ウリ・ジョン・ロート アコースティック・ライブ・レポート

Live Reports
現在音楽活動50周年を記念するツアーを行っているウリ・ジョン・ロート。エレクトリック・ギター・ショウの他に2019年1月24日神田明神ホール行われたアコースティック・セットによるスペシャルな一夜をレポート。
遅くなってしまったが、ウリ・ジョン・ロートのアコースティック・ライブのレポートを。今年で音楽活動50周年となるウリ、エレクトリック・ギターでは1978年の初来日公演を行いあの名ライブ盤「TOKYO TAPES」が録音された中野サンプラザでパフォーマンスも行った。アコースティック・ライブはある意味50周年を記念するスペシャルな出来事と言えるかもしれない。会場は昨年オープンしたばかりの綺麗なライブ会場の神田明神ホール。その名の通り神田明神と隣り合わせの会場で、その環境がウリに似合っていると思っていた。
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会場に入るとステージにはエレクトリック・ライブと同じくスクリーンが用意されている。開演時間の19時を5分ほど過ぎて場内暗転、拍手の中ウリが8弦スカイ・ギターを手にステージ上手から登場。「コンバンワ」と日本語で挨拶すると歓声が上がり、ファンは逆に「グーテンターク」と返す。しかし、これは残念ながら昼の挨拶、ギターを軽く爪弾きながら「(グーテン)アーベンがコンバンワ、グーテンタークはコンニワ」とゆるくドイツ語講座が始まる。この日に集まってくれたファンに感謝の言葉を述べ、「中野サンプラザに来てくれた人がいる?」というとそこかしこから声と手が上がり、少し嬉しそうな表情を見せるウリ。そんなファンに向かって「同じ曲もやるけど全く違う方法で演奏するよ」と語りかける。そして昨年の夏に作ったと曲名を告げるとしっとりと“Awakening The Golden Dragon”のスパニッシュなメロディがつま弾かれ、スクリーンには真っ赤に燃えた夕陽が写し出されている。10分強の“Awakening The Golden Dragon”が終わるとその演奏に心を奪われていたファンからは大きな拍手。続くオリエンタルな響きのある“Passage To India”の時にはステージにインドを想起させる田舎町の風景が写し出され、そのどこか懐かしみや人の営みを感じる映像が人間的躍動感もある曲にダブってくる。後半には“剣の舞”や“Bohemian Rhapsody”といった楽曲がお遊び風に挿入されている。この曲が終わると他のメンバーを「バンド・オブ・ジプシーズ」と少し笑いながら呼び込む。こういったところからもやはりジミ・ヘンドリックスが今も大好きなんだなと分かる。ウリに呼ばれてニクラス・ターマン<g/vo>、デヴィッド・クロスキンスキー<g>、サイモン・フォスター<b/vo>が登場。このメンバーでまずアル・ディ・メオラのカバーである“Mediterranean Sundance”がプレイされる。トリプル・ギターでの熱演にファンは息をのむ。それに続いたのはELECTRIC SUN時代の“Firewind”、ウリのしゃがれた渋めのヘタウマ・ヴォーカルがまた味になっている。そこに透明感あるニクラスのヴォーカルが加わっていく。極上のギターのメロディにはとろけてしまいそう、そしてメドレー形式で“Turn The Time”へとまるで川の流れの様に移っていく。ニクラスの「ウ~ウ~」といいうコーラスから始まったのはまさかの“They Need A Million”。透明感と哀愁が絶妙にミックスしたパートから熱を帯びながら盛り上がっていくウリ在籍時のSCORPIONSの曲。曲が盛り上がっていくと共にステージの赤いライトが後ろからメンバーの姿をステージに焼き付けていく。滑らかで美しいウリの運指には本当に見とれてしまう。そんなウリは小刻みにリズムを取りながら首を小さく振る。スクリーンにはそんなウリの姿が大きく映し出される。
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スペシャル・ゲストとしてZENOの元ヴォーカリストであるマイケル・フレクシグを呼び込む。マイケルはウリのヴィンテージなTシャツを着ての登場だ。そしてキーボードにはウリの娘であるアカーシャ・ドーン・ロートが登場。本当かどうかは分からないが、急遽出演出来なくなったコーヴィン・バーン<key>に代わり弾けるかどうかアカーシャに尋ねたところ「多分大丈夫」ということでこの日のステージに立ったということだ。スクリーンには海が映し出され、照明もブルーの中で演奏が始まったのはZENOの“Don't Tell The Wind”。暫くするとステージには今は亡きジーノ・ロートの姿が重なっていく。悲しく紡ぎ出される青い透明感あるメロディと心震わすマイケルとニクラスのデユエット、メロディが静かに心を震わせていく。マイケルの声が小さく消えていくと大きな拍手がステージに向かって起こる。次の“Starlight”で高音は少しきつそうな感じもあったが、踏みとどまり極上のメロディを歌い上げる。サビでの熱唱はうっとりする。2曲熱唱したマイケルは拍手の中、深くお辞儀をしてステージを去っていった。
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そしてここからはウリが在籍したSCORPIONSの楽曲が続いていく。まずプレイされたのは“We'll Burn The Sky”。アコースティックということで原曲よりも湿り気が倍増した感じ、お互い顔を見合わせて激しく転調するパートではステージも曲に合わせるかの様に明るく照らされていく。流石に高音のパートはかなりきつそうだったが、こちらもギリギリ踏んばっていた。二回目の転調部ではタイミングが合わずに崩れてしまったのはご愛敬。ウリがアカーシャにアイコンタクトすると“In Trance”が始まり、静かに盛り上がっていく。ニクラスの声は特にこの曲が一番マッチしている感じで憂いと力強さを絶妙にミックスした声を聴かせる。コーラスではサイモンもサポート。「ア~ア~ア~」のコーラスでウリはギターのボディを叩いて鳴らす。この曲が終わると少しニコリと笑うウリ、そしてこの曲でステージを去ったアカーシャの背に親指を立てて見送る。ウリが在籍していたSCORPIONS時代のファンならお馴染みのファンキーなリズムが鳴ると場内からは大きな拍手が鳴り響く。照明もそれに合わせるかの様に派手にステージを照らす。この“The Sails Of Charon”が演奏されていたスクリーンにはダースベイダーの姿も映し出された。この曲の後半はかなりウリの見せ場、リズムに乗って首を振りギターを操る。ギター・ソロは神がかっていて、ギターに魂を込めているのか、逆に魂をギターに奪われたのか、その熱演にファンは魂を抜かれていく感じで観言っている。曲が終わると大きな拍手、ウリはその拍手に小さく礼をして感謝の気持ちを表わす。

