『メタル第7世代~ザ・ワールド・イズ・マイン』 05“青春狂騒曲 ~青雲立志編~”

メタル第7世代~ザ・ワールド・イズ・マイン
『BURRN!』編集部に配属されたばかりの新人編集者によるコラム、第五回。
 メタルサークルとは、エアポケットである。沈没した船の内部に空気が残されている空間を指してエアポケットと呼ぶらしい。ヘヴィ・メタルという、かつては豪華絢爛な大船だった音楽ジャンルは、大学生の間では今や沈没した船に等しい存在である。いや、沈没「した」とは思いたくない。浸水中ぐらいにとどめておこう。台頭するポピュラーな邦ロックバンドに圧されて淘汰されゆくジャンル。四方八方から水がなだれ込む状況下で、辛うじて酸素を残している場所がある。それが各大学に存在するメタルサークルなのだ。同じ趣味を持った仲間が集い、時には摩擦に頭を悩ませながらも、ヘヴィ・ミュージックを演奏することに没入していく。世間的には褪せた音楽かもしれない。しかし、瑞々しいきらめきを放つ瞬間がまだここにある。


クサい前文を書いてしまいましたが、お察しの通り今回はメタルサークルの内情について露わにしようと思います。と言っても暴露話の類は特になし。なぜなら、今メタルサークルに所属する諸学生のほとんどは善良そのものだからです。自分の6つ上くらいの世代の先輩方による数々の武勇伝を伝え聞くことはありますが、公にすると差し障りがありそうなので心にしまっておきます。夏合宿で全裸になる文化が現存するサークルはあるようですが…。

現存するメタルサークル一覧

自分の確認出来る限りで、関東圏で現在メタルサークルが存在するのは以下の大学。

早稲田大学 Music Circle HEAVEN/Sound Workin'Shop
慶応義塾大学 い軽音/KSS
明治大学 Music Qube
立教大学 Over All Music
中央大学 HEATWAVE
法政大学 音楽企画倶楽部
駒澤大学 ハワイアン研究会
帝京大学 HEADBANGERS
関東学院大学 ハワイアン部

関西圏では以下の大学。

同志社大学 ライラックレインボーズ
立命館大学 NEW MUSIC研究会
関西大学 METAL WORKS

他にも幅広いバンドをカバーするオールジャンルサークルとして、東京都市大学フォークソングクラブ、東京理科大学軽音楽部ロック研究会、東洋大学軽音ロックなどが挙げられます。また、かつては青山学院大学にNaked Wednesday、上智大学にSSSが存在していました。

絶滅危惧種のサークルたち

上記の大学の生徒ではない大学生で、メタルのコピーバンドを始めたい!という熱意を持った人は近場のサークルに越境して入部します。この越境制度を採用するサークルのことをインターカレッジ・サークル(通称インカレ)と呼びます。メタルサークルは一部の例外を除いてインカレ化が進んでいます。なぜなら人手が足りていないから。メタルを聴く若者は、ジャニーズやEXILE系、邦ロックバンドのファンに比べれば圧倒的に少ないです。

が、それだけにとどまらず近年は楽器を始める学生の母数が減ってきているように思えます。いや、楽器というよりバンドを組むことを敬遠しているのかもしれません。前回書いたように、今の時代DTMソフトの力を借りれば独力で総ての楽器を打ち込み、楽曲を完成させてインターネット上で発表することが出来ます。例えば立地に恵まれないがために県をまたいで他大学のサークルに入ると、ライブ前の時期に授業やバイトの合間を縫って練習に通うのはなかなか骨が折れます。もしくはサークルに入ったものの今一つ周りと趣味が共有できない、ウマが合わない場合。これは人に恵まれなかった例ですね。これらを呑み込んでバンドを組むくらいなら、個人で撮った演奏動画を公開してリアクションをもらったり、はたまた独自に作曲してSound Cloudにアップロードしてみたりする方が充実した音楽生活を送れるのではないか、と考える学生が増えるのも無理はありません。

メタル人口の減少とバンド人口の減少によって年々メタルサークルは縮小されています。青山学院と上智大学のサークルだって、つい数年前までは動いていたのです。あと5年後には一体いくつのサークルが活気をもって活動できているでしょうか。再興するサークルがないとも言い切れませんが。年に1度多大学合同で催されるメタルサークルのフェスでお目にかかれる、ライブハウスいっぱいに大学生メタラーがひしめく様は圧巻です。あの光景が失われるのはやはり寂しい。

音楽マイノリティのオアシスとして

メタルサークルに入る利点は、プレイヤーとしてもリスナーとしても充実した学生生活が送れることです。メタルといえば言わずと知れた演奏技術重視のジャンル。もちろんメタルバンドのコピーをしようとする学生は平均的に楽器のスキルが高いです。そのため、在籍するだけで初心者であろうが周りに引っ張られて演奏力が向上することは約束されています。加えて、他のサークルでは力量不足でとてもメンバーを揃えられないようなバンドもコピー出来ます。CRYPTOPSYやVEIL OF MAYA、NECROPHAGISTなど相当レベルの技術が求められるバンドをコピーしているサークルは決して少なくありません。これはメタルサークルでしか出来ないことだと断言できます。

当たり前のことですが、サークルに集まる学生は多かれ少なかれメタルを聴いています。中にはdiskunionに年数十万円費やすレコードフリークもいたり、メタル以外のジャンルにも異常に造詣が深い猛者もいます。ただでさえ人口の少ない学生メタルリスナーが一堂に会する機会はそうそうありませんから、自分の好きな音楽について語る場としてはもってこいなのです。

かくいう私も高校卒業までは周りに一切メタルの話などせず、孤独に音源を漁る日々を過ごしていましたが、メタルサークルの新入生歓迎会でひいきのバンドの話が通じた時の感動は今でも鮮明に思い出せます。「○○(バンド名)の話ができたからこのサークルに入った!」と目を輝かせて語る部員を見ると、これからも貴重な出会いを提供する場所として在り続けてほしいと願わずにはいられません。こうした交流を重ねることで価値観・力量ともに合致するメンバーを集め、バンドを結成する仲間も傍で見てきました。


これを読んでいる高校生、もしくは大学生は、是非メタルサークルへの入部をご検討下さい。
学年も大学も関係なく迎え入れてくれることでしょう。
もう大学を卒業された諸兄は、未来のスターを生む苗床として期待をもって応援していただければ幸いです。

メタルサークル動画集

Cニュース「WHAT'S THE HEAT WAVE」

中央大学 HEAT WAVEの紹介動画

Dying Fetus (3 piece band cover) - Ignition Fest 2017

明治大学 MUSIC QUBEによる演奏動画

Death - Pull the plug(band cover)

早稲田大学 Music Circle HEAVENによる演奏動画

Obscura-The Anticosmic Overload(Cover) 法政大学 音楽企画倶楽部

法政大学 音楽企画倶楽部の演奏動画

学園祭でメタルコア演奏してみた/Performing Crossfaith at school festival

青山学院Naked Wednesdayの動画