米国との‟成熟度”の差とは?日本のメタル・シーンにおける特異点 CRYSTAL LAKE Ryo × ENDON 那倉太一 対談 【前編】

Interview
2月1日・2日に開催されるleave them all behind 2020に出演するCRYSTAL LAKEとENDON。親交があるという両バンドのフロントマンに、北米ツアー見た景色やシーンに思うことを語ってもらった。
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那倉「繋がりは本当に‟叫ぶ”のをやってる人の繋がり、それに限ると言ってもいいぐらい。」

――今回はleave them all behind 2020に際しての対談なんですけど。お二人の接点と言うか、ご共演されたことってありますか?
那倉太一(以下N):ないです。
Ryo(以下R):ないですね。(初台)WALLでしたよね?初めてご挨拶させていただいたのが。
N:WALLでしたっけ?
R:MEANINGのライブの時に…。
N:そうそう。暑い時期にWALLにMEANINGを観に行ったんですよ。
R:その時誰かが紹介してくれたんです。自分はずっと個人的にENDONを聴いていたので、すごいびっくりして。まさかいるとは思っていなくて。
N:‟叫ぶヴォーカル”としてこう…言い方は悪いですがマニアックな、オタク気質?
R:オタクです。(笑)
N:このジャンルは渋くなくてはいけないし、ストレートなことを下手にやってはいけないんだけど、Ryoくんのヴォーカルはミックス・スタイルの喰い込み方も体力も半端ではない。
R:いえいえ。
N:それで接近したんです。
――お互い以前から認識していて、そこで初めて?
N:そうです。とにかく(ENDONの)シャツを着てもらおう、と。(笑)
R:(笑) ツアー中にめちゃめちゃ着てましたね。
N:あと、共通の先輩がいますね。SAIGAN TERRORのベースの菅原さんだとか。
R:特に菅原さんなんかはずっと、レーベルのオーナーもやられていたので、その繋がりでCRYSTAL LAKEはお世話になっていました。
――ENDONにはどういったイメージがありましたか?
R:
いや、すごく怖い人だと思っていて、最初。なんて言うんでしょうか、狂気系のヴォーカルじゃないですか、やっぱり。
N:まあそうですね。(笑)
R:もうのたうち回って…というスタイルだったので。すごい近寄りがたい人なのかな?と思っていたんですが、実際話してみるとすごくキャッチーで。(笑) ENDONのアメリカでのライブ映像を繰り返し観ていたので、かなり影響を受けました。なので俺は‟YouTubeの人”みたいな感じで観ていたんですよ。(笑)
N:恐縮です。(笑)
R:やっぱりすごい憧れだったんです。
――逆にCRYSTAL LAKEについては那倉さんは?
N:
音楽的な話はさっきしましたが、‟何回もしっかり継続してく力”がすごいというところがあって。さっき始まる前にメニューを配っていたところなんて、イケイケとは違う、シャキシャキしていましたよね。グイグイ前に進んでいく感じっていうのは自分にはないものなので。とにかく吸収していって色んなことが出来る中で、自分のように色んなことが出来るから下手に自分の味でやる、というよりはその完成度の高さがすごいというのが一番の印象です。とにかく上手くて、体力があって、混合型で、めちゃくちゃカッコいい人。僕は結構ヴォーカルばっかり見るんですよ。
R:(笑) ヴォーカリストはヴォーカルを見てしまいますよね。
N:別にCRYSTAL LAKEの話じゃないですけど、ヴォーカル同士で付き合ってて「なんでこんな人と付き合ってるんだ?」みたいなことがあるじゃないですか、音楽だけが好きだと。でもそれは「なんかいい」からなんですよ。
R:うん。わかります。そういうところを見ちゃう。
――二組のファン層ってあまり被っているイメージがなくて。
N&R:
そうですね。
R:​少し違いますね。
N:繋がりは本当に‟叫ぶ”のをやってる人の繋がり、それに限ると言ってもいいぐらい。
R:そこですごい繋がれるというか。
N:技術的な話とかはしないですけど。馴れ合いがあってよく遊ぶような感じでもないし。ただこういう時に本当に力を貸して下さるっていう。なによりもやっぱりうるさい音楽をみんなに聴いてもらうためにヴォーカル同士連帯していくのは大事ですから。
R:まさにそうです。
N:とにかく叫んでいる人が好きだからね。
R:(笑) そうなんですね。
N:この広まり方であそこまでゴリゴリに叫んでる人はなかなかいないですよ。素晴らしいことなんです。
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Ryo「自分としてもすごく責任があるというか、すごく緊張しながらその日を迎えようとしています。

――2月開催のleave them all behindに2組が出演することが決定いたしましたが、絶妙にテイストの違うバンドが入り乱れていると言いますか、ジャンルで固めたブッキングではないじゃないですか。それを知った時に二組の立ち位置をどのように解釈されましたか?