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ここでニクラスのギターの弦が切れてしまうアクシデント。替えがないのでちょっと待っていてと。ウリはクールダウンと即興でギター・ソロを披露。これはアクシデントを超えるかなり嬉しいサプライズ。美しい音色に魂が抜かれてうっとりしてしまう。ギターの弦を張り替えてプレイされたのは“荒城の月”。この曲ではウリよりもエリックの熱唱が目立っていた。最後はファンに歌ってとウリが指さすとライトがフロアを照らし、会場一体となり歌っている。本編最後は“All Along The Watchtower”、ボブ・ディランがオリジナルであるがウリであればジミ・ヘンドリックスのカバーと言った方が近いだろう。塩辛くしわがれたウリのヴォーカルがこの曲にはよく似合う。熱演が終わりメンバーを紹介するウリにファンの気持ちを表す万雷の拍手が送られていた。再びステージに登場するウリとバンド・メンバー。ステージ上でチューニングを始めるのだが、それも一種のショウの演出になっている感覚になる。そしてウリはチューニングからTHE BEATLESのカバーである“Yesterday”が始める。タイミングが合わなかったのか、突然のサプライズでメンバーが付いていけなかったのか、一度演奏がストップしてから再度プレイ。この曲ではサイモンがヴォーカルを取っている。今日のヴォーカルの中で一番中音部に艶があるように思えた。ステージに再びマイケルが登場して最後の曲となったのはSCORPIONSの“Send Me An Angel”。ウリ在籍時の曲ではないが、ウリが気に入っているということでプレイしている曲。良い曲ではあるし、好きな曲なのだがウリが関わっている楽曲で〆て欲しかったところ。と書いたがパフォーマンスは素晴らしかったし、この曲を選ぶウリの性格もファンとしては好きなのだと思う。エレクトリック・ギターでなくアコースティック・ギター(厳密に言えばアコースティック・ギターではないのだが、それは大きな問題ではない)でプレイされるとより抒情性が増し、水墨画の様な世界観を強調した感じでウリの違った風景を覗いた感じ。アットホームでほんわかした雰囲気もウリの人柄を感じさせ、エレクトリック・ギターの時とは別の感動を与えてくれた。
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2019年1月24日@神田明神ホール
SETLIST

1.Awakening The Golden Dragon
2.Passage To India
3.Mediterranean Sundance
4.Firewind~Turn The Time
5.They Need A Million
6.Don't Tell The Wind9.
7.Starlight
8.We'll Burn The Sky
9.In Trance
10.The Sails Of Charon
11.荒城の月
12.All Along The Watchtower

Encore
13.Yesterday
14.Send Me An Angel

TEXT and PHOTO by 別府“VEPPY”伸朗