「METAL FEMALE VOICES FEST JAPAN 2019」ライブ・レポート

Live Reports
2003年よりベルギーで開催されてきた女性ヴォーカルのメタル・バンドを集めたフェスティバル「METAL FEMALE VOICES FEST」。初開催となった日本編の4月21日東京公演のレポート。

ELEANOR


METAL FEMALE VOICES FEST Japan 2019(以下、MFVF)のオープニングを飾ったのは大阪のゴシック・メタル・バンドのELEANOR。
ツイン・ギターに2人の女性ヴォーカル(1人はコーラスだが)の6人編成バンドで、ゲストで女性ヴァイオリストも参加してのパフォーマンスだった。

メランコリックで陰ある美しさを表現していて、シオリ・ヴァイタスの妖艶なヴォーカルがそれを更に広げていく。
ポイントは日本語で歌われていることで、日本語ならではの語感がドロっとした情感を更に深めている感じがあった。
またステージではシオリ・ヴァイタスがベリー・ダンス、コーラスのジェット・ルミがフラメンコといったダンスでファンの目を引きつけ、その音楽性と相まって退廃の美学とも言うべき世界を作りあげていくように感じた。

シオリとジェットが共にダンスをしながらメロイック・サインを決めたりと、広いステージだとそのダンスも映え、初めて彼らのステージを観るファンも視覚的効果から彼らの世界観へすんなり入れたのではないだろうか。
その独特な世界観でMFVFのオープニングを飾るに相応しかった。

SAILING TO NOWHERE


元KALEDONのマルコ・パラッツォ<vo>率いるイタリア出身の男女ツイン・ヴォーカルのSAILING TO NOWHEREが海外勢のトップとした次にステージに登場した。
シンフォニックなSEが流れ、ステージ前の幕が開きメンバーが登場。顔にはペイントが施され、マルコとサラのヴォーカル・コンビは海賊風の衣装に身を包んでいる。

“Scream Of The World”、“Fight For Your Dream”とオープニングからキャッチーな王道メロディック・パワーメタル路線の曲でファンを引き付け、マルコは終始ファンを煽りテンション高めのパフォーマンスで会場を盛り上げていく。
ドラマチックに盛り上がっていくバラード調の“Apocalypse”ではがらりと世界が変わり、メンバーに合わせて高く上げた手を揺らしい会場が一体となっていた。

ラストはバンドのテーマとも言うべき“Sailing to Nowhere”で、ちょっと張り切ってしまったマルコはソロを弾くフランチェスコ<g>を抱え上げるパフォーマンスも見せていた。
そのおかげでギターのシールドが外れてしまった風で、マルコは直ぐに誤っていたが、問題ないとばかりお互い笑顔になっていた。
終始パワフルで陽気なパフォーマンスでファンを楽しませていた。

EVIG NATT


ノルウェー出身のゴシック・メタル・バンドのEVIG NATTが登場するとダークな雰囲気が会場を包む。
ゴシック・メタル調の曲中にシンフォニック・ブラック・メタル的エッセンスを溶かし込み、美しく耽美な世界を表現する女性ヴォーカルとグロウルでアグレッシブに攻める男性ヴォーカルの対比も面白い。

荒涼とした世界を展開させていた“Weathered Emotion”でのキルステンのヴォーカルは素晴らしく、彼女は手を大きくゆっくりと動かしながら情感を込めて歌い上げる姿は多くのファンの心に深く静かに入り込んでいったと思う。
シンフォニック・ブラック色の強い“Darkland”ではフロントのヴォーカル2人は激しくヘッドバンギングし、お互い見つめ合いながら熱唱もしていた。

ラストは荘厳なヘヴィネスの中に美しきメロディが同居したドラマチックな名曲“How I Bleed”がプレイされた。
キルステンは携帯のバックライトを点けてと煽っていたのがファンにうまく伝わっていなかったのが残念だったが、それでも皆が曲に合わせて手を振る姿は十分に感動的な光景を作り上げていた。
5曲、約30分のステージはちょっと短かったと思わせる素晴らしいパフォーマンスだった。

