筋肉少女帯『メジャーデビュー 30th Anniversary FINAL LIVE「ザ・サン」突入 31st!』@中野サンプラザ

Live Reports
“仕掛けの大きなヘヴィ・メタル・バンド”筋肉少女帯メジャー・デビュー30周年イヤー、ラストを飾った中野サンプラザ公演をレポート。
2018年から始まった筋肉少女帯のメジャー・デビュー30周年イヤーが6月30日の中野サンプラザ公演を以って終了し、31年目に突入するという。オリジナルメンバーの内、二人が中野区の出身ということで、“聖地”とも言うべき場所で開催されることになった。このアニバーサリーイヤーのラストを祝うべく、荻窪在住の筆者は早速会場へと出かけた。ちなみに休日運転の中央線に乗るとすぐ次が中野なので大変楽なのである。会場近くのブロードウェイでは「墓場の画廊」で『筋肉少女帯展』が開催されており、レアなアイテムや過去にリリースされたアルバムなどの展示やグッズ販売などでお祭り感をさらに盛り上げている。

本日の公演はソールドアウト。ザッと見渡すと、客席を埋め尽くしたファンは幅広い年齢で構成されているようで、30年の歴史の厚みを感じさせる。今なお若いファンを開拓している筋少はやはり凄いバンドである。その理由はいったい何なのか、彼らのライヴを観ればすぐに答えがわかるはずだ。
場内に“オーディエンス・イズ・ゴッド”が流れる中メンバーが登場し、メジャー・デビュー・アルバム『仏陀L』(1988年6月21日リリース)に収録されている名曲“サンフランシスコ”からショウはスタートした。激しくドラマティックな人気ナンバーによって早くも会場の熱気が高まっていく。間奏では内田雄一郎がギーザー・バトラーばりのベースソロで極悪な音を響かせている。続く“オカルト”は、最新アルバム『ザ・シサ』(2018年10月31日リリース)からのグルーヴ・メタルチックな楽曲。30年の時差など、このバンドにはまったく関係ないようである。大槻ケンヂ<Vo>の描く独特の世界観は30年の時を積み重ね、大きな広がりをみせてはいるけれども、大きな変化はない。熟練のパフォーマンスによって、いとも簡単にサンプラザのオーディエンスをひとつに纏め上げてしまう。
内田雄一郎&lt;B&gt;

内田雄一郎<B>

かつて「筋肉少女帯は仕掛けの大きなヘヴィ・メタル・バンドだ」と、大槻は言った。しかし、筋少の音楽をヘヴィ・メタルと言い切ってしまうと、少しムズ痒さを感じるのもまた事実。そもそも彼らのサウンドは最初の頃からごった煮であり、いわゆるミクスチャーであった。ファンキーで、パンキッシュで、メタリックで、時にプログレッシヴだったり、70年代的日本のフォーキーさもあったり、ジャズやブルースの要素までもが混在している。様々なジャンルの音楽を背景に持つメンバー達が混ざり合うことによって生み出される独特で強烈なサウンド。これをライヴで体験してしまうと、毎回足を運びたくなるのである。
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筋少には“ロックする心”がある。それと同時に“照れ”も存在している。大槻の面白すぎるMCにそれは見えるはず。日本人がロックを演ることの難しさを理解した上で繰り広げられているパフォーマンスは、とにかくチャーミングで心地よい。オッサンにチャーミングだなんて言われても全然嬉しくないだろうけれども、その姿勢が筋肉少女帯のカッコ良さに繋がっているのだと観る度に思う。ちなみにヒップホップなど他ジャンルにも似た雰囲気の人がいて、僕はそういう人に魅力を感じてしまうようだ。

この日の大槻はステージ中央に設置されたソファに座るなり「楽だわあ~」と会場を脱力させつつ笑いを誘う。アダム・ランバートとはソファの使い方がまったく違うと説明し、“島忠”といったサンプラザのご近所出身ならではの単語や、タイムリーすぎる時事ネタを交え、会場を何度も沸かせていた。
大槻ケンヂ&lt;Vo&gt;

