狭義のメタルを蘇生させる狼煙を上げる 日本のメタル・シーンにおける特異点 CRYSTAL LAKE Ryo × ENDON 那倉太一 対談 【後編】

Interview
2月1日・2日に開催されるleave them all behind 2020に出演するCRYSTAL LAKEとENDON。親交があるという両バンドのフロントマンに、北米ツアー見た景色やシーンに思うことを語ってもらった。
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Ryo「日本のバンドには観てもらえる機会さえあれば結構どのバンドにもチャンスがあると思っていて。」

――世界進出を狙っているバンドというのは国内に沢山いると思うんですが、お二方のバンドがブレイクスルー出来た要因というのは何だったのでしょう?
Ryo(以下R):
さっき言った通り、向こう(海外)にいない存在だったっていうのがあるんじゃないでしょうか。まあでも難しいですね。
那倉太一(以下N):CRYSTAL LAKEはかなりミックスの要素が複雑なんですよ。
R:うん。メタルコアなようでその感覚がすごい複雑で…ハードコアなのかメタルなのかJ-ROCKなのか何なのか、というのは多分海外の方もすごく新しく感じたんじゃないかなと思いますよね。
――最近の音源だとエレクトロニカやポスト・ロックの要素が入っていたりしますよね。
R:
そういったジャンルには先にCROSSFAITHやCOLDRAINのようなバンドがいるんですけど。彼らも彼らで他の海外のバンドにはない、独特なミクスチャー感みたいなのはありますね。ブレイクスルーの理由を訊かれると難しいですけど…でも日本のバンドには観てもらえる機会さえあれば結構どのバンドにもチャンスがあると思っていて。曲のクオリティもそうですけど、やはりライブのクオリティというのが世界中のどこを見てもトップクラスですよね。洗練されてるというか。お客さん側も耳が肥えてるというか、いろんな音楽を知っている。逆に日本でメタル系が評価されるっていうのはすごく難しいことだと思っているので、若い子達を含めあとは観てもらえさえすればいいと思うんです。それが難しいんですけどね。(笑) 向こうで対バンしたローカルなバンドをはじめ色んなバンドを観てきましたけど、日本で今頑張っている若い子達の方が数万倍カッコいい。数万倍曲もいいしライブも良いと思うんですよね。あとはこれからCRYSTAL LAKEが向こうで頑張って、そういうバンドを世界中に見せてあげるというのが自分達の役目なのかなとは思っています。今はブレイクスルーしている感覚というのがそんなにはないです。
N:僕もブレイクスルーしているとは思っていなくて。ブレイクスルーってどういう意味なんだろう?と思うんですけど。
Daymare 濱田(以下H):突き抜けて次の段階へ行くことかな。
N:ああ。その調合の仕方としてやはり他にないものをやっているというのは自分達が色々なアーティストを聴いてみた中で判っていたんですね。だからそういった、趣味としてのブレイクスルーは初めからしていたと思うんですよ。でもその場所が(海外に)変わったり、というブレイクスルーとなるとそこからは判らないですね。とりあえず行くしかないですよね。(笑)
R:(笑) 行ってみるしかないですね。自分の感覚として知るというか。
N:ENDONは今はそんなに海外に行けている状態じゃないのですが、共演したあるバンドのツアー・マネージャーが言っていたのは「何回も来た方がいい、忘れられてしまうから」ということ。海外に行ったから「やった」ということではなくて、行き続けなくてはいけない。1回行ってもう爆発的に、それこそバネのようにブレイクスルーをするというアイディアを持ったバンドはいると思うんですが、そういったことよりも何度も行くことが大事だと思います。更新してなおかつ行く、見せに行くという。
H:ご自分達自身だとやはり分析しづらい部分もあると思います。Ryoさんがさっき「何故今こんなに成功しているのか?」と疑問に思っていたのも本当に正直なところだと思うし。だけどやはり海外に出て行けて、実際に戦えて、次に次に、という人達を傍から見ていると、あるべき時に、いるべき場所にいて、やるべき人と一緒にやって、それをちゃんと感じられている人が次に行くのではないかな?と思います。
