しさたっぷりだ。

Vishalの説明によれば、これはEPのアートワークの話をしていた時に、MadhuraからPakhangbaやカングレイパックの伝統のコンセプトにとても似通った未完成のスケッチがあるという話を聞きいたことから、彼女に依頼して、デジタルではなく、紙を使った完全に手描きの絵を採用。このアートワークで表現されているものは、カングレイパック、そしてPakhangbaの姿を変える能力とのこと。

SERPENTS OF PAKHANGBA「Thus Sings The Midwife Of Planetary Transformation」

アートワークもそうだが、音楽はさらに怪しげな雰囲気だ。

本EPでは、宇宙と精霊に呼びかけるがごとき儀式的な「Invocation」によって導かれるようにジャジーでアヴァンギャルドな神秘の宇宙へと広がる「Thus Sings The Midwife Of Planetary Transformation」へと繋がっていく。

本EPを発表した時点で、彼らは“ライト・ランゲージを取り入れたアバンギャルド/ノイズ/オカルト・フォーク・バンド”であると自分たちを定義づけていた。

それはメンバーの中に、オカルト・フォークシンガー、タロットカード使い、俳優、劇作家、スピリチュアル・モチベーショナル・スピーカー、サウンド・アート・セラピストが在籍しているからである。

あらゆる分野に秀でた多芸な彼らは、どのようなアプローチを取りながらこの摩訶不思議な音楽を制作しているのだろうか。


Vishal:アバンギャルドなアプローチで実験的なネオフォーク/ダーク・フォーク・バンドを結成するというアイデアが先にあったんだけれども、その鍵となるものが欠けていた。当時、バンドのヴォーカルを務めていたMadhuraは、熟練した巫女であり、タロットカード使いだったのさ。そんな彼女と僕はオカルトの実践や占星術に関する事実や誤解についてよく話し合っていた。そうするうちに特定の歌詞や賛歌といった形式を採用することなく、“ライト・ランゲージ”を媒体にして即興的なトライバル・ヴォーカルで歌うというのが素晴らしいことなのではないかと考えるようになった。また、シタール奏者のDhruvは演劇俳優で劇の音楽も作曲している人物なんだけど、僕は彼からいくつかのアドバイスを受けて、演劇的な“メソッド演技法”のアプローチを音楽に持ち込むようにしたんだよ。ただし、SERPENTS OF PAKHANGBAの音楽とパフォーマンスにおける演劇的な部分は、まだ研究段階にある。今、世界はパンデミック下にあるから難しいけれども、事態が落ち着いたら、もっと訓練を重ねていくよ。それと、「Invocation」「Ima」(2020年発表の『Serpents Of Pakhangba』に収録)などの詠唱にサウンド・セラピーの要素を取り入れている。音楽というものは、時には空虚さや闇を、また、時には演劇的な奇異さを表現し、さらにはヒーリング・セラピーの要素をも持ち合わせているものなんだよ。


VishalDhruvの指導により採用した“メソッド演技法”とは、“役柄の内面に入り込み、その本人になりきることで無意識にその役柄にとっての極自然な表現をする”ということ。何かを表現する場合は多かれ少なかれ何かになりきっているものだと思うが、彼はそれを意識して大体的に取り入れた。

超常現象を体験したこともあるVishalは、これまでにも、心や精神状態、形而上学、催眠術などを学び実行してきた。万事を深くみつめ、思考と実践を続けることで、ただ音楽的に高等な技術を身につけただけでは到達できない領域へと彼は歩みを進めている。おそらくそれは、音楽がエンターテインメントやビジネス要素を強く帯びるようになるはるか昔、祭祀の一環であった頃に人々が音楽に対して向き合っていた姿勢そのものではなかったか。さらには、これから起こり得る貨幣経済終焉後に誰もが進む道なのかもしれない。

ライト・ランゲージ。それは光の言語、全宇宙共通の言葉

“ライト・ランゲージ(Light Language)”とは、そのまま“光の言語”、もしくは“宇宙語”や“多次元語”などと呼ばれ、高次元のエネルギーを声や身振り手振り、文字などを通して伝えたものであると言われる。

しかもそれは、我々が一般的に認識している地球上で話されている言語とはあからさまに異なるものだが、意図するエネルギーと繋がれば考えることなく自然と話し続けられるようになるのだとか。例えば、それが人の口から発せられた場合、文法や特定の法則のようなものがあるわけではないので、同じような内容だとしても表層に現れる音は人それぞれ異なる。