R:
自分達の場合は、勿論メタル・シーンでもやっているんですけど、どちらかというとメインストリーム寄りな場所でやっているバンドとして、国内外含め色んなフィールドで戦っているバンドとしてこう…「どうなんだ?」っていうのを見せるチャンスをいただいたというか。やはりどうしてもJ-ROCK寄りなバンドだと勘違いされがちなので、自分達って。一緒にやっているようなバンドも実際そうですし。自分達はその中で色んなところで演奏することで新しいお客さんだったり、まだ見ぬヘヴィ・ミュージックのファンになり得るであろう人達に対してアピールしているというのが正しいかなと思うんですけど。そういうところで戦っていますね。自分としてもすごく責任があるというか、そんなに難しいことじゃないんですけど、すごく緊張しながらその日を迎えようとしています。
N: CRYSTAL LAKEもENDONも両日出るわけじゃないんですけど、両日に出るのは唯一CAVE INなんですよね。彼らはやはり今言ったようなメジャー・フィールドでやってるってことがあって。一回メジャーの『RCA』に進出してから『Hydra Head』に戻ってるんですけど。そういう意味でそのCAVE INが両日とも出てるというのは、今Ryoさんが言ったような立ち位置が一つありますね。それと、CAVE IN ってメタルのアレンジなんですよ。まあ実際メタル・バンドなんですけど。そういうことを考えたい人が何人いるかは判りませんが(笑)、そういうことを考える良い機会になるとは思いますね。じっくり観てもらって。…少しCAVE INの話をしてもいいですか?
――はい。
N:
ENDONの所属レーベルが『Hydra Head』なんですよ。CAVE INも『Hydra Head』でレーベル・メイトっていうのもあるんですけど。で、CAVE INの中にはMUTOID MANの(スティーヴン)ブロッズキーもいますし、ENDONもさっきRyoくんが言っていたように、その(『Hydra Head』の)系譜としての責任というのはあるんですね。CAVE INは中期からは結構歌モノで。オルタナ好きな人が後からメタルに流れるっていうリスナーとしてのプロフィールをケイラブ(スコフィールド)が持ってたと思うんですけど。グランジからメタル/ハードコアにいったんだと思うんですよ。で、グランジとかオルタナになるとアメリカーナというかアメリカの歌心の話になってきて。ニール・ヤングとかが源流にあると思うし。そういうのに対してメタルのアレンジをどういう風に入れていくかっていうのをやってきたバンドっていうイメージがCAVE INにはあって。他の『Hydra Head』の人達も歌心だけじゃなくて常にメタルに色んなアレンジを試すんです。メタルが好きだからでしょうね。そういう系譜において、僕はとにかく『Hydra Head』のリスナーとしてかなりたくさん聴いてきたので。更に光栄なことに『Hydra Head』の仲間入りもさせてもらって。だからそういう立ち位置ですね。なおかつ向こうのバンドのメンバーにはたまにしか会わないじゃないですか。OLD MAN GLOOMも来ますし。だからやっぱり観ていただく、というのはありますね。言葉は通じないんですけど、なんとなく、なんですかね?繋がりは強いんですよ結構。すごくよくしてもらってるし。で、他のレーベル・メイトって言うのもおこがましいですけど、DISCORDANCE AXIS~GRIDLINKのジョン・チャンとかも毎回フィラデルフィアは地元が近いので観に来てくれたりして、『Hydra Head』の仲間みたいな感じはありますね。やっぱり(アメリカに)行くと一番界隈で対バンしてるバンドはSUMACですし。日本でENDONについて考えた時に『Hydra Head』という系譜はどこまで重要視されてるかわからないですけど、やってる側としてはもう好きで聴いていて、実際に入ったっていう。「入れてもらってありがとうございます」という感じ。なので『Hydra Head』という柱は僕の中ではあります。
R:僕も『Hydra Head』はすごくレーベル自体のファンで。ずっと中学の時から聴いてましたし。やっぱりISIS、CAVE IN、CONVERGEとかあの周辺の人達というのはものすごくバンドに影響を与えていますし。それに影響を受けたバンドとしても、自分達なりの解釈で魅せたいですね。
――バンドの他のメンバーの方もISISやSUMACは聴かれるんですか?
