規格外の韓国産ブラッケンド・ヴィジュアル・メタルMadmans Esprit来日公演リポート

Live Reports
韓国の自称‟デプレッシヴ・スイサイダル・ブラッケンド・ポップ・バンド“Madmans Espritが先ごろ来日を果たした。彼らの音楽を端的に表すなら「ブラッケンド・V-Rock」とでも言おうか。つまりヴィジュアル系とスイサイダル・ブラック・メタルのハイブリッドである。そんな彼らの音楽性を真っ二つに切り分けるかのように日本での2公演はV系サイドとメタルサイドに分かれてブッキングされた。
ここではメタルサイドにあたる11月10日渋谷HOMEでの公演をリポートする。
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Live Photos by : Jun Tsuneda

lantanaquamara

この日のトップを飾ったのは3人組日本語詞ポスト・メタル・バンド、lantanaquamara(ランタナカマラ)。

気難しさのない爽やかな音像で、ポスト・メタルであることに確かに間違いはないのだが、ただそこに日本語詞の歌が乗る、という単純なものではなかった。

そこかしこを棘に蝕まれたかのような造形の白い仮面を着けた川光<vo>の口からポエトリー・リーディングの域に達したとも言える、呟きにも似た詩が紡がれる。と思えば彼の口から烈しいスクリームが放たれ、SO<gt,vo>がキャッチーなクリーン・ヴォーカルを歌い上げるサビへと突入する。

不勉強ながらこの日初めてlantanaquamaraを観たのだが、その変則的な歌のバトンの受け渡しに面食らってしまった。SOの歌唱によるサビはとても開けたもので、それが曲前半のひっそりとした呟きと対照的であるためカタルシスを得ることに成功している。

おそらく全編をポエトリーのように仕立てる選択肢もあったのだろうが、現在のスタイルを選んだことによってライブでの盛り上がりやリスナー層の拡大へ繋がっていると推測出来るので、戦略的に練り上げられた曲編成なのかもしれない。現在正式GtとDrを募集中とのことなので、彼らの思い描く完全体になった時どんなライブを魅せてくれるのか、想像の余地が残されていて愉しい。
セットリスト
1.ポルピタ ポルピタ
2.地平線
3.ネオンテトラ追放
4.鳳凰木
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【MV】lantanaquamara 『ネオンテトラ追放』OFFICIAL MUSIC VIDEO

明日の叙景

次に現われたのはポスト・ブラック・メタルを基調に様々な音楽性を取り入れ進化を続けるバンド、明日の叙景。

ポスト・ロックの要素を持つlantanaquamaraとブラック・メタルの要素を持つMadmans Espritを繋ぐバンドとしての最適解だと思った。
また、明日の叙景の楽曲にもポエトリー的なセクションを持つ曲が多く組み込まれており、余計に出順による音楽性のグラデーションが綺麗に仕上がっていると感じた。

他の2バンドのように奇抜何な言える外見によるインパクトこそ特徴としていないものの、音の奇抜さは随一で、シューゲイザー的なコード使いからハードコアのようなビートまで自在に操る演奏陣の腕前は安心してその世界に没入出来る。

その調べは耽美でこそあるが、退廃的・ニヒリスティックな儚さというよりは確固たる意志を持って自己の領域を音によって拡大せんという力強さのようなものが感じられた。
布<vo>は大仰なパフォーマンスで気を引こうとするでもなく、静かにしなやかに腕を使い舞っていたのがまるで陽炎のように映った。

中でも印象的だったのは先日リリースされた4way splitからの曲‟冷たい傍ら“で、烈しいAメロからやや湿り気のあるメロディアスなサビという流れがヴィジュアル系的である、とこの日初めて気付いた。そこにマスロック的なアプローチのギターが際立ち、元々持っていた「不思議な曲」という印象がさらに濃くなった。
ライブの文脈を通して新たな発見を見出すという貴重な機会となった。
セットリスト
1.たえて桜のなかりせば
2.名付く暗涙
3.「鉤括弧」
4.冷たい傍ら
5.幸福な旅の人へ
6.石榴
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Asunojokei - Spring of Passion (Guitar Playthrough)