Mary’s Blood


暗転前にステージ前で円陣でも組んでいたのか、メンバーの掛け声が登場前に会場に響くとファンから早く出て来いよといった風に歓声が上がる。
SEが鳴り、幕が開くと白いマイクスタンドを高く掲げたEYE<vo>を中心にメンバーが姿を現す。
この日登場したバンドの中で全てが女性のメンバーで固められたのはMary’s Bloodだけで、

オープニングを飾った”アルカディア”は6月に発売予定のアルバムに収録された新曲で、これまでライブでもそれほどプレイされていなかったと(ライブでは2回目かな?)言っていたと思うが、メタリックでノリの良い楽曲はファンのハートを掴んで盛り上がっていた。

何より彼女たちが登場してパワフルなパフォーマンスが始まるとガラっと空気が変わった感じもあった。
既にパフォーマンスを終えた海外勢が後ろでその様子を見ていたのだが、皆が「スゴイ」と口にしてステージの様子の写真を撮っていたのは、その証拠と言っていいかもしれない。

パワー・バラード風の“Song For You”以外は彼女たちのアグレッシブな面を全面に押し出した楽曲で固めていて、この選曲もかなりこの日のイベントにはバッチリとハマっていたと思う。
彼女ファンは勿論であるが、初めて観るであろう人にもインパクト十分で、その名前を刻み込んだステージだったと思う。

4月21日 Mary's Blood SETLIST@新宿BLAZE
1.アルカディア
2.Bite The Bullet
3.Song For You
4.Marionette
5.Coronation Day
6.Moebius Loop

VUUR


元THE GATHERINGのアンネケ・ファン・ヒェルスベルヘン<vo>が在籍するゴシック・プログレ・バンドVUURがトリ前に登場。
SEが終わるとヘヴィでユニークなリズムの“Time - Rotterdam”のイントロがズシリと腹に響く、最後にアンネケがステージに登場すると歓声が更に大きくなり、伸びやかで美しい声が早くもファンを魅了していく。
ヘヴィなリズムと彼女のヴォーカルの対比も面白く、VUURの作り出す世界観に早くも虜となってしまう。

続く2曲目は驚きのTHE GATHERINGの“On Most Surfaces(Inuït)”で、VUUR流にグルーブとメロディを溶かし込んでのパフォーマンスにいくつもの手がステージに向けられていった。
続く“My Champion - Berlin”ではリフでグイグイと引っ張っていき、ヨハン・ファン・ストラタム<b>は激しくヘッドバンギングを見せる。

そしてTHE GENTLE STORMの“The Storm”がプレイされたのに驚き、喜んだファンもいたと思う。
キャッチーな響きのあるこの曲にファンは拍手で応えかなりの盛り上がりとなった。
そんなフロアに向けて、アンネケは曲の終わりに投げキッスを飛ばし、「スゴイ」と日本語でその喜びを伝えていた。
オペラチックなヴォーカルがネットリとメロディに絡んでいく“Days Go By - London”、そして美しいメロディ・ラインの“Your Glorious Light Will Shine - Helsinki”とファンはVUURの創造する世界に引き込まれていく。

ラストは再びTHE GATHERINGの楽曲、名曲“Strange Machines”が披露されファンからは大きな歓声が上がる。
ゆったりとしたグルーブの中にも美しさと高揚感があり、ゆっくりと体を揺らしその世界に酔いしれているファンも多かった。
最後にメンバーは自ら作り出すグルーブに体を大きく揺らし、曲に合わせてジャンプも見せていた。

アンネケのヴォーカルに耳が奪われがちだが、バックの演奏陣の力量もかなりのもの。
圧巻のパフォーマンスはあっという間で、1時間弱のパフォーマンスのこの曲数に満足出来なかったファンも多かったと思う。
次回来日の際にはもっと多くの時間をプレイして欲しいし、もっと多くのファンに体験して欲しいと思わせる素晴らしいものだった。