R:そういう人達ってやはりどんどん繋がっていくんですよね、先へ先へという風に。そういう流れが出来ていくという。
H:日本のバンドがある海外のバンドをロール・モデルだと見ていて、「すごく憧れます」というようなことを言っても向こうからしたら「ああ、そう」となるだけ、みたいなことも起こり得るし。だけど全然違うところで引っかかったりということも当然あると思うんですよ。例えばENDONだとノイズの界隈は別にして、海外のバンド界隈の人に知られるようになり始めたきっかけはブライアンとの出会いで。
N:それは大きいですね。
H:ブライアン・クックはRUSSIAN CIRCLESのベースで昔BOTCHのメンバーだった人なんですけど、彼は地元の新聞でも色々批評を書いたりする文筆家でもあって。それで、RUSSIAN CIRCLESを僕が2014年に招聘した際にENDONにもライブに出てもらって。その時にENDONのメンバーに「ブライアンはよく判っているから観てもらったら引っかかったり、繋がるところがあるんじゃない?」と言ったらブライアンが想像以上に食いついていて。やってる音楽は全然違うんですけどね。
N:違いますね。
H:「とにかくショックだった」と。それで彼が自主的にインタビューも取ってくれて。
N:あれが広く読まれたというのもありますね。
H:そのインタビューを見て、ブライアンの話を聞いたアーロン・ターナーが僕に連絡してきて「俺にENDONの音を送ってこないって、ナメているのか?」と。(笑)
N&R:(笑)
H:「俺を飛ばすとはどういうことだ?」と。そういう繋がり方もありました。まあアーロンとブライアンが一緒にSUMACをやっていることもあるんですけど、多分音楽を聴いていく感覚として(ブライアンのことを)すごくリスペクトしているところがあったんだと思うんですよね。ブライアンが良いって言っているから聴こう、みたいな。そういうところから繋がっていくこともあるかな。
N:僕は『Hydra Head』のヘヴィなリスナーですから、そう考えると‟手紙が届いた”みたいな感覚はありますね。
――無意識のセルフ・プロデュースが上手いという感じなんですか?さっき仰った「いるべきところにいて~」というのは。
H:
おそらくそれは、僕が考えるに音楽だけじゃなくて人柄としてのミクスチャーといいますか。シーンとの関わりをずっとしっかり考えている人なんじゃないでしょうかね。その点はセルフ・プロデュースという言葉が当てはまるかもしれないですけど、そこまで作ってるっていう部分ではないと思います。
N:国外の人との話ですよね。今濱田さんが言ったような‟いるべきところにいる人”という観察は国内で見た方が判り易いですよね。沢山いると思います。
H:そういう意味で言うと、僕はENDONとCRYSTAL LAKEは音楽的にはすごく密接ってわけじゃないと思いますけど、立ち位置というか立ち居振る舞い方はすごく近いところがあるのではないかと。
N:恐縮ですよ。
H:そういう風に僕は見ています。今CRYSTAL LAKEが海外に行っている感じがすごく面白いな、とずっと思っていて。今までの日本のバンドの行き方とは少し違うんですが、着実に組み上げていっている感がすごく新鮮なんです。「そのやり方でそこに行けるんだ!」みたいな。実際、ブッキング・エージェントの動きも素晴らしいですし。
R:本当に自分達は少しずつ少しずつで、ブレイクというのとは無縁のバンドだったんで。一つずつ積み上げて今があるというのは自分達の感覚としてありますね。
N:「一つずつ一つずつ積み上げて」というのはCRYSTAL LAKEの色んなところにすごく出ていると思います。だから‟強い”んですよ。‟強い”っていうのはいわゆるネットスラング的な意味ではなくて、実際体力的にも‟強い”と思うし。やはり同業同士だから感じるのかもしれないですけど、そういうところはありますね。
R:17年間続けているベテランがバンドに2人もいるので、彼らが引っ張っているというのがすごく大きいですね。
