ふたつのシーンの観測者~“THE ART OF MANKINDのWooming"が出来るまで 前編

Interview
同人音楽のシーンと現行の国内ヘヴィ・メタル・シーン、2つの世界を知る者としてTHE ART OF MANKINDのWooming<g>に話を聞いた。現場からの生の声を読んでいただきたい。
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‟みかんのうた”からメロデスへ

――最初に、メタルを聴き始めたきっかけを教えて下さい。
Wooming(以下W):メタルを聴き始めたきっかけは、えっと…(SEX)MACHINEGUNS。
――マシンガンズなんですか。
W:やっぱ俺ら世代マシンガンズ入りが多いですね。元々中学校の時からヒップホップ…一生ヒップホップだけ聴いて生きてくって坊主頭のB-BOYやったんすよ。
高校の時に、後に「KISSING THE MIRROR(註:Wooming主宰の同人サークル。以下「きすみら」)」を一緒に始める同級生が、文化祭で“みかんのうた”やってて。それで「これがメタルか」と思って。
――「面白いな」みたいな。
W:
そうですね。結構あると思うんですよ、俺ら世代はマシンガンズで「何だこれは!?」って。
――最初はデス・ボイスものではなくて?
W:
メロディック・デス・メタルとの出会いは、そこから「マシンガンズのルーツとなったものを色々聴いてみよう」みたいな感じで。有名なところを最初は聴いていくじゃないですか。HELLOWEEN聴いたりとかSLAYER聴いたりとか。で、IRON MAIDEN聴こうと思ってTSUTAYAかなんかで借りてきたらそれがトリビュート・アルバム(「A TRIBUTE TO THE BEAST」2002年)だったんですよね。それに入ってたCHILDREN OF BODOMの“Aces High”聴いて初めて「何これ!?」ってなって、そこから入った感じですね、デス・メタルは。
――なかなか珍しいですね…。
W:
そうなのかな?まあ、それは確かに珍しいかも。

同人サークルの設立

――そうしてメタルを聴くようになって、自分で作ろう、と思ったのは?
W:
メタルを作ろうと思ったのはそれこそゲーム音楽のアレンジで。「きすみら」を始めようって言い出したのは、さっき言った、メタルを教えてくれた同級生なんですけど。自分は元々高校生の時からヒップホップのトラックを、昔はパソコンじゃなくてTRITON(トライトン)っていうシーケンサー入りのキーボードでずーっと作ってたんですけど、「これでメタルも出来んじゃないかな?」みたいな感じで。ヒップホップで「ツッタン、ツッタン」ってやってたやつを「ズッタン、ズズタン、ズッタン、ズズタン」ってやって。(笑) で、その友達がギター弾いていたので、そいつの方から「ゲーム音楽やらないか?」って言ってきて。最初は『東方Project』(註:同人サークル「上海アリス幻樂団」によるシューティング・ゲーム)じゃなくて『ロックマンX』のアレンジCDを出しました。ディスコグラフィ…あんまりにも多すぎるので印刷して持ってきたんですけど。これには『ロックマンX』は載ってないんですけど、2008年の5月が初めての東方アレンジなんで。これの前の年だから2007年。2007年って何歳やったっけ?何年前?
――(笑) 12年前です。
W:
12年前の『M3』っていうイベントで『ロックマンX』のアレンジ・アルバムを出しました。その時20歳か21歳ぐらいの時でまだギターも始めてなかったです。
――完全に打ち込みでやったんですか?
W:
そうそう。完全に打ち込みでやって、「こういう感じのロックマンのアレンジを作ったからギター弾いてよ」みたいな。「弾いてよ」っていうか、その時は向こうの方が主宰みたいな感じだったので、じゃあ俺がアレンジやるわ、みたいな感じでやってました。
――トラックとかは特に何か勉強とかはなくて、やってみようと思ってやっていたら出来るようになったんですか?
W:
そうですね。そういう教材ってないじゃないですか?2000年代って、さっき言ったTRITONっていうシーケンサー入りのキーボード1台だけで、プリセットで入ってるクソショボい音でシンプルなビート作ってそれで何千万稼ぐみたいなのが、アメリカでのセオリーだったんですよ。TRITONかAkaiのMPCのどっちか、みたいな感じで。「それなら楽器をやってなくても出来るな!」と思ってひたすら作ってました。夢のある音楽ですよね。結局それで何千万稼いではないんですけど、「楽しいなあ」と思って。
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個人サークルは行動力だ!

