ナレーションはメタラーにまかせろ Vol.8「ナレーターよ、数字に幻惑されないで」

ナレーションはメタラーにまかせろ
虹は七色、侍は七人、IRON MAIDENは第七の予言、ヤマトナデシコは七変化、円谷プロの空想特撮シリーズ第3弾なのにセブン…数字の読みに戸惑うTVナレーターが綴る、夏の”数字メタル”。「ナレーターよ、数字に幻惑されないで」。
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七月と7月

Joe Satriani - Summer Song

2019年も下半期に突入した。梅雨明けの兆しがようやく見えはじめ、夏のボーナス、夏フェス、夏休みなど、JOE SATRIANI"Summer song"のような軽快な曲が聴きたくなる季節の到来だが、今回は地味で素朴でインドアな疑問を取り上げさせていただく。

皆さんは「7月」を、“しちがつ”と読むか、それとも“なながつ”と読むか。
これは、「2019」も同様であり、“にせんじゅうきゅう”なのか、“にせんじゅうく”なのか。このように、数字はナレーター泣かせである。

会話でもナレーション読みでも、自分の場合は7月は”しちがつ”なのだが、関西出身の人などは”なながつ”と言う方が多いような気がする。調べてみると、“しちがつ”は1月(いちがつ)と聞き間違えやすい、という理由から、政府の公式発表などは”なながつ”と呼称しているとのことだ。また宿泊施設なども、予約の間違いを避けるために“なながつ”と呼ぶそうだ。

日本語の歴史のなかで、古くから「七」は”しち”と読まれていたらしく、代表的な例として「質屋」がある。この語源は質屋のイメージを一新するために、縁起のよい数字である“七(しち)”を文字ったものであるという。このルーツから、”しち”と読む方が古いのではという分析もある。戦国時代の逸話である『賤ヶ岳の七本槍(しずがたけのしちほんやり)』が活躍した、賤ヶ岳の戦いの発端『清洲会議』が行われた愛知県では、20年前まで電話帳の「質屋」の欄は、”しちや”と”ひちや”の両方が登録されていたそうだ。”しちや”の「さ行」は滑舌が要求され、”ひちや”の「は行」は肺活量が要求される。どちらにせよ、こちらもまたナレーター泣かせなのかも知れない。

ナナツの大罪

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七」&「7」といえば、忘れられない苦い思い出がある。

『ウルトラマン』コラボ商品のニュースを担当させていただいた時のこと。自分に円谷愛が足りなかったのだろうか。”ウルトラマンセブン”と記されたナレーション原稿に対し、その誤植に気付かず、”ウルトラセブン”と訂正せずにオンエアされてしまったのだ。この放送直後、Twitterでは多くの方からお怒りの呟きが発信されており、気が付かず読んでしまった事に深く反省した。

ナレーター泣かせの数字ナレーションにおいて苦戦必至であるのがスポーツ番組だ。

野球では、4番バッター(よばんバッター)、三遊間(さんゆうかん)など独特の数字の読み方がある。さらにメジャーリーグでは、2015年より導入された解析ツール「スタットキャスト」により、ピッチャーの「投球データ」(球速、回転数、ボールの変化量)、バッターの「打撃データ」(打球速度、打球角度、打球飛距離)、出塁の「ランナーデータ」(打撃後の各塁までの到達時間、走力の最高速度、リードの大きさ)、ファインプレーの「守備データ」(打球に到達するまでの距離、野手の球速、捕手の送球時間)など、日本のプロ野球情報では聞き慣れない数字が、ナレーション原稿に散りばめられることになった。

これがゴルフとなるとまた手強い。例えば、「7(なな)番ホール、パー3(スリー)の第2(に)打を沈め、この日は5(ファイブ)バーディーノーボギー、トータル9(ナイン)アンダー。トップと5(ご)打差の6(ろく)位タイです」となる。英語読みと日本語読みが入り混じり、第2打は時折、”セカンドショット”と読む場合もあったりするのだから、脳内が”Dazed and Confused”状態になってしまう。