4月21日 VUUR SETLIST@新宿BLAZE
1.Time - Rotterdam
2.On Most Surfaces(Inuït)(THE GATHERING cover)
3.My Champion - Berlin
4.The Storm(THE GENTLE STORM cover)
5.Days Go By - London
6.Your Glorious Light Will Shine - Helsinki
7.Strange Machines(THE GATHERING cover)

LEAVES' EYES


MFVFのトリを務めたのはヴァイキングの世界観を持った多国籍シンフォニック・メタル・バンドのLEAVES' EYES。
SEが鳴りステージの幕が開くと、兜を被り武装したヴァイキング姿の4人の男がステージに立っている。
それだけで掴みはOKといった感じだ。
勇壮なメロディとエリナ・シーララのシンフォニックなヴォーカルが活躍する“Sign Of The Dragonhead”で始まり、それに続くフォーク色の強い“Across The Sea”と会場のファンを盛り上げていく。

「メロイック・サインを上げろ」と始まった“Take The Devil In Me”ではエリナの優しく美しいヴォーカルが会場を包み込んで、ファンを感動させていた。
一転、「パーティーの時間だ」と始まった“Swords In Rock”、陽気なメロディにファンは声を上げサビと共に手を振り上げていた。

再びステージにヴァイキング姿の男たちが登場してプレイされたのは“Jomsborg”で、ヴァイキングの史実を基にされた曲であるが、グロウルを聴かせるアレクサンダー・クルル<vo>は侍を引き合いに出して、勇壮なメロディのこの曲を高らかに歌っていた。
ゴシック色の強い“Farewell Proud Men”、力強さとシンフォニックさが同居した“Hell To The Heavens”とショウは続き、ポップなメロディにエリナの美しい声が乗る“Riders On The Wind”では再び会場は大盛り上がりとなる。
このパーティ・アンセムで盛り上がった会場を見てアレクサンダーは親指を立て、舌を出す。

“Edge Of Steel”で再びステージは戦いの場となり、勇ましいメロディが腹に響き、エリナとアレクサンダーは力こぶを作りながら熱唱していた。
ラストはシンフォニックなメロディと共に疾走していく“Beowulf”で、大歓声と多くのメロイック・サインが突き上げられる中、メンバーは一度ステージを去った。

アンコールの1曲目は“Blazing Waters”でステージにはスモークが焚かれ、再びヴァイキング姿の男たちが登場。
アレクサンダーも同じくヴァイキングの兜に鎧を身に着け、剣を振り回しながら最後の曲を熱唱して見事にMFVFを締めくくった。

4月21日 LEAVE'S EYES SETLIST@新宿BLAZE
1.Sign Of The Dragonhead
2.Across The Sea
3.Take The Devil In Me
4.My Destiny
5.Swords In Rock
6.Jomsborg
7.Farewell Proud Men
8.Hell To The Heavens
9.Fires In The North
10.Riders On The Wind
11.Edge Of Steel
12.Beowulf

Encore
13.Blazing Waters ~.Outro:Haraldskvæði(SE)

最後に

女性ヴォーカルのバンドに焦点を当てたフェスティバルというのは面白かったし、この日出演の6バンドは女性ヴォーカルがいるという共通点はあるが、それぞれ音楽スタイルが違いも楽しみになっていた。
素晴らしいパフォーマンスにファンはかなり満足して盛り上がっていたので、次回開催の際はもっと多くのファンに注目して欲しいと感じたフェスティバルだった。
また、会場のBGMに流れていたのも女性ヴォーカルのバンドの楽曲ばかり。
こういった細かな点へもコンセプトの徹底ぶりがあって、ファンも楽しんでいたと思う。

この記事のキュレーター

別府 “Veppy” 伸朗
別府 “Veppy” 伸朗
新一万円札の顔となる渋沢栄一の生まれ故郷「深谷市」在住の兼業音楽ライター。メタルのレコードとシャツに囲まれての田舎暮らしですが、ノホホンとは出来ず残念!ベルボトムLOVEですが、サイズが…。