R:
特に自分がメインですかね。他のメンバーはCONVERGEとかは聴いてましたけど、ISISとかはあまり聴いてないかもしれないですね。でもCAVE INは初期とかかなり聴いてたと思います。ニュースクール・ハードコアが全体的に強くて。
N:売れてたんですよね、「ANTENNA」(2003年)の前後はかなり。2002年のサマソニに出ていますもんね。面白いのが、彼らはすごい早熟なんですよ。例えば俺が12歳くらいの時にはもう『Hydra Head』があって。で、アーロン・ターナーが自分より、親とまではいかないですけど(笑)、かなり歳上の人でレーベル関係をやってて…って思ってたんですが、実際はアーロンが俺の5個くらい上で、ケイラブは4つ上なんですよね。確か1993年ぐらいに『Hydra Head』始めたって言ってたので当時16歳くらいで。とにかくめちゃくちゃ早熟なんですよ。それは途中ある時に気づいてすごく驚きましたね。だからどんどん変われたのかな。で、もう97年とかですごい狂ったリリースになって。EYEHATEGODとANAL CUNTのスプリットとか出してたんですよ。インダストリアルとノイズとかを、イメージじゃなくて、メタルの中にノイズの音やコラージュを実際的に入れるっていうことをしたアーティストとしてはかなり老舗になると思うんですよね。『Earache』とか『Relapse』とかよりかなり融合度としては洗練されていて。建物とかのジャケットを思いつくというのもかなり洗練されてるというイメージが当時あって。クールなイメージがあったんですよ。それでずっと追いかけて聴いていましたね。

那倉「インテンスって言葉を使って褒められることが多いかもしれません。特にヴォーカルに関しては。」

――私のイメージとしては、ラインナップを見た時に海外勢と国内勢のボーダーライン上にCLとENDONが位置しているイメージがあって。海外でのライブ経験もさることながら、音的にもそうですし。結成時から、海外進出は視野に入れられていましたか?
R:
そこまで強く意識したことはなかったんですけど、でもやっぱり海外のバンドが来日して、そのサポート・アクトで出るってことは自分が入ってからはたくさんあったので。常に隣にあったというか、いずれチャンスはあるだろうとは思っていたんですけど、まあなかなかそれも掴み切れず。で、2年前からようやく初めて海外でライブをよくやるようになったんです。意識はしていましたけど、チャンスがなかったというか。そのチャンスがようやく巡ってきて。自分達としてはそこまで意識したことはなかったかもしれないですね。
――2年前に海外でのライブ活動を始める以前にも海外からのラブコールはあったのでしょうか?
R:
まあツアーしたバンドが「いつか呼ぶよ!」って言ってくるようなサービス・トークがあるじゃないですか。(笑) そういうのに期待しながら話を膨らませてはいたんですけど。やっぱり実際そういうのってエージェントだったりマネージメントだったりというものがいないと難しかったりして。自分達もようやくそれが整ってきて体制が出来たっていうので満を持してツアーを廻ってる感じですかね。
N:逆に今のこの爆発的な状況のきっかけというのは何でしょう?
R:自分達でもよく判らないんですよね…。それがたまたまハマったからなのか。初めて行ったのが2017年?2018年?
N:そう考えるとすごいですよね。
R:2017年の冬とかだったんですけど。自分達もなんでこんなに良いフェスやらにぶっこんでどんどんやってくれてるのか謎なんですけど。(笑)
N:そこはもう掴んでるんですよ。(笑)
R:あ、でもやっぱり一緒にツアーしたバンドの口コミがすごい大きくて。色んな仲間だったり色んな場所で「CRYSTAL LAKEはいいよ」って言ってくれたりしてたので。そうやって色んなものが繋がって今があるというか。自分が日本でやってきたことは無駄じゃなかったなと思いました。
N:俺は結成時は(海外進出への意識は)なかったですね。でもフォームが変わりました。やはりすごくアートなものをやろうというところから、より若かった時に、それこそ『Hydra Head』聴いてた時みたいな気持ちに戻っていったので。それでバンドになったっていう経緯がうちはあるので。でも最初に行った海外は全然、スイスのアート・フェスみたいなもので。とにかくお金の考え方が全然違うんですよ、スイスって。(笑) 5人来ていいよ!みたいな。公営のカジノ場をどかして上でアンダーグラウンドな映画のフェスをやっていて、下で色んなバンドが出て。その時日本から一緒に出ていたのが当時『あまちゃん』で大ブレイク中の大友良英氏とか、実験音楽の界隈から。でもとにかくうちのギターと俺はハードコアとメタルがめちゃくちゃ好きで、やっている内にどんどんクロスオーバーしていく濃度が変わっていく中で、今あるような『Hydro Head』とかアーロン・ターナーに繋がってったということですね。最初の海外のツアーはそれこそ…ツアーと呼べるものに行けるようになるとは全然考えてなかったですね。それはもう中々自分達の力だけでは。
――それはやっぱり口コミっていうのがあったんですか?
