ナレーションはメタラーにまかせろ Vol.04「Metalのイントネーション、METAL​はアクセント」

ナレーションはメタラーにまかせろ
ナレーターに立ちはだかる「イントネーション&アクセント」。その壁は、ごく普通の”Brick Wall”ではなく、悩ましいほど強固な”Metal Wall”だった。上向きか? 横向きか? 正しい睡眠の提案ではない、正しいイントネーションの提案を綴った、矢印多めのコラム。
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いとしのレイワ

Seek & Destroy

新元号「令和」を迎え、ようやく1ヶ月が経とうとしている。先月末辺りから、ナレーション原稿に「令和」の二文字が増えはじめ、「令和」のイントネーションに関する是非が、収録現場で騒がれはじめた。
れいわの"れ"(れ↑いわ)にアクセントをつけるのか?
れいわをそのまま平板(れ→いわ)に読むのか?
最近ようやく、れにアクセントをつけた読みが定着してきた。聞いたひとが理解すれば、どちらでもよいこのイントネーションやアクセントなのだが、ナレーターにとってもっとも厄介な壁であり、克服せねばならない試練。原稿の作り手も読み手も、アクセントに気を配ったつもりでも、第三者から指摘を受けたりするから困ったものだ。そんな原稿に潜む多くのアクセントトラップを、”Seek And Destroy”しながら、ナレーターはナレーション読みに臨んでいる。

Milk (Ode To Billy)

今回の「令和」のイントネーション&アクセントは、B'zのアーティスト名読みと被る。一般的に、B'zは平板読み(ビ→ーズ)が親しまれているが、正式な読みは、手芸などに用いられる「ビーズ」と同じ”ビ”(ビ↑ーズ)にアクセントをつけた発音、メタル的に例えるならば、Anthrax『Attack Of The Killer Bs』の"ビ↑ーズ"のイントネーションである。これをもとに「令和」のアクセントを例えるならば、Derek and the Dominos"Leyla(いとしのレイラ)"のアクセントが「令和」である。

マックかマクドか、イアンも知りたい

Van Halen - "Hot For Teacher" (Official Music Video)

ママも先生も教えてはくれないのに、気になる人には非常に気になるこの「イントネーション&アクセント」。夏到来を感じさせる令和元年の5月末、ナレーター佐藤を悩ませたのは、まさかの「日傘」のイントネーション。”ひ→がさ”かと思いきや”ひ↑がさ”なのだ。そんな季節の話題になるとよく耳にするのが、「旬の食材」などに聞く”旬”のイントネーション。ナレーターやアナウンサーなど情報を伝える側は、旬を平板に読むが(しゅ→ん)、可愛いアイドルレポーターなどは、まだまだ小栗旬さんの”旬”(しゅ↑ん)のアクセントで読んでいるケースが多い。

人名で言うならば、引退された安室奈美恵さんのドキュメンタリー番組で知ったのが、実は安室という名字の発音は、親父にも殴られたことがないニュータイプ、あのアムロ・レイの呼び名”アムロ”(ア↑ムロ)のイントネーションだったことに驚いた。まぁ、自分の名前も両親は”ア↑サト”と呼ぶが、友人たちは皆”ア→サト”と呼んでくれている。実はこの「母音」に関しては、地域によってアクセントの違いが如実に出がちであり、「中高型」と呼ばれる関西地方のイントネーションで育ったナレーターは苦戦されるそうだ。この奥深きイントネーション事情は、松本清張『砂の器』を読まれたことのある方ならお分かりだろう。

Hard As Iron

Helloween - Heavy Metal Hamsters

さて本題、このコラム的にどうしても歯がゆいのが、「メタル」のイントネーション。実はアクセント辞典をめくると、前述の「令和」とは逆で、平板の「メ→タル」と読むのが、コレクトリーディングのようだ。ただ、これはあくまでも「金属」のメタルであり、音楽ジャンル"ヘヴィメタル"の愛称も「メ→タル」なのか?
ならば「ヘビーメタル」で調べてみると、「ヘビースモーカー」以降のヘビーのワードはない。では、"へヴィー"または"へヴィ"で調べてみると、「Velvet」を"ベルベット"と明記する「日本語発音アクセント辞典」には、ヴは存在しないのだ。
では改めて"メ→タル"を引用してみた。"頑丈なメタルで繋がれている"、"メタル専門の工場に訪れた"、"職人の技が凝縮されたメタル"、"メタルとメタルが混合し"、"見事なメタルの調和が"・・・等々、職業:ナレーターの自分としては、このような文章を読んだことも、言ったこともない。
しいて言うならば、井上陽水"リバーサイドホテル"の歌詞"部屋のドアは金属のメタルで"のフレーズぐらいか。「メタル合金」、「メタル塗装」、「メタル粒子」などの"メタルのさま&状態"を指す「メ→タリック」の意味合いのほうが馴染みがある。
ってことは、我々が愛する"ヘヴィメタル"の「メタル」のイントネーションも「メ→タル」なのだろうと確信したいのだが、ご存知本来の"Metal"の英語発音は「メ↑タル」なのだから、論点が振り出しに戻ってしまう。

