『メタル第7世代~ザ・ワールド・イズ・マイン』 06“ファイティングマン”/後編

メタル第7世代~ザ・ワールド・イズ・マイン
前回に引き続き、今の10代後半~20代の間で静かに火花が散っているオールドスクール/ニュースクール闘争について書いていきます。
これは結構シビアな問題で、メタルサークルなどの同じコミュニティに両派閥が同居しているとなかなか厄介なのです。仲違いの一因になることもあります。
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バンドに求められる“ファッション性”

前回、ニュースクールではステージングがキマっていることが重視されると書きました。

かっこいいステージングをする人物には、当然かっこいいファッション・ヘアスタイルが伴っていなければいけません。
ニュースクール系の音楽を演奏するバンドマンは、脇が大きく開いたタンクトップや大きめのウィンドブレーカーにスキニーなど、ラフな服を好みます。髪型は長めの前髪を横に流したもの(いわゆる9:1分け)が多いでしょうか。
国産バンドCRYSTAL LAKEのメンバーが主なお手本として憧れの的となっています。
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Crystal Lakeのライブ写真。件のタンクトップが確認できます。
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こちらはSailing Before The Wind。ウィンドブレーカースタイルは定番ですね。
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一昔前のThe Devil Wears Prada。エモボーイに近い髪型。
一方でオールドスクール派はテクニックに全力投球するきらいがあり、あまりファッションに重きを置くことはないように感じます。
自身のリスペクトするバンドのTシャツを着て、ジーンズや迷彩のパンツと合わせるのが一番オーソドックスなステージ衣装でしょう。髪型は国内なら黒髪を真っ直ぐに伸ばした人が多いですね。革ジャンもマストアイテムです。CANNIBAL CORPSEが判りやすい例で、一見してヘヴィ・メタルを好む人間だとわかる出で立ちです。
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デス・メタルの帝王Cannibal Corpse。
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こちらはObituary。いかにもですね。
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国内で若手ながらオーソドックスなヘヴィメタルを聴かせるHell Freezes Over。
オールドスクールとニュースクール、彼らはお互いに「軟派者」とか、「ダサい」とか心の内で毒づいていたりいなかったり。

“DIG”は重要か?

オールドスクール派はマニアックなバンドを抑えていることをステータスとする文化があります。
diskunionの廃盤セールでレアな音源を発掘しては報告したり。サブジャンルが誕生するまでのシーンの動きなども真剣に考察しがちです。音のルーツに対して貪欲な面があります。

ニュースクール派は新しいものには非常に敏感ですが、現在に通ずる音楽性であったとしても過去のものを掘り返すことはあまりしないようです。食指が過去のバンドに向かうのではなく、新進気鋭のインディーズバンドの音源をライブの物販で購入して聴き込む、といった楽しみ方をするのです。

彼らはしばしばオールドスクールの音楽を押し付けられるのを嫌います。「これぐらい聴いておかないと」といった台詞は禁句です。ただ、ニュースクール派が食わず嫌いをするのに比べ、オールドスクール派は一応新しい音楽も味見した上であれこれと批判します。批判しなければ良い話なのですが、それは置いておきましょう。これは私見ですが、オールドスクール派は音源に、ニュースクール派はライブによりリソースを割いているように感じます。もしかしたら年代で分けた時、40代以上は音源に、30代以下はライブにお金を使っているかもしれません。
フィジカル音源への若年層の接し方などはまた別の場で触れることにします。
参考までにこちらをどうぞ。

2018年度「音楽メディアユーザー実態調査」報告書公表
https://www.riaj.or.jp/f/pdf/report/mediauser/softuser2018.pdf

融和と吸収を

現状、10~20代のなかでニュースクール派閥が多勢であることは間違いないでしょう。
やはりトレンドに沿った現在進行形のジャンルには人を引き付ける力があります。自分とそう変わらない歳のアーティストを観ることで、「真似したい!」という意欲が掻き立てられ、自らシーンに身を投じんとする動きも活発になります。
オールドスクール派の若者からは、バンドを組みたくても同年代だけでメンバーを揃えるのが困難だという声が上がっています。

現在、メタル系サウンドの最前線というと海外ならPolyphia、国内ならichikaなどファッション性とテクニックを兼ね備え、なおかつ洗練されたサウンドの楽曲を数々リリースしているミュージシャンが挙げられます。しかし、その音にはAllan Holdsworthら往年のフュージョン系ギタリストのエッセンスが多分に含まれています。ゼロから突如生まれる音なんて、ほとんどないのです。ヘヴィ・ミュージックを志すキッズの興味は今後さらにそちらの方向へ流れていくことでしょうが、横並びの士から目を外し過去から吸収することが出来るかは進化の鍵となります。また、オールドスクール派の若手ミュージシャンには、意固地にならず真新しいサウンドと融和していけるかで差が出るのではと感じます。


Allan Holdsworth Frankfurt 1997

Allan Holdsworthのライブ映像

Polyphia | G.O.A.T. (Official Music Video)

インスト・バンドPolyphiaのMV

ichika - illusory sense (Official Music Video)

気鋭のソロ・ギタリストichikaのMV
聴きたくもないものを無理に耳に突っ込む必要はありません。
聴きたいものを聴いているうちに、裾野が広まってゆくことがベストではないでしょうか。
オールドスクーラーのみなさんも、ニュースクーラーのみなさんも、ぜひ融和と吸収を。

今回はここまでです。お付き合いありがとうございました。🐜
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ROCKIN'ON JAPAN 編集部日記(https://rockinon.com/blog/japan/167554)にてSUMACのシャツを纏うCrystal LakeのRyo<vo>さん。
実に渋いチョイスでキッズを煽動している...のか?