N:
最初のツアーは『Hydra Head』繋がりでSUMACとBLACK SPIRITUALSだったんだけど、SUMACのドラマーがカナダのヴァンクーヴァーからアメリカに入国出来なかった。(笑) それでSUMACなしで我々はツアーをやるという。
R:ヘッドライナーはなしですか?
N:ヘッドライナーが飛んだ状態で。
R:めちゃくちゃ大変じゃないですか。
N:だからもう狂気に磨きがかかりました。(笑) すごかったです。気合が入り過ぎちゃって。
R:さっきなんで自分達が急速にいい感じになってるかって質問があったじゃないですか?多分日本のバンドって狂気的であったり、あとこう…なんでしょうかね、すごく海外のバンドに比べてもライブがアグレッシヴなんですよ。お客さんとのコンタクトもより近かったり。結構海外のバンドって‟流す”じゃないですけど、ツアーも多いんで結構適当にやってたりする人も多くて。これはENDONもそうだし自分達もそうなんですが、120%「その場で死ぬんじゃないか?」ぐらいの勢いでやってるっていうのが向こうの人達には多分すごく新鮮なんじゃないかと思います。
N:それは大いにありますよね。
R:「どうしてそんなに動いて、ずっと叫んでいられるんだ!?」みたいに言われますし(笑)、やはり珍しいんでしょうね。アジアのバンドってどんななんだ?って向こうも気になっているでしょうし。彼らもヨーロッパはヨーロッパ、アメリカはアメリカ、みたいにマーケットが成り立ってシーンがもうそれだけで完結しているので。そういう中で物珍しく見られてるって感じはたまにします。まあそういう見られ方が好きっていうのもあって。逆にチャンスだと思っていて。フィルターがかかった状態で観られて、いいライブするっていうのが何にも代えがたいカタルシス的な感覚がすごくあって。やっぱりさっきも言いましたけどアグレッシヴ、って言うより感情的なって言った方がいいかもしれないですね。それが日本のバンドの良いところじゃないかなと。そこが評価されてるんじゃないかと思います。
N:よくインテンス(強烈な)って言われますね。インテンスって言葉を使って褒められることが多いかもしれません。特にヴォーカルに関しては。
R:確かにそうですね。「烈しいねえ」みたいな感じで、確かにありますね。
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那倉「日本のメタルのジャンルの評価軸の場ってあるんですか今?ないような気がするんですよね。」

――ENDONは色々な海外メディアの年間ベストにランクインしているじゃないですか?
N:
ENDONは批評家ウケがいいというか。(笑) 批評家・音楽好きにウケる。ミュージシャンズ・ミュージシャンじゃないですけど。ジャンル・ミュージックじゃなくて、それこそさっき海外で新しい刺激として認知されるっていうのがありましたけど、日本でもそうじゃなきゃいけないと思っていて。ジャンル・ミュージックじゃない、どこの誰の前に出てもやっぱり‟変”じゃないですけど、新奇刺激でありたいとは思うんですよ。なのでやっぱり届いた時にはチョイスされるものでなきゃいけないなと思っています。マスへの訴えってあまり考えれていないっていうのもあるかもしれないですけど、そこはやっぱり一番大事な原理なので。どこへ行っても新奇刺激であるように、音量だったり音像だったりを考えて。僕は性指向でいえばヘテロ・セクシュアルですけど、でもちょっと両性的な感じとかも自分の中から出てくる感じをそのまま出す。それは意識してます。どこへ行っても新奇刺激であろうと。だからその…なんでしょうね、日本のメタルのジャンルの評価軸の場ってあるんですか、今?ないような気がするんですよね。(笑) 
R:そうなんですよね。
N:それこそもう関根さんなんじゃないんですか?一番全うな評価軸って、と俺は思うんですけど。
――BUTCHER ABC/『OBLITERATION RECORDS』のですか?
