ナレーションはメタラーにまかせろ Vol.13「20年目を迎えたメタルナレーターにナレーションはまかせられるのか?!後編」

ナレーションはメタラーにまかせろ
コロナ禍で浮き彫りとなった、20年目のナレーターの「適応力」と「処世術」

適応力とは

ACCEPT - Pandemic (OFFICIAL MUSIC VIDEO)


仕事柄、このところ毎週、毎週「新型コロナウィルス」についてのニュース原稿を読んでいる。

遡ること今年の2月、「ダイヤモンド・プリンセス号」の報道からおよそ4ヶ月間、コロナ報道最前線の渦中で揉まれていることになる。

『戦後最大の危機』と言われる未曾有の大事態のなか、「クラスター」、「ロックダウン」、「ソーシャル・ディスタンス」、「3密」など、読み慣れないワードを何度読んだことだろう。

世の中の状況は状況として、誰もがこの非常事態において情報を求めているさなか、情報伝達を担う"ナレーター"として、緊迫感漂う報道部から必要とされていることに、関係各位への感謝の思いとともに、20年目を迎えたナレーションスキルが認められるようになったのでは、という個人的な感慨を抱いたことは否定しない。

Don Dokken - Stay


一方で、こんなことも思った。

非常事態宣言発令中、政府の発令に『従う』ということは、
「適応」あるいは「順応」だったのだろうか?と。
受け身の我々は、優れた判断だと納得できる内容の沙汰を待っていたのが本音かもしれないが、どこかの誰かがお触れとして出す内容よりも、日本人ならではの『空気を読む』という適応能力こそが、結果としてコロナ犠牲者を最小限に抑え込めたのではないだろうか、と。

『感染者数』を『かんせんしゃしゅう』と読んでしまうようなお粗末なメタル・ナレーターではあるけれども、与えられた原稿、求められるオーダーを受ける収録現場において、『アジャスト』、『フィット』させてこられた適応能力は、経験値における瞬発力、判断力が働いたのではないかと思っている。長らくいい加減な生活を過ごしてきた小生が、手洗い、うがい、マスク、そして不用意な外出を避けるなど、コロナ報道最前線の渦中にいたせいか、行政の要請にはタイムリーに「対応」してきた。

振り返ってみるとその意外さに自分でも驚いている。

ハードだからこその葛藤

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ここで「適応」という観点から、メンバーチェンジが著しいHR/HMシーンを振り返ってみよう。
脱退、あるいはバンドからメンバーが解雇されることは頻繁に起きてきたし、これからも起きるだろう。
「適応」という観点からすると、解雇されたメンバーは、バンドという組織には適応出来なかったのかも知れない。
あるいは『バンド分裂』でよく耳にしてきた『メンバー間の音楽性不一致』。

『悪影響を与える音楽』として、音楽シーンからはみ出ていたHR/HMではあるけれど、音楽シーンの同時代性に適応しなければ、バンド存続の危機にさらされてしまう。
適応する、しないの葛藤の中で、音楽性の不一致が生じ、解散を選んでしまったバンドもいただろう。

数多くの技巧派たちを育んできたメタルは、シーンに適応すべく、有り余るポテンシャルを削ぎ落としてきた。
結果、不器用でフレキシブルさを欠いたバンドは淘汰され、時代に適応できる能力を持ったバンドこそが、かろうじて生き延びてこられたのが90年代後半のメタルシーンだったように思われる。

そんなあの頃のバンドたちの試行錯誤が、コロナ禍を乗り切ろうと奮闘する各ビジネスユニットの姿と重なるのは自分だけだろうか。
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この記事のライター

佐藤 アサト
佐藤 アサト
1973年8月26日、神奈川県鎌倉市出身。高校時代は米ワシントン州滞在。大学卒業後、サラリーマンを4年半経験。後、2000年から声優事務所に所属し、現在ナレーターとして、TV、CM、Webなどあらゆる映像コンテンツにて活動している。