どっちの鋼鉄ショー

Rage - True Face in Everyone (OFFICIAL VIDEO)

そう、ここ最近、英語発音の「メ↑タル」を使うメタラーが増えてきている気がする。自分よりも一回り下の世代が、"オレもメ↑タル好きですよ"、"シンフォニックなメ↑タルばっか聴いてます"など、己のメタル愛を自分に投げ掛けてくれる。禁句の"ヘビメタ"を言わなければ、老いも若きもメタル好きは皆同志なのだが、「メ→タル好きですよ」に対して「メ↑タル好きですよ」は、なんとなく「メ↑タル(も)好きですよ」という、メタルとの微かな距離感を感じてしまうのは、"レイジ"は、Rage Against The Machineではなく、ジャーマンメタルのRAGEを挙げてしまうメタラーなら、このもやもやを共感してくれると思っている。因みにSkid Rowは、Gary Mooreではなく、"Youth Gone Wild"派の自分だけれども。

Impellitteri - "Symptom Of The Universe" (Official Music Video) [Black Sabbath Cover]

すっかり「コンプライアンス」なんて、カタカナ英語が浸透してきている。んじゃあ、英語でコンプライアンス(Compliance)って書いてみろと言われても、"Annihilator"ばりにスペルに困惑し、ガバナンス(Governance)って書いてみろと言われても"Impellitteri"ばりにスペルに躊躇してしまう。それだけ、中学英語ではない英単語が、日本語内に溶け込んでいる時代。ネット文化の普及により、グローバル化が加速し、外来語もカタカナ英単語そのままに上陸している。そんな時代をリアルタイムに経てきた世代は、英語本来の「メ↑タル」となっていったのかも知れない。

鎌首をもたげたスキツォイドマン

Aerosmith - Walk This Way (Audio)

対して我々「メ→タル」世代は、摩訶不思議な邦題による和訳で、英語を解釈してきた世代。いまだに『原子心母』(Atom Heart Mother/Pink Froyd)の意味はちんぷんかんぷんだが、夜中に野良ネコが横切れば"暗闇にドッキリ"(”Shot In The Dark”/Ozzy Osborne)するし、ついつい後輩には"お説教"("Walk This Way"/Aerosmith)しがちだし、化学の実験で硫酸を使えば"硫酸どろどろなんでも溶かす"(”I ncarnated Solvent Abuse”/Carcass)んだと実感するし、キャバクラでつい場内指名しちゃったら、"魔性の女"(”Still Love That Little Devil”/MSG)だったと後に後悔し、誤ったイントネーションでナレーション読みしてしまったら、その都度"対自核"("Look At Yourself"/Uriah Heep)しているのだ。

Twisted Sister -- We're Not Gonna Take it [Extended Version] OFFICIAL MUSIC VIDEO

「アクセント」とは、印象を強める意味合いでもある。
癖が強いんじゃ!っと言いたくなるほど、アクセント効きすぎのロックシーンを垣間見てきた「メ→タル」世代。そんな我々が、愛する「メ→タル」を肴に酒を交わすと、そのアクセント濃いめの滑稽さに盛り上がる。カッコ良かったなぁーというリスペクトが、いつしかアホだよなぁーと、愛あるディスリが始まるのもまた「メ→タル」ではないだろうか。
「カッコいいけどダサい」と「ダサいけどかっこいい」、そして「メ→タル」と「メ↑タル」・・・。このメタルの二面性に振り回されながら、メタル親父は今日も、アクセントトラップ潜むナレーション原稿に対して、「小さすぎて、読めなぁーい!!」っと、"老眼"という名の小悪魔に"Shout At The Devil"している。