N:
そうですね。関根さんが一番。俺はほとんど関根さんの情報を参考にしていますからね。
今新しい局面に入ってるとは思うんですよ。Twitterとかでは年間ベスト出す系の音楽好きの人達が結構言っていると思うんですけど、トラップ以降の流れとして新しいメタルを考えなきゃいけない風になっていますよね。でも思い出話になっちゃいますけど、「EAT MAGAZINE」とか「BASTARDS!」とか俺らがリアルタイムで読んでいた頃はかなりそういう批評的な意味も含めてありましたよね。出てくるもの出てくるもの、掘れば掘るほど違う趣のバンドがあってワクワクするっていうのはやっぱりありましたね。特に90年代から2000年の初頭ぐらいまでは。アメリカのものはすごく偉大だった。
――今って批評的じゃないと思うんですけど。
N:
でもTwitterではすごい批評的ですよね。
――一部はですね。メディアに批評って要るんでしょうか?
N:
メディアはやっぱりお金もらってやってるものだから、広告ってことなんですよね。Twitterはみんなタダで言いたいことを言っているからより批評として先鋭化してるっていう。
R:うん、うん。
N:「EAT MAGAZINE」はとにかく好きなものをみんなにわかってもらいたいという感じがすごかったですよね。すごく覚えています。
R:メタルもハードコアもエモもなんでも、みたいな。
N:編集が好きなものをみんな好きになってもらいたいみたいな感じが。(笑)
――それこそこれが載るBURRN!Onlineに携わっているのが「EAT」を作っていた小杉さんなので。
N:
ああ、素晴らしいですね。
R:「BASTARDS!」もやっぱりそうやって、色んなデス・メタルもニュー・メタルもスクリーモも載せていて。俺が一番ハマったのはIN FLAMESが表紙の「BASTARDS!」で、スクリーモ特集みたいなのがあったんですよ。で、当時USEDは好きで聴いてたんですけどその先を知らなくて。「ヤベエ、これ片っ端から聴いていこう!」みたいな感じでめちゃくちゃスクリーモ聴きまくってたんですけど。今はそういう媒体が最早必要なくなったというか、知ろうと思えば知れるっていう状況なんですけど、逆にそうやって知ろうとする人が少なくなってきてるというのは難しいなあと思いますね。なんかより簡単に情報を得られやすくなってる分逆にこう、得るところが広過ぎてどうしていいかわからなくなってる人というのが結構たくさんいると思うんですよね。だからこそやっぱりメディアの批評性というのはそういうのを導いてあげるものとしてある程度必要なのかなとは考えましたね、どういう形であれ。昔みたいには多分ならないんですけど。何か一つの軸みたいな、スタンダードが常にないとカオスになっていくなっていう。実際にここ10年ぐらい何かこう音楽的にメタル・シーンってあんまり…
N:深まってない。
R:そうなんですよ。新しいものも出てきていないし深くもなっていないし。同じことをずっと繰り返してそれをこう突き詰めていくって感じがしていて。
N:メタルって旋律として生き残ってるというよりこう、トラップ・ラップとかを聴いていると質感として残る、肌触り・質感としてやっぱりすごく残ってる。生存戦略として死ななそうで嬉しいと思うんですけどね。(笑)
R:そうですよね。感覚が一番大事ですから、やっぱり。
N:ライブ行ったらトラップの人みんな叫んでますよね。(笑)
R:はい、はい。メタルコアとかメタルの守護者みたいなところがありますもんね。
N:そういう意味ではATSUKIくん(DJ/トラックメイカー)とかすごくド真ん中の、十字路の真ん中に立ってJIN DOGGのトラック作ったり。それこそ彼なんて『Hydra Head』と『Daymare Recordings』のオタクですからね。そういう時代ですね、日本は今ね。ちなみにちょっといいですか?