言葉と言うとわかりづらくなるかもしれないが、おそらくそれは頭で理解できる言語とは異なり、DNAへ、そして潜在意識や心に直接響く高次元からの波動と捉えれば良いのかもしれない。

では、“ライト・ランゲージ”を使用することで何が起こるのか。

その使い手たちの話によれば、メッセージを伝えるのみならず、かなり多くの素晴らしい効果が得られるようだ。しかし、スピリチュアル偏差値が高めでないと理解するのが容易ではないため、要約すると、DNAや細胞といった身体や精神などのヒーリング、調整、浄化、活性、解放へと導く力があるのだという。

と言ったとことで、この目に見えないエネルギーの作用などという話は、所謂“いかがわしいスピリチュアル系”の話であって信じがたいものとして映る人も多いだろう。

しかし、黒曜石の矢尻、石斧、土器などの遺物、ドルメンやメンヒルといった巨石遺跡、ペトログリフ、または樹木に触れた時など、良きにつけ悪しきにつけ“なにか”を感じたことはないだろうか。古代の遺跡にはメッセージが込められていて、受信さえできればものすごいインスピレーションが流れ込んでくるとも言われているし、樹木にはヒーリング効果もあると聞く。

それすらも「胡散臭いスピリチュアル話だ」と言われてしまえばそれまでかもしれないが、所有者を次々と不幸に陥れていく宝飾品などの品々は世界各地に存在するし、霊が宿っていると言われる人形もある。日本ならば言霊の存在、お守りによって救われた話もあれば、パワースポットに訪れたり、その場を携帯電話の待ち受け画面にするという行為はどうだろう。それに誰だってネガティヴよりはポジティヴ思考の人の周りにいたいはずで、なによりも“愛”というものがあるではないか。これらは信じる信じないに関わらず見えないエネルギーが及ぼす影響を多くの人々が感じ取っていることの証ではないか。

え? まだ信じられない? ではさらに身近な例を挙げよう。

自動車運転免許更新で配布される『わかる 身につく 交通教本』にも鉄則として「見えないことは存在しないことではない」とあるではないか。……あ、これはただ“死角に注意せよ”ってことか。

では、「目をつぶってごらんなさい。見えないものが見えてくるから」と言う怪談界のパイオニア稲川淳二の言葉を是非とも試してみてほしい。ホラ、あなたの背後に、扉やカーテンの隙間に、階段を上がったその先に何者かが潜んでいるのを感じないだろうか……。夜、お風呂場で目をつぶって頭を洗うのが、そして布団から足を出して寝ることが怖くなったのならば、あなたはすでに見えないものの存在を感じているということ。フフフッ。

閑話休題。強いて言えば、現代は英語が世界共通語に近い役割を果たしているように見えるが、それすらも地域差や個人差があってまったく万能ではない。その一方で、すべての生命体の言語の根幹にして心の奥底にある嘘偽りなき純粋なものが“ライト・ランゲージ”であり、種を超えて響き合うポジティヴな愛と調和の波動ということになるのだろう。

この“ライト・ランゲージ”を操って表現/伝達しているところがSERPENTS OF PAKHANGBAの特異点だと言える。

なお、“ライト・ランゲージ”はヴォーカルの即興部分で使用されているが、曲としてはデビューEPの「Thus Sings The Midwife Of Planetary Transformation」のほか、フルレングス・アルバム『Serpents Of Pakhangba』(2020年5月27日発表)の「The Forest Belongs To The Maibi」「Vultures」そして、最新シングル「The Calling / The Name That Shall Not Be Uttered At Night」(2020年7月31日発表)などで聞くことができる。

SERPENTS OF PAKHANGBA第2形態

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バンドはデビューEPから約1年後の2020年5月27日に1stフルレングス・アルバム『Serpents Of Pakhangba』を発表した。

多忙なメンバーを抱えながら様々な要素が入り混じった楽曲制作を行っていることから曲作りにはかなり時間を要するのではないかと想像していたが、“ライト・ランゲージ”を含めて即興的な要素が強いからだろうか、思いの外、早いペースでの登場となったように思う。

