ナレーションはメタラーにまかせろ Vol.12「20年目を迎えたメタルナレーターにナレーションはまかせられるのか?!前編」

ナレーションはメタラーにまかせろ
とにかく”時間が掛かった”ナレーター業20年の軌跡を綴らせていただいた。

ナレーターという職業に就き20年目

Slayer - Seasons In The Abyss (Official Video)


SLAYER、KISSが活動にピリオドを打った2019年下半期が終わり、令和最初の新年となる2020年が到来。私事ながら、「ナレーター」という職業に就き20年目に突入した。
『あっという間の20年』などとは微塵にも感じず、紆余曲折を経た重みある年月を過ごしてきたように思う。

さて、こんな自分の過ごした歳月に重なるメタル楽曲がないか思いを巡らせてみたものの、ライナーノーツに記載された和訳の歌詞には目を通すこともなく、卓越されたテクニックと美旋律だけでメタルを愛してきた自分には、苦節20年の自分の人生と重なる楽曲が、残念ながらすぐには思い浮かべることができなかった。

L.A. Guns - Rip and Tear


愛だの恋だの、セックスだの酒だの、甘酸っぱくてバッドボーイな世界観を持つ80年代メタルを主食としてきた小生だが、刹那的でありながら哲学的、あるいは何らかの問題を提起する深みある歌詞のメタル楽曲が数多くあることも理解はしていたつもりだが。

リフやギターソロ等の『サウンド』だけでメタルを愛し、ヴォーカリストが投げ掛けるメッセージに目を向けなかった小生のCDラックには、マイク・ヴァーニー率いる「シュラプネル・レコード」からリリースされた、高速ギタリスト陣の音源が名を連ねている。

Racer X - Y.R.O. (Official Audio)


それらの『速ければいい』という世界観に通じるかのように、ナレーションの現場でも、音感だけに頼った表面的なナレーションを、駆け出しの頃はしていたように思う。
ナレーション原稿に真摯に向き合わず、映像と音の空気感に合うような、それらしい声をあてはめ、何を読んでも一辺倒な読みばかりをしていた。

案の定そんなスタイルは徐々に通じなくなり、文末に「!」が少ない原稿を読む機会が増えてきてからは、自分のナレーションスタイルは、現場に順応し、試行錯誤しながら変化していった。
『速ければいい』という価値観同様、『いい声で読めばいい』ではないことが身に染みてわかってきたからである。

Dream Theaterの"Take The Time"という曲

 (23118)


そのように変遷を経ながらも、ナレーターとして20年のキャリアを重ねてきた自分の人生に重ねられる曲を「Time」というワードを軸に探索し、ようやく辿り着いたのが、Dream Theaterの"Take The Time"という曲。

1992年にリリースされた、言わずと知れた大名盤『Images And Words』収録楽曲。『蘇るドラマティック・プログレシッヴ伝説』と記された帯の邦盤をお持ちの方は、是非ともライナーノーツ記載の中村美夏氏和訳の歌詞をご覧になっていただきたい。

Dream Theater - Take The Time [OFFICIAL VIDEO]


すげぇーいい歌詞ではないか。

何をいまさらという感もあるが、10代、20代だった頃の自分では、おそらくこの歌詞は心に響かなかったに違いない。40代半ばを迎え浮き沈み続くフリーランスの時間を経たからこそ、ようやく28年前の楽曲の歌詞が突き刺さったような気がしてならない。

27歳で脱サラし養成所へと入所、2000年に声優事務所に所属。この仕事だけで生活出来るようになったのが30歳の頃・・・。押し寄せる波に対し、時間がない時間がないと焦りながらも、20代後半ゆえの『なんとかなるさ』という変な開き直り。先輩や後輩、同業者と自分を比較し、思い上がったり激しく妬んだりする胸騒ぎの日々。
モチベーション、ポテンシャル、スキル、これらの向上に対してもがいた20年間は、何度も何度も振り出しに戻っていたような気がする。

この”Take The Time”の作詞は、ジェイムズ・ラブリエ以外のDream Theater結成メンバー4人による共作。ジョン・ペトルーシ、マイク・ポートノイ、ケヴィン・ムーア、ジョン・マイアング、凄腕ミュージシャンの4人が、稀代のヴォーカリスト・ジェイムズ・ラブリエを迎え完成した「Images And Words」。1989年のデビューアルバム「When Dream and Day Unite」から3年を経てリリースされた名盤だ。今作がリリースされるまで、ヴォーカリスト不在が2年も続いた彼らが「時間を掛け」アルバムを完成させた道のりへの思いが、”Take The Time”の歌詞に込められているのではないか。

プログレッシブにしてメロディアス、ウルトラテクニックを駆使するプレイヤーたちと、伸びやかなハイトーンヴォーカル。8分以上ある楽曲なのに、飽きの来ないゾクゾクさせる見事な構成の”Take The Time”。疾風のように、緩やかに、激しくしなやかに繰り広げられる変拍子構成において、とある映画のセリフが曲中に盛り込まれている事をご存知だろうか。
Dream Theaterファンの皆様には当たり前の情報なのかも知れないが。

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この記事のライター

佐藤 アサト
佐藤 アサト
1973年8月26日、神奈川県鎌倉市出身。高校時代は米ワシントン州滞在。大学卒業後、サラリーマンを4年半経験。後、2000年から声優事務所に所属し、現在ナレーターとして、TV、CM、Webなどあらゆる映像コンテンツにて活動している。