――はい。
N:
さっきの「BASTARDS!」の話だと俺はDOWNが表紙のが、あれが結構よかった。SOILENT GREENとかEYEHATEGODとかがバーッと出てきて。通り名みたいなの書くじゃないですか?「メンフィスの暴虐王」みたいな。(笑) そういうのいいですよね。やっぱり色んなバンドがいるっていうのがとにかく楽しかった時期でもありますよね。
R:ジャンルも関係なくなんでも聴いてたし。
N:今は同じゲームで戦ってどっちが強いか、みたいな感じじゃないですか。昔は本当に全然技が違うみたいな感じで。
Daymare 濱田(以下H):僕も喋っていいですか?
――どうぞどうぞ。
H:
やっぱり今那倉さんが言ってたみたいなDOWNとかSOILENT GREENとかEYEHATEGOD辺りとボストンのハードコアって音楽的には全然違うじゃないですか。けど『Hydra Head』が両方出していたことによって判りやすく入り込めたというか。「ああ、並列で聴いていんだ」みたいなところがあって。そういう意味ですごく貴重な存在だったと思いますよね。僕は『Hydra Head』ともずっとやってますし、アーロンとも16年ぐらいの付き合いで大体考えてることも判るんですが、「これいけるんだったらこっちもいけるっしょ」みたいな、「これとこれは並列で聴けるよね」っていうことを提供していくのが面白いんじゃないかっていうのを意識をしていて。それはうちが出してるものだったりleave them all behindというイベントもそうなんですけど。「これ聴ける人はこれ聴けますよね」みたいなことを提案出来たらいいなって常に意識はしていますね。
R:まさにそれで。俺は超ブラック・メタル好きなんですけど、それのきっかけが『Hydra Head』がXASTHURをリリースしたことで。それで初めてちゃんとブラック・メタルを聴くようになって。当時サーストン・ムーアがブラック・メタル・バンドを始めたとかもありましたし。
N:TWILIGHTね。アーロンもいるし。
R:そうです。もうアメリカン・ブラック・メタル・オールスターみたいな感じだったじゃないですか。やっぱりそういう中でさっき仰られたように「これがいけるならこれもアリでしょ」っていうのはそこから色んな世界が広がっていくんじゃないかな。実際に広げてもらいましたし。
H:POWER TRIPなんかは、2020年のleave them all behindやる時に「こんなのどうかな?」って訊いたら「メンツ最高なのでやります!」って速攻、オファーも出してないのに返事をちゃんとくれて。そういう面白味をちゃんと判ってくれるというか。CAVE INはCAVE INで「POWER TRIP出るんだ、ラッキー!」みたいな。
N&R:(笑)
N:POWER TRIPはうちのバンド観た後に「Nightmare Logic…」って言ってましたね。(笑) でもやはりさっきのアーロンのレーベル運営指針じゃないですけど、「これいけるんならこれいけるんじゃない?」っていうのはかなり成功を収めてると思いますね。
H:ちゃんと幅を広げていって。
N:そう思いますね。すごく…おっかないというか。自分もめちゃくちゃ影響受けたんですけど。

Crystal Lake - Sanctuary (Official Music Video)

Ryo「自分が聴いてきたものを表現して結果的にメタルになるっていうか。そういうような土壌を感じましたね。」

――CRYSTAL LAKEの昨年の主戦場はもう海外にあったと思うんですけど。軸足をどこに置くかっていうことを迷われることはありますか?
R:
日本をベースにするか海外をベースにするかということですよね。そこは常にこう…悩んではいますけど。やれることはやりたい。今はかなり海外でチャンスをいただいているので、そっちをベースにしつつ、まあ日本でもツアーもしっかり自分達の出来る範囲でやりますし。毎年やっている自分達の『TRUE NORTH FESTIVAL』もやっていますし。そこは最低限確保するべきところなのかなと思ってやっていますね。全然機会さえあれば何でも俺らは出ますし。そこに関してはバランスをとるのは難しいですけど、今のところは上手くいっていると思います。
――『TRUE NORTH FESTIVAL』では海外のバンドを招聘していますが、自分達が外に出ていくだけでなくニュー・メタルコア勢など海外の音楽を輸入しようという意識も持たれているんですか?
R:
そうですね。やはり自分達のお客さんに新しいバンドを知ってもらいたいですし。自分達が出会った良いバンドを知ってもらいたいっていうのはあります。ADEPTは自分達がツアーする中で出会ったバンドで。FIT FOR A KINGもアメリカで一緒になって、今度一緒にツアーするんですけど。自分達がより肌で感じたものをそのまま伝えたいというか。流行っているバンドを呼ぶっていうんじゃなくて、自分達が観て「いいなあ」と思ったものを呼ぶという感じです。
――肌で感じたと仰ってましたが、海外と日本のシーンの違いというのを、一般論ではなく肌感覚で感じたことはありますか?