ただしその間、前述にもあるように、メンバーの変更が行われている。

今回メンバーとして名前があるのは以下の人々。

Aruna Jade:ヴォーカル、カゾーボ(大型のカズー)、シンセ
Vishal J.Singh:ギター、ギター・シンセ
Fidel Dely Murillo:ドラム、パーカッション、コンゴ、ハピドラム
Manas Chowdhary:ベース、ディジュリドゥ、アナログ・エフェクト
さらに「Ima」ではヴァイオリン奏者Tamara Mayelaが参加。

まとめると、女性ヴォーカリストのMadhura、シタール奏者のDhruv、ダンサーのKshitijaが脱退して、新たにAruna Jadeというこれまた女性のヴォーカリストが加入したことになる。以前と比べてコンパクトな4人編成となった。


Vishal:Madhuraはイギリスでの仕事もあって、クリエイティヴに何か違うことをやりたいと思っていた。Kshitijaとの創造的な相乗効果はうまく作用しなかったけど、彼女はとても才能のあるダンサー/パフォーマーだよ。そしてDhruvはこれまで以上に演劇俳優としての職業に集中していくことになった。そこで、正しくしっかりとした歌唱法で歌えるヴォーカリストを探すことにしたんだ。つまり、音楽を勉強したことがあって、なおかつ新しいことを学ぶのに十分な決意と興味、そして忍耐力を持ち合わせている人をね。そうなると適した人物を探すのに時間がかかってしまい、バンドの活動はすっかり停滞してしまった。EPの発表後、何人かの才能ある女性ヴォーカリストたちと一緒に試してみたんだけど、みんな信じられないくらい素晴らしかったよ。でも最終的には、Arunaが新しいデモ・トラックに録音したものを聴いて、僕らメンバー全員で彼女に決めたんだ。その新しいトラックは「Vultures」という曲。彼女はほかの人にはない独特なものを持っていて、清々しいのに神秘的かつ風変わりで、“変化自在”でもある。


新ヴォーカリストのArunaは自由に姿を変えられるPakhangbaと共通する神秘的な才能を持っているということだ。

また、余談ではあるが、とても清涼で透明感のある声からだみ声までを駆使してシアトリカルに表現する彼女の歌声に耳を傾けていたところ、山口県の新谷酒造という夫婦で醸す小さな蔵の日本酒『わかむすめ METAL Bunbun』の味わいが脳裏に浮かんだ。

これはMETALLICA好きだという女性杜氏(新谷文子)が手掛けたお酒で、口に含んだ瞬間とても瑞々しくクリアでほのかな甘みを感じさせつつも、最後は味に厚みを持たせながらビシッと超辛口(+12)で力強く締めるという幅の広さと抜群のインパクトを堪能できる。だから濃い味わいの料理にも負けないし、頑固な酒飲みもちょっと逆らえずに手玉に取られてしまうはず(苦笑)

女性が生み出すこのような作品に触れると、相反する要素とその振り幅の大きさだけではなく、だからこその包容力と男性には出せない神秘性を感じて畏敬の念を抱かざるを得ない。

SERPENTS OF PAKHANGBA「Vultures」

演奏するたびに変化する楽曲

先程は楽曲制作に対するアプローチについて述べてもらったが、ここでは4人編成となった彼らがどのようなテーマをもって曲作りを行っているのかを尋ねてみた。


Vishal:最初は主題や概念から始まり、その後に基本的な曲の構造を録音している。すでに気づいていると思うけど、このバンドの楽曲はAMOGH SYMPHONYのように“テクニカル”でも“複雑”でもないんだ。そして、これらの基本的な骨子だけの楽曲をArunaManasFidelたちと共有し、彼らと共に完成させていく。バンドが扱う曲には、メイテイ族の神や女神たちに捧げられたもの、Maibiのシャーマニックな行為や、僕らが聞いた話などがある。そしてSERPENTS OF PAKHANGBAの全体的なサウンドには、女性の持つ能力のMaibiという考え方があるんだよ。


話にできてきた“Maibi”とはマニプリ語(マニプル州の主要言語。メイテイ語とも)で“巫女”という意味合いがあることを教えてくれた。

さて、テーマや楽曲の基本な部分はVishalが最初にアイデアを出し、その後にメンバー全員で細部を仕上げていく形式を取っていることがわかった。では、このシャーマニックで神秘的な楽曲は実際のライヴでどのように表現されているのだろうか。


