ピロピロ×ドコドコ=神の音楽 Unlucky Morpheusの快進撃の行方

Live Reports
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11月2日、新宿ReNYで行なわれたUnlucky Morpheus(以下あんきも)の東方アレンジオンリーワンマンツアー『Lunatic East 2019』​ファイナル公演を観た。

ツアーの主旨を簡単に説明すると、現在はオリジナル曲を中心に活動するあんきもが、ゲーム『東方Project』のBGMをメタル楽曲に仕立てた音源を出していた時代の楽曲のみで構成されるセットリストを携えて行なわれたものである。
全国を廻る全17公演と、あんきも史上最長規模のツアーとなった。ファイナルであった昨夜の会場で犇めくファンのつむじを眺めていると、確実に着実にその動員を伸ばしていることを実感した。

文字通り幕が開けると、一様に紫を纏ったメンバーの姿が表われ、最初からクライマックスと言っていいハイエナジーな選曲を畳みかけた。
1曲目で歩調が乱れかけたかと思わせるシーンがあったが、紫煉<g>や小川洋行<b>がFUMIYA<ds>の方を向き直りアンサンブルを支え事なきを得た。長らく音源リリース中心の活動を続けてきた彼らが、昨年から続くツアーを通してバンドとしての結束を強固にしている証である。同期音源を用いた曲もあり、少しのズレが致命傷になりかねないスリリングな状況に身を置き続けてきた対価だろう。

とは言え、いわゆる無骨なバンドとも違うのがあんきものライブであり、そのゴシカルな世界観の演出にも余念がなかった。Fuki<vo>は時に苛烈に、時に情念を込めたステージングでそれぞれの曲の持つ雰囲気を見事に区切ることに成功していた。
小刻みにヴィブラートを波打たせるスタイルのハイトーン・ヴォーカルは可憐でありながら観ていて安心できる安定感があり、特に各曲のサビ終わりでのロングトーンにはしばしば歓声が上がっていた。


観ていて興味を引かれたのは、男性客が9割近くを占める客層でありながら男性メンバーへのメンバー・コールの多いこと。あんきもを司るメンバーとしてそれぞれが重んじられていることが伝わってきて、思わず手を握り締めた。
この日は長らくギター・スタンドを使っての演奏が続いていた紫煉が溜め込んでいたパワーを開放するかのようにスタンドを離れて動き回っていたこともファンの感動を呼んだのだろう。
繊細なソロにおいて一つ一つのノートをはっきりと捉えて響かせながらも職人に徹さず煌びやかな魅力を放つもう一人のギタリスト仁耶とステージの立ち位置を交換しただけで、上手と下手それぞれから歓迎の声があがっていたほどである。


本編中盤の見どころはリズム隊のソロ・タイム。
FUMIYAのビートに乗る小川の軽妙なスラップ・ベースと、小川の伴奏に乗るFUMIYAの楽曲中のフレーズを遥かに凌駕する手数の多さを誇るソロが交互に耳穴を叩く。
小川のメタルらしさに縛られない心地良い音作りと、FUMIYAの持つエクストリームな面という相反するパーソナリティが見れた貴重な時間となった。
途中から仁耶とJill<violin>も参戦し再びステージに活気が戻ると、更に続く‟式神教育委員会”から7人目のメンバーにして男性ヴォーカリスト、歌澄が登場。その大仰さの外連味が気持ち良いパフォーマンスから一転、愉快なMCで場の空気を塗り替えた。

このまま明るいパワー・メタル曲へ…と思わせて、次に飛び出したのはアコースティック・コーナー。紫煉はトランペットを、FUMIYAはカホンを演奏しバンドは完全なるアンプラグド状態へ。
ジャジーな楽曲を歌うFukiはメタル曲とは全く違う、滑らかで無駄な力を一切廃した歌い方を披露、歌澄のコーラスも合わさり濃密な空間を創り上げていた。不思議なほどに「この曲は通常のバンド・セットで聴きたかった」という感情を抱かせないアレンジ力には脱帽するばかりであった。

本編終盤にはこのバンドならではの場面であるヴァイオリン・ソロが挿入された。
ヴァイオリン奏者というと粛々とストリングスとして華を添えるイメージを持たれるだろうが、Jillのステージングはかなりアグレッシヴで、右を左を向きスカートをはためかせて見せる。
ソロの内容も各楽器のソロの中で一番烈しいものになっていた。直後にFukiが「メタルします!」と観客に檄を飛ばしたのも彼女のソロに触発されてのものではないかと思わされた。


本編終了後オーディエンスを待ちくたびれさせることなくTシャツ姿で登場したメンバーはシンフォニックで、耽美で、けれども拳を振り上げずにはいられない‟Jealousy of Silence”、‟魔境堕天録サリエル”の両ナンバーをフルパワーで披露し長く、けれどもごく短く感じたセットの総てを終えた。
その後ステージを去るまでにいくつかの発表があり、「来年も活発に動く」との言葉が決して嘘ではないことが早くも判ったのは嬉しいサプライズだっただろう。


この夜惜まれたのは会場のキャパシティが今のバンドに良い意味で相応しくなくなっているという点だったが、紫煉が吐露した「売れたいと思っている」との意志を聞く限り次のツアーでは思う存分身体を使って楽曲にのれる会場が用意されそうである。

ネットや同人界発のアーティストが続々と紅白歌手になってゆく近年、何が起こるかいよいよ予測がつかない音楽シーンをさらに引っ掻き回す存在になり得るバンドであると痛感した夜になった。

セットリスト

1.ロスト
2.DRAGON FORCE
3.魍魎の密室
4.SIVA
5.Perverseness
6.奇子~Unknown Child
7.木葉天狗
8.その魂に安らぎを~Dignity of Spirit
9.リズム隊ソロ
10.ピロピロリングナイト
11.式神教育委員会
12.Endless Control(Acoustic)
13.百鬼飛行(Acoustic)
14.烏天狗
15.花咲く春のある限り
16.Violinソロ~THE TOWER OF THE BLOOD
17.Le Cirque de Sept Couleurs
18.断罪は遍く人間の元に

~encore~
19.Jealousy of Silence
20.魔境堕天録サリエル

Unlucky Morpheus今後の予定

東名阪ワンマンライブ『玄音参詣』(げんおんさんけい)

🌟2020.5.16(土)~難波の陣~
 心斎橋SOMA
🌟2020.5.30(土)~尾張の陣~
 名古屋HOLIDAY NEXT
⛩️2020.6.7(日)~江戸の陣~
 神田明神ホール⚠️畳公演

https://udo.jp/concert/UnluckyMorpheus
更なる詳細は紫煉のブログを参照のこと。

http://blog.livedoor.jp/hiranoyukimura/archives/9509405.html