N:
メタル・シーンに限定した話で言えることは、全然成熟度が違いますよ、ハッキリ言って。例えばMUTOID MANを観た時にハッキリ思ったのは、やっぱり僕たちにとってメタルはね、白人に憧れないと注入されるものじゃないということで。全然別ですね。MUTOID MANを観た時に、最新のロックのようにも聞こえるし、どこか古くて懐かしいノスタルジックな、アメリカ人が聴いただけで自分達のアイデンティティが震えるようなものがあるんだろうなってところまで想像できました。でもそれは僕達がそれに気付いた時点で全然成熟度が違うし。日本のメタルはもうちょっとその…演歌に近いというか。コード進行も多いものは多いですし。だから歌謡曲とのクロスオーヴァーってことでXみたいなものも、すごく大好きですけど、でもやはり…違いますよね。独立して賑わい続けてるっていうのがあるなって思います。
――日本のシーンが独立している?
N:
いや、海外はですね。日本のシーンのメタルはメタルの細分化した中で各々で盛り上がってるという感じじゃないですか。嬢メタルを好きな人はDRAGONFORCEは聴くかもしれないけどPIG DESTROYERは聴かないじゃないですか。
R:そうですね。(笑)
N:そういうことだと思うんですよ。
H:多様性の捉え方が違う。
N:そうですね。あとやっぱり歌にメタルを乗っける、そのアレンジのフィルターというかツールとしてのメタルの成熟度も全然違いますね。そういうのを象徴するのはCAVE IN。象徴的な存在ですね。歌にメタルのアレンジを乗せることをしている。オルタナにメタルを入れるクロスオーヴァーっていうのは、アメリカ人にとっての歌とメタルっていうのは確実に重要ですし。それこそ面白い話が、デイヴ・グロールがCAVE INには「ハードコアの未来を感じる」って当時言ってて。彼はこの界隈に関してすごいウォッチャーなんですよ。例えば今のSUMACのニック(ヤキシン)のことを「現存する世界最高のロック・ドラマーだ」って言ってたり。デイヴ・グロールってどういう人かって考えたらNIRVANAでありFOO FIGHTERSでありQUEENS OF THE STONE AGEでもある。そのデイヴ・グロールが言っていることとCAVE INの音楽との系譜とかというのはかなり正当だと思います。オルタナとメタルのクロスオーヴァーとして。歌とメタルの関係としてはすごいと思います。‟メタルの歌”じゃないんですよ。
R:うん、うん。
N:歌にメタルのアレンジをほどこしたもので一番結晶度が高いのはCAVE INがひとつの頂点だと思いますけど。そういう人達が出た国だからこそ肌で感じるアレンジとしてこう深めていこうという感じがやっぱり全然違うんですよね。「メタルをやろう!」となるとまた変わってくる。そういうよりは普通にロックを蘇生し続けていく中で最新のメタルはあるっていうようなことを感じますね。あとやはりちょっとずつ早いですね。2017年ぐらいにNOCTURNUSのTシャツを着てツアーに行ったんです。あれ着てるとみんな「そのセンス最高!」みたいに言っていて、そのコズミックとか宇宙の感じがデス・メタルに入ってくるのが日本で流行するのが去年の終わり、今年ぐらいからかな?みたいな雰囲気じゃないですか。
H:BLOOD INCANTATIONとか。
N:まさに。でもやっぱりそういうのがちょっとずつ早いですね。CAVE INも宇宙好きですよね。ちょっと違う宇宙ですけど。天体?
R:「JUPITER」もそうですね。
N:衛星の。でも変に批評的なこと言っちゃうと、メタルの中でああいう宇宙とかが流行ってるのって結構ポリコレと関係あると思うんですよ。死体ジャケ使いづらいとか。殺人とか殺戮のイメージばかりじゃやっぱり…というのもあって。でもあの人達が宇宙のイメージを使ってるのってかなり僕は涙ぐましいってほどじゃないですけど、理性的な努力だと思いますよ。日本だとまだまだ、別にそれが悪いというわけじゃないですけど、残忍なイメージとかブルータルな感じとかっていうとデス・メタルっていう。それこそ汚物とかのイメージを使っている。そういう意味でもやっぱりメタルは実際生きてるってことだと思うんですよ。そうせざるを得ないっていうか。普通のものとしてあり続けなければいけないんでしょう、メタルが。
――Ryoさんはいかがですか?