Madmans Esprit

満を持してMadmans Espritが登場せんというなか、会場の雰囲気は不思議な張り詰め方をしていた。何か儀式が始まるかのような雰囲気である。
Madmans Espritは自殺や鬱といった深刻な問題を扱う曲が多く、決して明るく楽しくライブを観ようというバンドではないし、客も一種の「救い」を求めてやってきている。そうしたことも関係しているのだろう。オーディエンスは息を潜めていた。

 一人ひとりメンバーが登場すると、フロアの前方からはメンバーの名前を力の限り叫ぶファンの声が聞こえてきた。黄色い歓声というよりも、喉を引き絞り少しでもこちらへ引き寄せようという声だ。
Kyuho<vo>が登場したところで緊張感は最高潮へ達した。
最初に始まったのは最新EPのオープニング・ナンバー‟Ich bin die Kunst“。ダークなブラック・メタル・ナンバーは闇を纏い、場内に佇む人々の目を、耳を、口をふさいでしまった。

Kyuhoはグロウルからブラック・メタル的なしゃがれたスクリーム、歪んだ地声でのシャウト、ヴィジュアル系的な粘り気のあるクリーン・ヴォイス、女声と聞き違うようなハイトーンまで自由自在に操り、曲をひとつの劇場と化していた。まるで高等な独り芝居を見ているかのような錯覚に陥った。

 ファースト・アルバム「NACHT」から最新シングル「Seoul」まで新旧織り交ぜたセットリストでこの貴重な機会を彩った本編では、ギターのJuhoとArcの役割分担が顕著であった。

JuhoはRADIOHEADなどのオルタナを好むそうで、それに即してメランコリックなアルペジオを爪弾き、元来デス・メタル・バンドMIDIANにいたところをスカウトされたArcはギター・ソロなど前面に出るアグレッシヴなパートを担当していた。その基盤を支えるのがメタリック過ぎない絶妙な音作りが特徴のGeon<b>で、時折スラップ奏法を繰り出し曲が持つ気だるげなアトモスフィアを加速させていた。

 彼らの作品の中では比較的尺の短い曲で纏められた本編が風のようにあっという間に過ぎ去ると、言うまでもなく観客からはアンコールを求める声があがった。
すると一人登場したYoel<ds>が突如華麗なドラム・ソロを披露。X JAPANのYOSHIKIを彷彿とさせるパワフルなドラム捌きは、かと言って旧態依然としたものでもなく、昨今日本に多く存在するエクストリーム系ドラマーに並べてもひけを取らないほどに完成されたドラミングだった。
楽曲中でもたびたび登場するブラスト・ビートを用いたパートはブラック・メタルを齧ったバンドの宿命とも言えるが、そちらも完璧に正確に叩きこなしていて舌を巻いてしまった。

 アンコール最後の曲‟Suicidol“ではKyuhoがウォール・オブ・デスを煽る場面もあり、まるで本物の日本人ヴォーカリストのような立ち振る舞いに関心すると共に、そのリスペクトぶりに微笑ましさも感じた。

 この日の総括的な感想としては、彼らは日本で活動すれば間違いなく中野サンプラザレベルの規模の会場を埋められるバンドになるであろうということ。もし本人達にその意思があるのだとしたら、すぐにでも日本での本格的な活動を始めて欲しいものだ。
セットリスト
1.Ich bin die Kunst
2.Deny
3.Seoul
4.씨발
5.무로부터
6.You don’t allow me
7.In der Nacht

-Encore-

8.Raison d’être
9.Suicidol
Kyuho&lt;vo&gt;

Kyuho<vo>

Yoel&lt;ds&gt;

Yoel<ds>

Arc&lt;g&gt;

Arc<g>

Geon&lt;b&gt;

Geon<b>

Juho&lt;g&gt;

Juho<g>

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Madmans Esprit - Seoul(this night is ours) MV FULL