ナレーションはメタラーにまかせろ Vol.9 「アイドルは可愛いだけじゃダメかしら」

ナレーションはメタラーにまかせろ
10周年を迎えた「TOKYO IDOL FESTIVAL」。5年ぶりに会場演出に携わったTVナレーターが綴る"TIF回顧録"。「アイドルは可愛いだけじゃダメかしら」

TIF2019 Thanks Movie

世界最大級のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL」通称"TIF"が今年10周年を迎えた。年々規模が拡大し、今年は210組以上のアイドルが東京・お台場に集結した。

2010年の第一回開催から第五回開催まで、フェス内の各会場にて、場内アナウンス、出演アイドルの入場コール(出囃子)などに携わらせていただき、10周年の今年、5年ぶりにTIFのステージ演出のご依頼をいただいた。

今年の梅雨明けは7月29日。平年より8日遅く、昨年より30日も遅かった。梅雨明けがようやく発表された4日後の8月2日開催であった今年のTIF。

Zepp Divercityをメインステージに、お台場エリア計10箇所でライヴが繰り広げられ、そのうちの船の科学館駐車場エリアや、フジテレビ湾岸スタジオ横の公園、フジテレビ湾岸スタジオ屋上など、屋外ステージを擁したTIFだったが、きまぐれな夏の天候に遭遇せず、晴天の下3日間無事に開催された。

暑かった港区高輪の夏

 (16323)

お台場の夏の風物詩ともなったTOKYO IDOL FESTIVALだが、10年前の栄えある第一回開催は、数多くのメタルアーティストのステージも行われている「ステラボール」などがある品川プリンスホテルエリアだった。

この時の出演アイドルには、5人編成時代の「ももいろクローバー」、そしてBABYMETALの前身「さくら学院 重音部」など、後にアイドルとメタルを融合させ、シーンを震撼させていく彼女たちの初々しい姿があった。

第一回ということもあって運営は当時バタバタで、全ステージの生ナレーションを担当していた小生は、品川プリンスホテルエリア中央の柘榴坂を、真夏のなか何度も何度も行き来したのが懐かしい思い出である。

Andrew W.K. - Party Hard (Official Video)

熱かった江東区青海の夏

第二回から会場はお台場へと移り、"アイドルmeetsメタル"のステージをはじめて目撃したのだった。彼女たちは、仮面女子の源流グループ「アリス十番」。長い黒髪を振り乱す激しいヘドバン・ステージに、裏方スタッフでありながらも見入ってしまった。この出会いは、ANDREW W.K.デビュー時の、爽やかなのに暑苦しい”鼻血アルバム”を聴いたときの、ギャップと屈折が入り交じった衝撃と同じだったような気がする。

そして久しぶりの今年のTIFにおいては、ステージ裏でマイク片手の生ナレーションではなく、あらかじめ収録したナレーションが、アイドルのステージ入場前に放送されたため、熱気包まれるアイドルファンとともに、自分の声をニヤニヤしながら聴いての観覧だった。

5年ぶりの観客目線でのアイドルの祭典。会場に響く自分の出囃子演出に、会場は一気に盛り上がり、”ケチャ”&”ヘドバン”の狂乱のシンフォニーが巻き起こる。そんな光景に、アーティストやバンドのルーツが伺える、メタルのライヴ開演直前に流れる、あのBGMと、自分の出囃子演出とを重ねてしまった。

Black Sabbath - "War Pigs" Live Paris 1970

シャウト・アット・ザ・アイドルステージ

開演を待ちわびるオーディエンスたちは、まもなく登場するアーティストのリスペクト選曲による登場BGMに、誰もがアドレナリンが高くなるものだ。

尊敬すべき我がメタルフレンズたちに、そんなライヴ開演BGM演出について質問してみると、各アーティストの特色があることを教えてもらった。

JUDAS PRIEST;BLACK SABBATH「War Pigs」
IRON MAIDEN;UFO「Doctor Doctor」
METALLICA;AC/DC「It's A Long Way To The Top」
ANTHRAX;IRON MAIDEN「Number Of The Beast」
ANTHEM;BLACK SABBATH「Heaven And Hell」

"なんてったってメタル"とも言うべき、HR/HMシーンを代表するこれらの名曲が流れるとともに会場は暗転し、狂喜のライヴが開幕する。この開演BGMの演出は言わば、メタルライヴならではの王道のセットリストとも言える。そんなお決まりライヴ演出として、自分の出囃子ナレーションも、TIFファンに浸透していてほしいと、ちょっぴり思う自分が、アイドルファン渦巻く空間にひっそりと佇んでいたのだ。

BiSH / 遂に死 [OFFiCiAL ViDEO]

アイドルのステージの空気感を数多く体感してきたつもりだったが、10周年を迎えた今年のTIFは、10年前の熱気とは全く違うことを実感した。この10年間でアイドルはハイブリッド化し、キュートでキラキラハッピーだけでなく、アンビエントでパンクでハードコアなアイドルも続々と登場している。

そんなアイドルの進化に追い付けているのか? 「タイガー!ファイヤー!サイバー!」が轟く真夏のアイドルフェスに、自分の声は貢献出来ていたのか? 正直に言えば10年前に比べて、自分の張り上げたナレーションはパワーダウンしていたような気がする。

ここ数年開催されている、結成30年越えのレジェンド・メタル・アーティストたちの衰え知らずのライヴに、多くのメタルヘッズたちは興奮し、活力をもらっている。メタル愛する者として、歳取ったからという理由や言い訳は言ってはならないのかもしれない。