N:その点ENDONはやはり物好きな人が物好きな音楽を作って、物好きな人が「いいね!」って言ってくれているっていう感じはあります。一つ一つ積み上げていくというのがとてもわからないっていう。(笑) いつも途方に暮れてますね。
R:でも突き詰められる人って少ないじゃないですか。あまりいないですよ。
N:好きなものを作るというのが大好きだから。
R:好きなものを好きなようにして、それが形になるというのはすごいことですよ。本当に好きなものだけをやっていたらきっとすごい歪なものになって評価されづらいと思うんですけど、それがしっかりアートになって、色々な場所で評価されていて。音楽的にも芸術的にも僕はすごいリスペクトしています。自分達は好きなことをやっていると言いつつやはり色々な要素を、例えば流行りものだったり、ウケ狙いではないですがある程度お客さんが好きであろうものを汲みつつ表現するというのを考えているんですけど、そうではなくてひたすらに研ぎ澄ましていくっていうのはすごく難しいことだと思うんですよね。それを続けていられるというのはすごいです。
――身も蓋もない話をしてしまうと、やはり海外ウケの良い音とかもあるとは思うんですが。
R:
その時に流行っているものだったりはありますよね。
――実験的だったら海外で評価されやすいだとか。
R:
でもアメリカって何が評価されるのか判らないですよね。
N:全然わからないですね。
R:突然出てきたバンドがすごく流行ったりだとか。ビリー・アイリッシュもそうだし。
N:ビリー・アイリッシュはそうですね。すごい大きな音で鳴っていても耳を澄まさないと聞こえないようなヴォーカルじゃないですか。不思議ですよね、突然変異で。
R:DEAFHEAVENのようなバンドも「そこで評価されるんだ」と思いました。
N:DEAFHEAVENは、俺は最初意味が判らなかったんですよ。
R:ブレイクスルーにはランダム的な要素がすごくあるのかなと思って。時代に沿って、それこそ「いるべき時に居るべき人といる」という、色々なタイミングが重なってだと思うんですけど。そこのランダム性の、ある程度の集合体なんじゃないかっていうのが(ブレイクスルーの要因という)質問の答えじゃないでしょうか。

Crystal Lake - Devilcry (Official Music Video)

那倉「アメリカのバンドと日本のバンドのミクスチャー具合をleave them all behindというショーケースの中で比べてみるという面白さもあると思います。」

N:今後例えば確実にあると思っているのが、Ryoくんがトラップ(ラップ)で客演すること。それはもう、多分誰よりも可能性が高い。だってほとんど変わらないですよね。
R:そうですね。
N:音の入れ方としては変わらないので、薙ぎ倒していって欲しいですけどね。(笑)
R:表現したいことはきっと同じだと思っていて。自分もすごくヒップホップに影響を受けていますし、トラップの人達もメタルに影響を受けていたりするので。そういうところで自分がどこまで伝えられるかというとなかなか…CROSSFAITHはイベントでラッパー、例えばJIN DOGGとかを呼んだりしているんですけど、クロスオーヴァーって簡単なようで難しくて。ずっと続けていったり、アーティスト同士がものすごく強く繋がらないとお客さんには全然伝わらないんだなと。自分達もKOHHとツーマンやったりもしましたし、色々なところで試みまして。やはりこう、本当にディープなところでアーティスト同士が繋がってからじゃないと伝わらないのではないかと思いました。でもいつかちゃんとした形でコラボレーションをしたいですね。
――それはトラップ・メタルですか?
R:
トラップじゃないにしろ、ヒップホップの人達やエレクトロの人達とですね。
N:(傾向が)一緒の人達が客演でコラボレーションしないのは勿体ないと思いますね。
R:ああいう人達は多分‟自分の眼で見たものがリアル”というところが強いと思うので、まずは繋がるところから始めたいです。
――なるほど。先ほどから仰られているようにCAVE INをはじめ、今回来日するバンドとENDON、CRYSTAL LAKEはいずれもハイブリッドな、広義のミクスチャー的な音を出していますが、その点に関してはいかがですか?