Vishal:スタジオ・ヴァージョンと同じように演奏することはないんだ。面白いところは、これらの曲をショーごとに“異なった”演奏をするというアイデア。リハーサルやショーでは、計画して演習した“新しい”パートと、その場で即興で演奏するパートが半々なのさ。その際、手や目で合図したり、シャウト、特定の音などを使って舞台上でお互いにやり取りをするのが常だね。ほかにも、僕がわけのわからない言葉でFidelに話しかけると彼はスペイン語で返答したり、4人とも何も言わずにしばらく見つめ合っていたりと芝居ががった部分もある。そういうシアトリカルな部分はまだ多くの手直しが必要だけど、時間とともに改良されていくはずだよ。
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偉大なる母性。『Serpents Of Pakhangba』(2020)

SERPENTS OF PAKHANGBA『Serpe...

SERPENTS OF PAKHANGBA『Serpents Of Pakhangba』(2020)

収録曲
01.Invocation (Lainingthou Pakhangba) 04:35
02.Thus Sings The Midwife Of Planetary Transformation 11:15
03.Vultures 07:05
04.Ima(feat. Tamara Mayela) 05:21
05.Headhunters 05:47
06.The Forest Belongs To The Maibi 05:54
07.Mountain Spirits 06:24
1stフルレングス・アルバムとなった『Serpents Of Pakhangba』のアートワークは深く静かに神秘性を湛えている。アルバム自体とどのような繋がりがあるのだろうか。


Vishal:Madol "Bobo" Mukherjeeという素晴らしいアーティストによる美しいインスタレーション・アートだよ。Madolと親交のあるManasが、この写真を見せてくれたんだ。僕らはアートワークのために数人の非常に才能のあるアーティストたちとアイデアを議論したけれど、その中で実際の写真のようなものが必要なんだとわかった。今回のデビュー・フルレングス・アルバムは、母なる自然、古代カングレイパックの女神と巫女の視点から作られている。そして、偶然にもこのアートワークはそれと同じことを伝えているんだ。僕はこの写真を見ながらアルバムを一日かけて聴いてみて、双方にとても強い繋がりを感じた。そこで、この写真をアルバムのアートワークとして使ってもいいかどうかをMadolに尋ねたところ、彼は快く「はい、どうぞ」と言ってくれというわけ。アートワークを見ていると、平和、謙虚さ、悲しみ、怒り、そして母性が彼女の表情に表れていることに気づくはず。そこで僕らはこれに“Ima”と名付けたんだ。アルバムに収録されている曲の一つだよ。


後の楽曲説明でも触れるが、“Ima”とはマニプリ語で“母”を意味する。

宇宙の営み

ここからはアルバム収録曲に関する話をしてもらおう。

今回のフルレングス・アルバムはデビューEPと同じく「Invocation」から「Thus Sings The Midwife Of Planetary Transformation」という流れで幕を開ける。

「Invocation」では、アルバムのオープニングにふさわしく、宇宙の力を呼び起こし、祖先と母なる自然に祈りを捧げ、Pakhangbaを呼び出して儀式を開始する。前述したように、Pakhangbaはメイテイ族の神話/伝承に登場する最高神。

「宇宙は我々を取り巻きながら共に変化を続け、高さの異なる周期、絶妙なる惑星の巡航と大きな変化が交互に起こっている」と説明がされた「Thus Sings The Midwife Of Planetary Transformation」は、“ライト・ランゲージ”を用いながらトライバルな雰囲気と即興性が強く押し出された曲。これはまさに宇宙と繋がったチャネリング・ソングと言っても良いと思う。


Vishal:大規模な変化をもたらすために、半神の女神は様々な種類の地球外生命体を心と体に入り込ませる。それによって引き起こされた変容は多様な形体をとり、二人のハイブリッドな息子を出産。神秘主義の芸術によって精霊を封じ込める過程を示しながら無限/無/暗黒を説明し、“ライト・ランゲージ”を使って惑星の転換を行う。それゆえに、さまざまな感情(皮肉、怒り、恐怖、悲しみ、欲望、愛、栄光、雄叫び)を表現している。そう、チャネリング・ソングのようなものだね。