――ギターはいつ頃から始められたんですか?
W:ギターは「IRON ATTACK!」とのスプリットで2008年に出して、これの後ぐらいにギターの友達が抜けるってなって、「辞めよう」ってなったんですけど、やっぱり俺一人でもやろうと思って。そこからギターを始めました。多分2008年、11年前くらいですね。21歳か22歳の時。
――それからどれくらいで自分が弾いた音源を出されたんですか?
W:自分が弾いた音源はもう早速これ(「Fatal Scythe’s Awakening」2009年)なんですよ。だから無駄に行動力があったというか。(笑)いきなりプレスしちゃおう、みたいな。まあ当時は、これ載せていいか判らないんですけど、『東方』の超バブルだったんですよ。
――そうでしたよね。
W:で、とりあえず赤字にはならないんですよ、この時はね。けどまあすごい頑張って。なんでもいいやとは思ってなかったので頑張ってギター練習して、このインスト・アレンジを作って。IRON ATTACK!のIRON-CHINOさんに憧れて俺ギター始めたんで。20歳ぐらいの時に観て「ギターってなんてかっこいいんや!」って思って始めて。なんかもう当時は本当にIRONさんのモノマネ芸人ぐらいの気持ちで。とりあえず黒いランディーVを買って、それでIRONさんみたいなフレーズを弾いていて。この時はそういう感じでやってましたね、
――アルバム数がすごいですね。
W:多いなこれ。(笑) 2009年5枚アルバム出してるんですよ。
――その時は学生だったんですか?
W:実家に住んでる大学生で。『コミックマーケット』とか『例大祭』とか(駐:どちらも『東方』アレンジの音源即売会が開催されるイベント)、IRONさんのライブ観るために東京来たりとかっていうのをしてました。
――大学行きながら5枚も出したんですか?
W:あんま行ってなかったです。(笑)
――大抵そうなりますよね。(笑) じゃあギターはIRONさんを見て?
W:そうです。

同人音楽と著作権

――『東方』っていうのは元から作品自体が好きだったんですか?
W:
そうですね。元々高校の同級生の机の上に『東方』の原作のゲームがあって「これ何?」みたいなところから。いずれは『東方』アレンジやろうみたいな感じにはなってたと思うんですよ。その時からもうインストゥルメンタルのメタル・アレンジをやっていたんですけど、「最初は『ロックマン』やりたいな」ってなって。ただ、正直『東方』以外権利関係が厳しくて。その当時『ニコニコ動画』で『ロックマン』の動画とかが結構流行ったの知ってますか?結構前ですけど。
――“エアーマンが倒せない”とかでしょうか。(笑)
W:
そういうのがブームだったんですよ。でも同時期にやってた人はCAPCOMから電話かかってきたみたいな。(笑)
――「発売はやめてほしい」みたいな感じですか?
W:
「何枚プレスしてますか?」みたいな感じで。「○○枚プレスしてるんだったら、訴えることになるんですけど」と。そこまで具体的には聞いてないですけど、そういうのがあって。正直本当に『東方』アレンジ以外ってやりづらい。
――聞かないですよね。最近だと『艦隊これくしょん』(註:PC向け無料オンラインゲーム)ぐらいですね。
W:
そうですね、そういうのも出て来たり。
――結構ずっとオタクで、『東方』きっかけで音楽やるって人もいると思うんですけど、そうではなくて割と、ヒップホップのトラックを作っていて、『東方』を好きになってからアレンジやろう、という感じなんですね。
W:
うん、そうですね。まあさっき言ったように元々は『ロックマン』含めゲーム音楽全般アレンジをやろうぜってなってやっていたので。最初は『東方』だけがやりたいことではなかったんですけど、結果的にそうなってくるし、やってる間にどんどんサークルも増えていってそういうシーンみたいなのが出来上がってくるじゃないですか。すごい自由なので、色んなジャンルもやったし。メロデス、メロスピ…インストもやって、あとはミクスチャーとかもやったかな。自由でした。