N:
急に語弊のある言い方をしてしまうと、皆もう少しアメリカを知ろうとした方がいいですよ。アメリカのことを雰囲気や波動でしか知らないというか。音楽的にはイメージだけでみんな考えているところがあると思うので。それこそ批評家的にCAVE INやPOWER TRIPの面白さは何なのかってことを考えると、やはりアメリカの面白さだと僕は思うので。アメリカをイメージで捉えないでよく考えてみることはすごく面白いことだなというのは、青春期からアメリカの文化を享受しまくってきた身として感じます。「アメリカっぽい」じゃなくて「アメリカの現実」の方がイメージのみより全然面白いですね。生真面目な意見ですが、アメリカのバンドと日本のバンドのミックスの具合をleave them all behindというショーケースの中で比べてみる、それはある種批評的に要素を解析してみることでアメリカがどういうものかが判る、という面白さもあると思います。独特な国ですし。
R:そうですね。音楽の生まれ方も文化的なところから政治的なところまで含めて聴いていくのもいいと思います。時代背景といった要素もありますし。
N:面白いですよね。黒人のブルーズがなかったらブルータル・デスのような、白人ばかりがやっているジャンルもなかったんじゃないか?ということも言えるわけで。そう考えると非常に興味深いですね。
R:そこを知るというのは大事ですね。
N:そういう連続した感覚がやはりないじゃないですか?我々には。いきなり「よーし、メタルやるぞ」みたいな。(笑) なんでそんな経緯に想いを馳せなければいけないのかとは思いますけど、それは‟面白いから”ですね。
R:やはり自分達はアメリカから来たものをまず受け入れてそこからものを作り出すというのが今までの主流だったと思うんです。特にメタルに関しては。それこそ白人コンプレックスじゃないですけど、向こうへの憧れだったり、そこから来る嫉妬みたいなものもあったりして。最終的に向こうのものの受け売りじゃないですけど、結局同じフォーマットを使っているというか。特に自分達がいるようなシーンの音楽っていうのは、やはりどうしても型にはまりがちで。そこからどう抜け出すか、それともそのコンプレックスさえも自分達の強みにしてしまうのかってすごく悩んだ時期があって。やはり逆にそのコンプレックスが自分達を自分達たらしめるのかな、というのは(欧米に)行ってみて気付いたし。そこから生まれた‟まがいもの“じゃないですけど、何かちょっと違うものというのが向こうの人達の感覚にとって新しいものになる。だからこそやはりアメリカのことをより深く知ることが大事なんじゃないかと思います。より自分達を研ぎ澄ますために。
――前編で仰っていた嬢メタルのファンの人はPIG DESTROYERを聴かないという話のように、界隈みたいなものが出来ていて、同じシリーズの企画には毎回同じ面々が観に来ているような気がしてしまって。ミックスされにくい状況なのではないかなと感じています。
R:
でもやはり海外も細分化されているな、とは思いましたね。なんだかんだジャンル・エリーティストみたいな人達はどこにでもいますし。「お前らはメタルとハードコアどっちなんだ?」とか訊かれたりもしますし、「お前らはプログレッシブ・なんとかかんとか・メタルコアだ!」と言われたりもしまして。結局規模の問題なのかなと思ったりもしましたね。母数が多いからミックスされているように思えますけど、実は向こうの方がすごく閉鎖されている感じがあるのかな?とも思うんですよね。ツアーも同じようなバンドとしかツアーしなかったりだとか。特にアメリカはすごく偏っているので。逆にそれが面白いものを生み出しているというのもあるとは思うんですけど。俺はまず自分達がやるのは(ヘヴィ・ミュージックのファンの)母数を増やすことなんじゃないかなと思ったんですよね。きっと知ってしまえば好きになる人は沢山いると思うので。そこから自分がそうだったようにどんどん深くのめり込んで、最終的にPIG DESTROYERに行き着くでもいいですし。(笑) 日本は人口が多いじゃないですか。だから今までそういうものを聴こうとしなかっただけで、1回聴いてみれば実は好んでくれるんじゃないかと。まあ難しいのは判っているんですけど、いずれ。
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Ryo「(メジャーなアーティストとの共演をする立場にある)自分達の役目として、リスナーの母数を増やしたいんです。」

――ラウド・ロックを聴く子に海外のメタル・バンドを薦めると「激しすぎて無理」と言われたことはあります。
R:
そうですね。彼らはやはりライブに友達とみんなで行くという感覚で音楽を聴いているので、そうじゃない聴き方っていうのを提案することからですね。だから自分達のイベントに海外のバンドだったりアンダーグラウンドのハードコア・バンドに出演してもらって、観てもらっています。そこから実際にどんどん広がりますし。あとは俺がブラック・メタル・バンドのTシャツを着ていたら、お客さんが同じもの買って「アルバムも買ったんですよ!」とか言ってくれたりしたことはあります。
N:いい話ですね…!
R:ちょっとずつですけど効果はあるんじゃないのかな。いつか正解が見つかるんだと思ってやっています。ENDONもTHE NOVEMBERSとやったり、アート・ロック寄りの人達と共演していますよね。
N:ENDONに関しては、海外だけでなくどこに行ってもそうなんですが、自分の欲望としては誰かのアイディアになりたいですね。
――インスパイアするということですか?