Led Zeppelin - Dazed and Confused (Supershow 1969)

東京・六本木の老舗ラーメン店「天鳳」をご存知だろうか。天鳳には「1・3・5」という定番メニューがある。これは「1・麺固く、3・油濃く、5・しょっぱく」の配合率である。この意味を知らなかった新社会人時代に、“「1・3・5」を固めでお願いします”と厨房に注文。すると、”「1・3・5」はもう固えんだよ!”と、叱られてしまった事があり、ナレーション現場でもラーメン屋でも数字を指摘されてしまう結果になった。
この抜群の配合であるラーメンをまだ未経験の方は、是非ともEX THEATER ROPPONGIのライヴ後にでも立ち寄って、”「1・3・5」をお願いします”と、堂々と注文していただきたい。
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大佐は数字がお好き

2112: Overture / The Temples Of Syrinx / Discovery / Presentation / Oracle: The Dream /...

HR/HM楽曲の中にもナレーターを悩ます数字のタイトルがある。例えば、VAN HALENの『5150』は(fifty-one fifty)であり、決して(Five Thousand One hundred fifty)とは読まないハズ。METALLICA"ONE"、WINGER"Seventeen"のように、アルファベット表記なら読み方に躊躇はしないが、VAN HALEN"1984"、QUEEN“39” 、MOTÖRHEAD"1916"、RUSH"2112" 、SAXON”747” 、SLAYER"213" 、STRATOVARIUS"030366” 等々、数字だけのタイトルは、そのシンプルさゆえに読み間違えると大恥をかくことになる。

Megadeth - Public Enemy No. 1 [OFFICIAL VIDEO]

そんな中、MEGADETHの楽曲に数字タイトルが多いことが分かった。1990年作『Rust In Peace』収録の”Hanger 18”を筆頭に、”99 Ways To Die”(1995年『Hidden Treasures』収録)、1999年作『Risk』収録の”Seven”、2009年『ENDGAME』収録の”1320”、”44minutes”、2011年作『TH1RT3EN』収録の”Public Enemy No.1”、”13”などがある。デイヴ・ムステインのサイド・プロジェクト、MD.45もまた数字が使用されており、”インテレクチュアル・スラッシュ”提唱者だけに、数字がよく似合うのであった。ドン臭い文系の小生は、几帳面でスマートなイメージの”理数系”に憧れを抱くようにMEGADETHの楽曲に酔いしれているのかもしれない。
・MOTÖRHEAD"1916"
1916年、第1次世界大戦におけるフランスでの会戦「ソンムの戦い」が題材。
・RUSH"2112"
西暦2112年、ひとりの若者がギターを再発見した物語。
・SAXON"747"
1965年に起きた"ニューヨーク大停電"により、ボーイング747が着陸出来なかったエピソード。
・SLAYER"213"
全米を震撼させた殺人鬼・ジェフリー・ダーマーが住んでいた「オックスフォード・アパートメント213号室」。
・VAN HALEN"5150"
精神障害者の措置入院手続きを定めた、カリフォルニア州法のポリスコード
・QUEEN"39"
××39年、宇宙を1年間旅した主人公が、地球に戻ると100年が経っていたという、"相対性理論"を彷彿とさせる物語。
・MEGADETH"1320"
アメリカ発祥のカーレース「ドラッグレース」のスタートからゴールまでの距離、1,320フィート(1/4マイル)

歌詞に込められた世界観、制作意図などが潜む数々の数字メタルナンバー。もしかすると、かつて夏の風物詩であった伊藤政則氏認定の『HM王座決定戦』で、数字タイトルについてのお題があったかもしれない。

こんな数字タイトルにちんぷんかんぷんの自分だが、これだけは知っている。『HM王座決定戦』が開催されていた五反田TOCビルの地下にある「食事処 志野」の豚肉七味炒め、”ニクシチ”は美味いということを。
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