難解な表現だが、別の言葉では、「半神の女神が体内に侵入させた精霊の種類に基づいて、様々な気分や形に変化する。それは恋に落ちる過程のようだ。地球外生命体(別の半神または悪魔)と愛し合い、欲望が生まれ、交配し、妊娠、気分のむら、産みの苦しみ、出血、 二人の息子を出産し、そのうちの一人を食べ、悲しみ、皮肉、怒りなどの感情が入り混じった神秘主義、闇の空虚さと、“ライト・ランゲージ”によるオカルト領域での宇宙の支配」だとも説明されている。

まるでギリシャ神話におけるゼウスと彼の愛人の一人ラミアーを彷彿とさせる話のようだ。ともかくも、この曲では複雑に入り組んだ感情を上記のように説明しながら太陽系や銀河系で起こっている変化のメタファーとしている。

人類のダーク・サイドへの警告

メイテイ族の文化や歴史を取り入れながら貪欲さと傲慢さといった人間の暗部に触れた曲もある。

バンドの資料では、それぞれの曲で表現している内容の理解を助けるための簡単な言葉が添えられている。

「Vultures」
一部の人々や団体は、自らの貪欲さを満たすために他者が滅ぶのを熱望している。パラレル・ダーク・ワールド(並行する闇の世界)の存在は、人や他の生物に影響を与え、欲を糧とした自滅と破壊を行っている。

「Headhunters」
ある部族の残忍な暴徒が他の部族のメンバーを殺そうとしている。名誉のために殺すこともあれば迷信のために殺すこともある。血に飢えた暴徒に追われ続けた末に、古代メイテイ族の変化自在の戦士の魂が彼女の体に入ってきた。彼女は空を見上げ、先祖を思い出しながら、その魂のために、そして自分の種族のために宣戦布告をする。そして戦いは永遠に続くのだ。

SERPENTS OF PAKHANGBA「Headhunters」

「暴徒に追われて死ぬことを想像して欲しい。あなたは生き残れるだろうか? 」 と彼らは問いかける。ここで使用されている映像はメタファーとしてのもの。
「Mountain Spirits」
木を切り倒し、森に火をつけ、部族や罪のない動物を苦しめることによって資源を乱用している人間という存在がどれほどまでに貪欲な生き物であるのか。そして近い将来、その人間に襲いかかるであろう暗黒のエネルギーについてカングレイパックの山や森に住んでいる4人の精霊が話し合っている。言い伝えによれば、彼らはこれらの山に存在し、洪水や地震、そのほかの自然災害を介して人間に復讐しようとしているのだとか。

SERPENTS OF PAKHANGBA「Mountain Spirits」

カングレイパック、そしてメイテイ族の歴史と女神たちへ

「Ima」
世界を旅してあらゆる文化の音楽スタイルを吸収したエジプト人とスコットランド人の血を受け継ぐTamara Mayelaの弾くヴァイオリンをフィーチャーした曲。“Ima”とはマニプリ語で“母”を意味する。Arunaが英語で詞を書き、ヴォーカルのメロディに合うように韻を踏んでGiridhar Naoremがマニプリ語へと翻訳した。この歌は、母から私たちへの終わりのない愛のメッセージ。すべての母なる神Pithai KhongdaibiPhou-oibi(稲、収穫、繁栄といった穀物の女神)、Panth-oibi(勇気、ノスタルジア、戦争の女神)、Ereima(水の女神)、Nongthang Leima(雷と雨の女神)、 Imoinu Ahongbi(富、平和、知恵、繁栄の女神)への感謝。そして、母なる自然と、彼女の子供たちのために戦士であるすべての母親への感謝。

SERPENTS OF PAKHANGBA「Ima」

「The Forest Belongs To The Maibi」
カングレイパックの聖なる山林、土地、そして村人たちをイギリス軍の侵略から守ろうとしたMaibi(巫女)三姉妹の話。多勢に無勢を心配した王様。その話を聞きつけたMaibiの三姉妹がそれを阻止するために名乗り出た。長女は親切で賢い国のヒーラー。次女はよこしまでお金のために黒魔術を操る。三女は陽気だが自分の能力には自信がない。そんな彼女たちは、まず、テレパシーのような能力でイギリス軍兵士たちの耳元でささやくように戻ることを警告する。しかし彼らはそれを理解できず歩みを止めることはなかった。そこで彼女たちは意を決してさらなる強力な術を使うことに。かくして地獄の扉は開かれ、軍隊はその中に吸い込まれ消え失せた。けれどもMaibiには掟があったのだ。その力を使って人を殺めれば、能力を失うのみならず、過去の行いによっては命を奪われることもあるというもの。したがって、長女はすべての力を失い、次女は自身のカルマによって死に、三女は人を癒やすことができる自分の能力を信じ始めるようになった。とりあえずは勝利を収めたものの、長女と三女は次女のために祈りながら喪に服すこととなった。