エアーマンが倒せない(TEAMねこかんversion)

『東方』バブルの勃興

――サークルのホームページっていうのはWoomingさんが作られたんですか?
W:
これは俺じゃないです。「LA KIA」っていうサークルの…これもアルバムがいっぱい出てるんですけど、ギターとかミックス・マスタリング全部俺がやってて。アレンジはこのサークルの本人なんですけど。(奈槻)晃って女の子がやっていて。その子がウェブ・デザインとか好きな子でやってもらってました。「きすみら」のライブでもベースを弾いてもらって。
――いろいろな人との繋がりがあるんですね。
W:
そうですね。
――何かしら出来る人がシーンにいるっていう。サークルは最初誘われてやって、そのうち一人でやられるようになったと。
W:
そうですね。いつの間にか一人になっちゃったんで、一人でやるしかない。なんか必要に迫られるとすごい力を発揮するんですよね、人って。(笑)
――「サークル作って儲けるぞ」みたいな感じではなかったんですか?
W:
そういうわけではないです。(笑)
――今だとそういう人もいますよね…?
W:
正直います。でも今はそんなにいないんじゃないですか。
――バブルじゃないからでしょうか。
W:
バブルの時は…結構いましたよ、そういう人は。「よくお金の話するなあ」って人は正直いました。
――同人ってやっぱり儲かるんですね…。
W:
(笑) いや、それは人によりますよ!
――同人誌書いてる方でもいるじゃないですか、もうお仕事も辞めちゃったり。
W:
まあ、そういう人もいますよ。正直俺らは特に最後の方なんかメロデス好きな人だけ聴いてるみたいな、「儲かる」なんて言えるレベルじゃなかったですよ。赤字ではなかったけど。トータルで赤字にはなりにくいんですけど、プレス代を自分で出すわけじゃないですか。で、それを回収するくらいは売らないとっていうラインが無意識に生まれちゃう。でもそうやってお金のこと考えるのは良くないなって思ってたんですよ。逆にそういう人が多かったから、「こうはなりたくないな」って。同人サークルとして、絶対に商業的な活動スタンスにならないようにしよう、みたいな。どう言ったらいいかわからないですけど。

同人界の光と闇

――なるほど。同人活動をしていく上でのメリットとデメリットというか、同人ならではのエピソードはありますか?
W:
メリットですか…やっぱ個人的には、『東方』とかの原曲があって、それをメタルにしていくっていう作業が単純にメチャクチャ楽しくて。「ああ、このメロディいいなー!ギターで弾きたい!」ってなってそれをそのままインストゥルメンタルにしたりとかっていうのは今出来ないんで。元ネタがあるメロディを(オリジナルのバンドには)ブチ込めないんで。それが楽しかったことっていうのもそうだし、あと界隈が広いようで狭い。そういう人たちとの交流とか。まあ後輩が多いんですけど。「きすみら」の最後の方とかライブよく一緒にしてた「CLOCKWORKS TRACER」、「DHS」、「MODS CRISIS ∞」とか、大体毎回同じようなメンツやったんですけど(笑)、でも本当に仲間みたいな感じがしてましたね。楽しかった。
――バンドとバンドよりもサークルとサークルの方が仲良くなったりするんですか?
W:
うーん…個人的には同人サークルの方が結構密接な感じと言うか。大体CD出す時期が一緒じゃないですか。『コミックマーケット』が年2回あって、で余裕ある人は『例大祭』でも出して、みたいな感じだったから。「次どんなん出すの?」みたいな感じで会うたびにそういう話してた。で、ライブも一緒にやろうって。
――文化祭っぽいですね。
W:
あ、そうですね。それはまあ近いかも。それを何年も常にやり続けるっていう感じかな。
――逆に同人ならではの「面倒くさいな」ってことはありましたか?
W:
一番最初に出した時に有名なサークルの人が、フラ~ってこっちのスペースに来て、俺に言うでもなく独り言のように「なんだ、またクソみたいなメタル・サークルが出てきたのか!」って大きい声で言ってきて。「なんだこの人?!」って思って。(苦笑)
――ええ!?
W:
「こんな人いるんや」って。その人はもう俺より全然キャリアが長くて、その時点でもう有名。「すごいな」って感じでしたね。
――いや~…あるんですね、やっぱり。
W:
いやその人がやばかっただけでそれ以来見てないですね。
――ああ、じゃあ逆に優しいですね。
W:
そこまでヤバい人は見てないです。最初にそれ喰らって、そっからは可愛いもんです。それが一番印象に残ってます。(笑)