R:
だいたい仰ったとおりだと思うんですけど。まあ音楽の感じ方が違うっていうのが一つあるかもしれないですね。フラッとお酒を飲みに遊びに来て、別にバンドを知らなくても「あ、いいな」って思える感覚っていうのがやっぱりまだそんなに日本の音楽シーンにはない。好きなものを観に行ってそれでみんなで盛り上がるっていうのが音楽シーンの形じゃないですか。例えば向こうのライブに俺らが出て、お客さんの中にマニアックなグラインド・バンドのTシャツ着てる奴がいたり、全然関係ないインディー・ロック・バンドのTシャツ着てる奴がいたり。結構何でもアリなんですよね。特にアメリカはすごく感じましたね。ヨーロッパは結構ミーハーな感じなんですけど。有名なバンドが来るから、友達が良いって言うからみたいなので行く人が多いんですけど。アメリカは受け止め方っていうのがすごい自由な感じでした。そこが違うのかもしれないですね。そういうところが多分さっき那倉さんが仰っていたロックとして新しい形を生んでいくっていうか。いざ自分がプレイする時に、何でもいろんなものを、自分が聴いてきたものを表現して結果的にメタルになるっていうか。そういうような土壌を感じましたね。

ENDON 【 BOY MEETS GIRL】

那倉「自分が好きな音楽やってる人で話が通じなかった人は今のところいないですね。」

――海外でのライブ活動において言葉の壁で苦労されることはありましたか?
R:
ライブ中はむしろ「言葉、必要ないじゃん」みたいな感じなんですよね、結構。どれだけヤバさを伝えられるかっていうのに尽きるっていうか、感覚としてどれだけハートに届けられるかっていうのを考えながらやってるんですけど。やはりインタビューやお客さんから「これはどう意味なんだ?」とか訊かれた時にやっぱりどうしてもこう、なかなか答えられないことがあったりして、すごいストレスになることはありますね。だからそういうメディア方面だったり、自分が発信する、色んな人にものを伝えるっていう時に難しいなって、自分の意図してない方向にいってしまったり、伝わり切らなかったりっていうのは今後の課題かなって考えてます。でも実際やっぱり仲良くしているバンドだったりというのは別にそんな難しいことを言わなくても普通に話してれば伝わるものはありますし。ずっと1ヵ月ツアーしてたら、なんか気付いたら言葉のその先が伝わるようになっていたり。向こうもちゃんとしっかり聞いてくれてたりするんで。そこは特にないですね。
N:僕は今のところ音楽的な要素を見た時に、わかりあえそうだ、自分も(相手のことを)好きだし相手も(自分のことを)なんか好きそうだな、っていう相手とコミュニケーションの問題で仲良くなれなかったとかそういうのはないですね。普通に激しくて変な音楽が好きな者同士国際的に身を寄せ合って生きてく感じっていうのもあるし。自分が好きな音楽やってる人で話が通じなかった人は今のところいないですね。カウント・グリシュナックなんかとは喋ったことがないのでわからないんですけど。(笑)
R:(笑)
N:でもやっぱりある種あれ(BURZUM)は純度の高いものじゃないですか。僕が付き合ってきた人はやっぱりミクスチャーなんですよ。狭義の意味でのミクスチャーじゃなくて‟併せるもの”という意味で。ミックスしてるバンドと付き合ってきて、ある種押し合って対バンするので、その時点でコミュニケーションの半分はもう取れている。尊重し合うし認め合っているところからスタートなので。
H:両バンドに限らず日本のバンドに興味持ってる海外のアーティストってやっぱり言葉の壁を越えてこようとするというか。自分が普段喋ってる喋り方じゃなくて、それこそ英会話教室の先生みたいな感じで「こういうこと?オッケー」みたいにしてくれる。
N:うん。そうですね。
H:そういう接し方は僕がいろんな人を見ていて、してくれてるなって思います。
R:噛み砕いてこう、一個一個話してくれますね。
H:逆に「興味ないんだろうな」って人はいつものペースで喋って終わり。幸いにもお二人もそうだと思うし、僕が見てきた中であまりそういうタイプはいないかな。
N:対バンしたのに性格とかコミュニケーションの問題で上手くいかないというのはあり想像出来ないですね。それに甘えて英語を覚えない自分もどうかと思うんですけど。(笑)