N:
そうですね、インスパイアする側になりたいというのは素朴に思います。「こういうのをやってみたい!」と思われることが一番幸せですね。「こういう要素を取り入れたい」だとか。そういうのは海外の人にもすごく思ってほしいです。キャッチボールなんです。『Hydra Head』から貰ったものを『Hydra Head』に返している意味合いもありますよ。「これ(『Hydra Head』のリリース)を食べたらこうなりました、どう思いますか?」という。でもやはり負けてはいけないと思うので、ライブでもSUMACより前に出なくてはいけないと思っています。「俺らはこうなったぞ!」というのを見せたいというところはあります。感化し合うというか。生意気ですけど、実際SUMACと感化し合っているところもあると思います。(SUMACが)ノイズを入れたということも実際的にありますし。インダストリアル・ノイズとは違って、ENDONはメタルとハードコアにハーシュ・ノイズを入れているというその安直さがすごいので。そういうアメイジングを海外で売りたいとは思っています。やはりG.I.S.M.、DEATH SIDE、BOREDOMSの3組のアーティストは白人に対してのリアクションを大きくもたらしたと思うんですよ。他にもあるのかもしれないですけど、僕が関係している界隈ではこの3組がやったことは大きくて、すごく大事だと思います。日本人の傾向はあると思うんですよ。さっきRyoくんが言っていた‟まがいもの”じゃないですけど、何て言うんでしょう、「産業廃棄物を垂れ流している川で出来た」みたいな。
R:そうですね。(笑)
N:「ウワー、変な生き物!」みたいな、そういうものになりたいです。
――それがミックスされて出来たモノという。
N:
そうですね、やはりコンプレックスみたいなものもありきで。だからマッチョイズムは採用出来ないなと思ったんですよね。だって海外に行った時に、一緒に行った日本人の芸風がマッチョイズムだったら自己一致として自分にも問題があるのでは?と思いますよね。そういう現実もありますね。モッシュに入って勝ったことがないですからね。(笑) 別のもので勝たないとみたいな意識はあります。 
R:いくら自分達を大きく見せても向こうの人の体格には勝てないし、違うところで(糸口を)見つけないと。
N:CRYSTAL LAKEは楽曲で絶妙な技を使ってて。ブラストが入る瞬間が、すごく盛り上がるように作ってあるのが判るんですよ。だってブラストなんてなくてもいいじゃないですか。(笑)
R:そうですね。(笑) でも入れたい!(笑) ロマンですからね。
N:どんなにマスを目指してもブラストを取らないっていうのはロマンですよね。大事ですよ。
――マスを目指すところはあるんですか?
R:
まあ目指してるというか…
N:目指すというか後戻り出来ないですよね。
R:そうですね。
――膨らんできてしまっている?
R:
そういうのもありますし…。さっきも言ったみたいに(メジャーなアーティストとの共演をする立場にある)自分達の役目として、折角そういう人達と一緒にやっているんだから母数を増やしたいという。だからこそ中途半端なことは出来ないと思っていて。やはり(お客さんに)寄せに寄せて曲を作ったって何も伝わらないですし。だからこそブラストを入れて、ロング・グロウルも入れて、みたいなことは今だに続けています。これは語弊があると思うんですけど、‟ジャパニーズ・ラウド”と言われているものは中途半端なところがあって。(苦笑) 一意見として、ヘヴィにしたいのか何なのかよく判らないというか。
――それはお客さんに寄せているからでしょうか?
R:
寄せているのか、彼らなりにそういうものを紹介したいのかは判らないんですが、何かすごい中途半端なものになって結局良くないという。結局「それ、伝わらないよ」と思うところはありますね。中途半端にブレイクダウンを入れたり、それでお客さん同士がモメたりみたいなことがニュースとしてあって。
――実際によくあることですね。

coldrain - MAYDAY feat. Ryo from Crystal Lake (Official Music Video)

Ryo「こういう音楽をやる以上怒ってないといけないと思っていて。」

N:時々SNSですごく怒っている時あるよね?Ryoくん。あれは?