大槻ケンヂ<Vo>

オーケンの優しさに包まれつつ『レティクル座妄想』収録の“香菜、頭をよくしてあげよう”を聴きながら色んなことを思い出した。そうだった、社会に適応出来ていない自分でも結構なんとか生きていけるのだと、筋少の歌に、オーケンの著書に何度か救われたことがあったのだ。彼はずっと社会的弱者や、ロックばかり聴いていたり変なマンガばかり読んでいた僕のような、いわゆるボンクラの味方であり続けてくれた。
続く“僕の宗教へようこそ~Welcome to my religion~”の妖しいグルーヴに身を委ねた。筋少のライヴは音も大きい。やはりロック・バンドはこうでなきゃならない。それがわかっているバンドは“ロックする心”を持っているということなのだろう。
大槻ケンヂはやはりチャーミングで優しい人だ。彼の歌は「オレってダメな人間だなあ」と思っている若者に確実に届く魅力がある。もちろん僕のような、いまだにダメなオッサンにも優しく寄り添ってくれている。いつの時代もどんな世代でも同じように響いているからこそ、客席に新旧ファンが並んでいるというわけだ。

どんな世代にも伝わっていく、それがロックなのだと思う。例えば今14歳で昨日まで「マンウィズかっけー!」と言っていた中学生がある日ジミ・ヘンドリックスを聴いて「カッコいい!」と感じたとしてもそれは正解だ。50年前の音でも最高に響くのがロックではないか。だからロックは凄いのではないか。だからロックをやめられないのではないか。
本城聡章&lt;G&gt;

本城聡章<G>

橘高文彦&lt;G&gt;

橘高文彦<G>

本城聡章と橘高文彦、二人のギタリストが個性をぶつけ合う場面はショウの見どころのひとつだ。本城の繊細なトーンと橘高のギラギラした音の対比は、中盤で披露されたプログレッシヴな大作“エニグマ”で堪能できる。この曲では三柴理<key>と長谷川浩二<Ds>らによる強力なサポートによって、筋少のサウンドがグレードアップしていることも鮮明に見えた。オーディエンスを惹き込む力を持ったバンドの技量にあらためて惚れ惚れするしかない。
三柴理&lt;key&gt;

三柴理<key>

長谷川浩二&lt;Ds&gt;

長谷川浩二<Ds>

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終盤、“踊るダメ人間”から“イワンのばか”、“ディオネア・フューチャー”とアグレッシヴなキラーチューンで畳み掛けていく。少しの間を置いてからのアンコール、高木ブー氏への謝辞を述べて“元祖 高木ブー伝説”、“釈迦”、“モーレツア太郎”の3連発によってオーディエンスを完全にねじ伏せた。オーラスでは橘高がフライングVを床に叩きつけ破壊、それをマーシャルアンプの壁に投げつけると、爆発と共に30thアニバーサリーのバックドロップが31thアニバーサリーへと変化した。大掛かりな演出によって記念すべきショウは劇的に幕を閉じたのだった。

そして31年目に突入した筋肉少女帯。「今日のライヴも通過点に過ぎない」と大槻は語っていた。この日、バンドはニューアルバムの制作開始と、ツアーの日程を発表した。まだまだ進歩し続ける筋少にどこまでもついて行きたいと思った強烈なライヴ体験であった。
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メジャーデビュー 30th Anniversary FINAL LIVE「ザ・サン」突入 31st!
2019年6月30日(日)@中野サンプラザ
SETLIST
01.サンフランシスコ
02.オカルト
03.日本印度化計画
04.衝撃のアウトサイダー・アート
05.香菜、頭をよくしてあげよう
06.仲直りのテーマ
07.僕の宗教へようこそ~Welcome to my religion~
08.エニグマ
09.新人バンドのテーマ
10.宇宙の法則
11.Guru 最終形
12.踊るダメ人間
13.イワンのばか
14.ディオネア・フューチャー
15.機械

Encore
16.元祖 高木ブー伝説
17.釈迦
18.モーレツア太郎

Text by 倉田真琴
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