この曲の物語はVishalが子供の頃に聞いた実話を基にして少し手を加えたものだ。というのも、「実際はあまり素敵でもなければ幸せな話とは言えないものだから」とのこと。

バンドは2020年7月31日にデジタル・アルバムには未収のシングル「The Calling / The Name That Shall Not Be Uttered At Night」を発表した。

高い位にある巫女が夜中に森の中で儀式を執り行っている。なにひとつ痕跡を残すことなく一夜にして消滅した王国の手がかりを得るためだ。彼女は“彼ら”と呼ばれる存在を憑依させて幻視や口寄せによってその原因を探っていく。そしてついに手がかりを得た巫女は憑依から開放されて落ち着きを取り戻す。

曲というよりは、儀式の様を描いた神秘のサウンド・アートと呼んだほうが良いほどその情景が浮かびあがらせる。この曲においても“ライト・ランゲージ”が使用されており、その内容からもチャネリング・ソングのひとつと呼べるだろう。

SERPENTS OF PAKHANGBA「The Calling / The Name That Shall Not Be Uttered At Night]

ヴァイオリン奏者Tamara Mayelaが参加。

彼方からの芸術的な光の導き

「いずれわかるよ」とVishalが答えたことから、このSERPENTS OF PAKHANGBAAMOGH SYMPHONYのように今後も活動を続けてアルバムを発表していくのかどうか現時点では明言できかねる。しかし、これまでの言葉から察するにSERPENTS OF PAKHANGBAでしか表現し得ない世界を突き詰めていくことは想像に難くない。きっと、今後も彼らは興味深い作品を届けてくれるはずだ。

今、世界では“アーティスト”という言葉があまりにも蔓延りすぎていてその本来の意味すら霞むほどになってしまったように思う。

そんな中、Vishal J.Singhという男は、常に聴く者の3光年ほど先に存在しているとしか思えないような想像を超えた光の彼方から作品を届けてくれる。

かと言ってそれは、我々を突き放して知の高みから嘲り笑うものではない。

VishalSERPENTS OF PAKHANGBAが提示していることは、一見すると別世界のおとぎ話のように思われるかもしれない。しかし、突拍子もなくかけ離れた世界を絵空事のように描いているどころか、いつ何時も誰もがアクセスできるところからの呼びかけ、高次でありながらも普遍の境地から光を投げかけて想像力と神秘の大宇宙へと我々を導いていくれている。

さらにわかりやすく言えば、それぞれの国や地域で長い年月をかけて育んできた大地、文化、歴史、伝承/神話、信仰、言語、そしてそれらを形成すると同時に形成されもした人々といったものの大切さ。それを彼らは清らかな霊性をもって説いている。これは全人類ひとり残らず密接に関連する事柄だ。しかし、先進的な社会に暮らしておごっているほとんどの人々は、お金と欲望に心を食い荒らされ目を潰され、祖先が培ってきたものがどれほど自分を含むすべての人類にとって重要な意味を持っているのかを見失っている。

「すわ、第三次世界大戦勃発か?」というような状況も間近だと言われて久しい。ところが世界はすでに戦争状態と変わらないほど混沌とし、奪い合いが繰り広げられ、地球上のどの国も崩壊へと突き進んでいるかのように見える。選ばれし者、救世主、ましてや能力者でもないごく普通の人である我々は手をこまねいて世界の終焉を見つめるほかないのだろうか。それとも救世主の出現をただ祈り待つのか。

否、こんな世界だからこそ、オカルト・アート集団SERPENTS OF PAKHANGBAの楽曲に込めたメッセージ、そして光のエネルギーとヒーリング要素が人類にとって大切な役割を果たすはず。それらを授かったあなたがその波動を身近な人々へと送り繋げてゆくならば、まさに明るい明日が創造できるのではなかろうか。