「きすみら」からバンドへ

――「きすみら」の解散ライブをやられてから、オリジナルをやろうと思ったきっかけというのは?
W:
ああ…きっかけっていうか、誤解されがちなんですけど「きすみら」を辞めたからTHE ART OF MANKIND(以下TAOM)を始めたわけではないんですよ。メンバーもほぼ一緒だし時期も近かったんで結構誤解されてるんですけど、「バンドやりたいな」ってこと自体はずっと考えていて。
実際俺もIRONさんだったりとか、KOUTA(THOUSAND EYES)くんだったりとかを見て「かっこいい!ああいう風になりたい!」って思ってたんですけど、俺は同人サークルで。勿論そこに上下っていうのはないんですけど、やっぱバンドに憧れるなあって。俺は家でずっと音楽作ってるだけだったし、ステージに立って雑誌に載ってみたいとか、CDを全国流通で…みたいなバンド活動に憧れを持ってました。「きすみら」を辞めるっていうのはまた全然違う理由です。
別に飽きたから辞めたとかではないし…何ていうんだろう…それこそ10年前のまだギターも始めてないとか、ギター始めたばっかりの時の作品と、10年近く経った最後の方の作品が同じ名前で出ていても、聴いてる人にとっては関係ないんで同一視されるじゃないですか。
例えば最初のギターがメチャクチャ下手くそなCDを聴いて「ああなんだ、このサークルショボいな」ってなって数年経ってクオリティがアップしたのを聴かない人もいると思うし。でも逆も然りだし。昔の曲良かったなっていう。あの時のインストのあの曲いいよね、みたいな。「でも、今の俺はこれやねん!」っていうのをCD出すたびに俺はアピールしたつもりなんですよ。(笑) こんだけ出してたら毎回自分の成長の記録なんですよ。
――「きすみら」の頃も言われてました?「昔の方が良かった」というのは。
W:
ああ、それはもちろん。「昔これよく聴いてたなあ」みたいな。
――「THOUSAND KNIVES」(2010年)とかですか?
W:
そうそう。良かったなんて言っても「THOUSAND KNIVES」なんて…いつ?(笑)
――2010年です。
W:
それが2010年で、5年経った時の方がクオリティは高いはずなんですけどね。
THOUSAND KNIVES(2010年)

THOUSAND KNIVES(2010年)

the Art of Mankind 「Gods of Slaughter」

哀しみを纏い激走するメロディック・デス・メタル the Art of Mankind、3年連続の作品リリースとなる6曲入りミニアルバム「Gods of Slaughter」2019年11月13日(水)リリース!

Repentless RETS-014
¥1,850+税

<収録曲>
1. Death Addiction
2. Gods of Slaughter
3. Seventh Ghost
4. Where Eternity Dies
5. The Gray Night Skies
6. Requiem
 (18206)

the Art of Mankind Gods of Slaughter Tour 2019-202

2019.11.15(fri)
 新宿ANTIKNOCK
2019.11.24(sun)
 名古屋@-hill
2019.12.5(thu)
 新宿dues(ディスクユニオン購入者向けワンマンライブ)
2019.12.14(sat)
 京都MOJO (playing the songs from New EP”Gods of Slaughter”&2nd Album”Archetype”)
2019.12.15(sun)
 大阪Bigtwin Diner SHOVEL (playing the songs from New EP”Gods of Slaughter”&1st Album”Distant Light”)
2020.1.11(sat)
 渋谷CYCLONE
 [Special Guest]VOLCANO(60min Long stage) [Guest] EREBOS,Bloodeyed Sunset
 (18210)

 (18211)


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