R:やはり伝えることが大事なのかなと思って、あまりやりたくないんですけどああやってツイートしたりはするんですよ。モッシュについてのツイートとかもう、馬鹿馬鹿しいじゃないですか。「これはロック・ファンのライブでしょ?何言ってるの?」と思ってしまうんですよね。ましてやラウド・ロックって普通の良い子ちゃんのロックじゃないじゃん、という。それなのにモッシュが当たったから文句を言っているっていうのはダサいですからね。そういう人達に本来のエクストリームな音楽の在り方を伝えるっていうのも一つの自分達の役目だと思ってやっていますね。勿論行き過ぎたものもあるんですよ。ハードコア・バンドのライブで失明した人がニュースになったり、LAMB OF GODのライブで人が亡くなったことがあったりしたじゃないですか。そういうケースはもう何とも言いようがないんですけど。こういう音楽のライブというのはある程度ヴァイオレントなもので。さっき言ったような中途半端なバンドって、怒ってないと思うんですよ。
N:どういうことですか?
R:こういう音楽をやる以上怒ってないといけないと思っていて。やっぱりハッピーだったらこんな音楽やらないし、聴かないですよ。それが怒ってなかったとしても悲しんでいたり、何かしらの感情がないとこういう音楽ってやっちゃいけないと思うんですよ。そこは絶対に持ってないといけない感情ですよね。だから敢えて威嚇したり、歌詞やライブの中で怒ったり。そういうことは前まで全然考えてなかったんですけど、意識してやるようにしていますね。
――お客さんがハッピーであることに対してはどうですか?
R:
お客さんがライブを観てハッピーになるとか、曲を聴いてハッピーになれるという結果的なハッピーだったらいいと思うんですよ。ハッピーだからCRYSTAL LAKEを聴こうとか、「今すごい楽しい気分だからENDON聴こう」って、それは絶対ないですよ。(笑)
N:いや、あるんじゃないですか?高速で車に乗ってる人だとか。(笑)
R:それはあるかもしれませんね。(笑) そもそも好きになる動機としてということですね。
N:ああ、そうですね。
R:人によるって言ったらおしまいなんですけど。
N:お客さんのことを考えて作っていないので、自分達でも判らない。(笑)
R:自分が聴き始めたきっかけだったり、自分が聴いていたような人達はやはり怒っていて、鬱屈したものを解放するというのが音楽の目的だったので。そこはこういう音楽の歴史を見ても忘れてはいけないなと。やはり「クソくらえ」って思いながらやっていますからね、どこでやるにしても。常にそういう気持は忘れないようにしています。多分ハッピーになった時点でバンドをやめてしまうと思いますね。
――ENDONにはそういった原動力になる負の感情というのはありますか?
N:
訊かない方がいいですよ。(苦笑) でも俺の場合は逆で、幸せになりたいですね、バンドをやっていてね。(笑)
R:もちろんそれはそうです。(笑)
N:自分で自分を見た時に、9割以上が暗い気持になるようなことばかりです。一番上手く出来ることがヴォーカルなので、率直に言うとそういうことですね。結構偉ぶったことを言うことがあるんですが、本心を言うと防衛的な側面も多分にあって。質問に答えると、そうですね、負の感情はかなりあります。でもお客さんに対しては全然ないですね。本当に他人に見せているという感じなので。昔、見向きもされない時はありましたよ。もう今は観てくれる人がいるので普通にやっていますね。なにしろ自分のことを考えてやっているというのがすごく強いんでしょうね。それは今日対談していて思いました。悪いところかもしれない。(笑)

ENDON "YOUR GHOST IS DEAD" (OFFICIAL VIDEO)

那倉「批評的な人達に批評的に観てもらうということが大事なのかなと思います。そこから、変わる。」

――最後に、今回のleave them all behind 2020を通じて生まれて欲しいムーブメント、新しく生じるであろう動きというものがありましたら教えて下さい。
H:
前編でもお話ししたんですけど、「これを聴けるならこれも聴けるんじゃない?」という提案は大切にしていて。今回ENDONとCRYSTAL LAKEに出ていただきたいと思ったのは、変な意味じゃなく色々な側面において、中間ド真ん中に位置するバンドの象徴のような感じたからなんですよね、僕の中で。それは音楽的にもそうだし、海外のバンドと繋がりがあって、だけど日本の先輩から若手まで一緒にライブをやっていたり。だから嫌な言い方かもしれないですけど、アクセス・キーとして完璧だなと思ったんですよ。2020年の頭においてこの2バンドは絶対嵌まるな、というのがあったんです。その感じを当日出していただきたいです。
R:頑張ります…!
H:そこから広がっていくものも絶対あると思うので。多分今回出ているバンドの中で拡散度だったり、お客さんの母数っていう意味で言うとCRYSTAL LAKEがかなり多いと思うんですよ。けど普段『Daymare Recordings』だったり『Hydra Head』 といった界隈の音楽を聴いている人の中ではCRYSTAL LAKEを聴いたことがない人が意外と多いんじゃないかな?と思って。多分そういう界隈だとENDONの方が聴かれていますよね。そう考えた時にCRYSTAL LAKEは説得力充分というか、全然チャラくなんてないですし。そういうところを体感してほしいです。
R:本当にそうですね。
N:イメージだけでは判らない、聴いてみないと判らないというところがCRYSTAL LAKEにはあって。バシバシ顔面に撃ち込んでくるタイプの楽曲で、休んだりしないじゃないですか。だからパワーがとにかくすごい。
R:そういう人達に聴いてもらう時に自分が言うのは「FEAR FACTORYやMACHINE HEADみたいな感覚をデス・メタルとブラック・メタルとちょっとのニュー・メタルで料理したものなので、そういう感覚で聴いてください」と言うんですよ。
N:滅茶苦茶良いですね。(笑)
R:どうしてもラウド・ロックというか、「向こう側でしょう?」みたいなイメージを持たれるので、「メタルなんで」と。
N:ラウドの特徴って、すごく太い弦にディストーションをかけているのでうるさくないですよね。
R:そうですね。「自分達は鋼鉄なんで」と言ってます。(笑)  やはり自分達のお客さんが今回出るバンドを聴いてハマってくれたら嬉しいですし、逆にそれぞれのバンドのお客さんが俺らを観て「いいな」と思ってくれたらいいですし。その先も俺らは影響を受けた身としてどんどん一緒にやっていきたいですし、それをオープンにしていきたいです。ジャンルの壁は多少はありますけど元々同じエクストリーム・ミュージックじゃないですか?それをもう少し近いものに出来たら良いなと思いますね。やはりどうしても隔たりがちなところに、少しだけでも視野を広めてもらえませんか?という提案をする。流行りものではなくて新しいミックスの感覚の一つだと思って聴いてもらえれば絶対に好きになってもらえるバンドだと自負しているので。そういうところも少しこじ開けられるようなイベントを自分達も作りたいし、それこそ自分達がやっているイベントもそうだし。少しずつ広げていって、それでメタル人口の母数も増やせればいいですし、自分達もやってきて良かったなと思います。
N:‟メタル的なもの”ではなくて狭義の意味でのメタルでの遊び方というのをもう少し深化させる契機になればいいなと思います。今回出演するのは質感としてのメタル、トラップまで含むようなものとは違う狭義の意味でのメタルで、どのバンドにもギターがいますし。でも今より成熟していくことで面白がれる伸びしろがお客さんにもまだまだあると思うので。特にやはり批評的な人達がより批評的になれるきっかけだとは思います。音楽を批評的に捉えていて、かつ流行りものを聴いている人達には楽しんでもらえると思いますね。今、特にメタルを聴く人でleave them all behindに来てくれるような人達はすごく批評的な人達が多いので、その後の作用というのはあると思いますね。しかもミックス具合として、leave them all behindシリーズの中で一番ミックスされている、一番色んな要素が入っている。僕としてはそういうケミストリーが起きるだろうなと。批評的な人達に批評的に観てもらうということが大事なのかなと思います。そこから、変わる。やはり言い方は悪いですけど、今メタルは死にそうなので。幽霊として生き残りそうな感じしかないので、実際的にやっぱりそれを蘇生するという。‟メタル的なもの“をここで入れるというよりは‟メタル”で固める意味がすごくあると思っていて。ある種真面目でもあり、でも遊び方の提供でもあると思うんですよ。膠着化した聴き方に対して。でも俺はこの先を楽観的に考えていて。やはりシューゲイザーのような音楽がとにかく流行りに流行ってもう極限までいった後の感覚で、そこから激しい音楽の流れが来るのではと思っているので。そういった点もある種2020年最初の狼煙になるんじゃないかなと考えています。