メタル金融論-メタル・メルトダウン Vol.13「恐怖指数(VIX)」

メタル金融論~メタル・メルトダウン
金融市場が大荒れだ。恐怖に苛まれている市場関係者も多いだろう。新型コロナウィルスの収束も見えない。市場関係者だけでなく、世界中の人々が恐怖に包まれている。今回は、恐怖指数と呼ばれる市場の荒れ具合を表す指数を解説するとともに、メタルと恐怖の関係についても考察してみたい。

怖いメタル

恐怖はメタルの重要なテーマの1つである。

曲そのものがオドロオドロしいこともあれば、歌詞が怖かったり、コスチュームが奇怪だったり、悪魔的な世界観を演出するバンドもある。

BLACK SABBATHが1970年に発表した、その名もBLACK SABBATHは、筆者はリアルタイムで体験していないが、当時衝撃を持って受け止められただろう。
三全音と呼ばれる気味の悪い不協和音がスローペースで奏でられるイントロは印象的で、これから描かれようとする世界が何だかとても怖いものであるらしいことを予感させる。
OZZY OSBOURNEの粘りつくような独特なハイトーン・ヴォーカルが、気味の悪さを増長する。
いやー、このメタルは怖い。

BLACK SABBATH - "Black Sabbath" (Official Video)

BLACK SABBATH以降、怖いメタルの名曲・名バンドが続々と現れて来た。

ショック・ロックと呼ばれたALICE COOPER、ステージ上で血を吹いたり、火を吹いたりしたKISS、初期のW.A.S.P.のコスチュームは余りにも奇抜で、ファースト・シングルAnimalの歌詞は余りにも過激だった。
わが国では悪魔教の布教を企む聖飢魔IIが人気があり、その教団の世界観とライブにおけるデーモン閣下のコミカルなMCとのギャップがとても楽しい。
SLAYERはAngel of DeathやRaining Bloodといった曲のタイトルからして怖い(そして歌詞も怖い)数々の名曲を生み出した。ギタリストのKERRY KINGは見るからに怖い(若い頃はイケメンだった)。
最近では、怖い被り物をして、激しくパーカッションを叩きまくるSLIPKNOTが若者に人気である。

これらのアーティストは確かに恐怖を曲や演出に取り入れているが、とても人気があり、もちろん演奏は上手く、ライブはとんでもなく盛り上がる。
つまり、メタルでは怖いことは良いことなのである。

Slipknot - Unsainted at BBC Maida Vale Studios for the Radio 1 Rock Show

怖い金融市場

今の金融市場はとても怖い。
新型コロナウィルス の感染拡大を受けて、世界中の株価が大きく下落し、その後乱高下している。
前営業日からの株価の変化率が大きいだけでなく、1日の変化幅(安値と高値の差)が大きいのである。

日本市場について言えば、日経平均株価の大きな下落が始まったのは、2020年2月25日のことであった。
前営業日から400円以上下げて始まり、終値は781円安の22,605円であった。
これが暴落の始まりであり、一旦底を打ったように思われたのが3月19日、終値は16,553円であった。
この18営業日で6,834円、率にして29%の下落となった。

まさに落ちていくナイフである。

暴落以前の18営業日(1月28日〜2月21日)での前営業日終値と比べた平均変化率は0.02%に過ぎなかった。
1日の平均変化幅は232円である。
これに対して、2月25日以降18営業日での平均変化率は-1.88%、平均変化幅は710円である。
ほどんど変化しなかった株価が1日で2%近く値下がりするようになり、平均変化幅は3倍以上になってかなり荒っぽい相場になっていたことが分かる。

3月19日以降、米国の2兆ドルにものぼる巨額の経済対策を期待して、今度は株価は急激に上昇をし始めた。
上がるのは良いことだが、急激過ぎて怖い。
そもそも米国が2兆ドルもの資金を本当に調達したら、債券相場が怖い。
暴落前後の日経平均株価

暴落前後の日経平均株価

via 筆者作成(データ出所:トムソン・ロイター)

恐怖指数(VIX)

相場は変動しなければ儲けられない。
しかし、変動し過ぎる相場は儲けられる可能性も高いが、損する可能性も高いのでリスクが大きい。

このリスクの大きさを示す代表的な指標がボラティリティである。

過去のデータを用いて算出するヒストリカル・ボラティリティは、過去一定期間の株価の変化率の標準偏差である。
これを先程の暴落前後の18営業日の日経平均株価について計算すると、暴落前が0.99%、暴落後が2.04%であった。
このボラティリティは株価の1日での変動のしやすさを表す。
暴落の前後で、リスクの大きさが2倍以上になったことが分かる。

ボラティリティはオプションの価値を決定づける要因である。
オプションについては、筆者の以前のコラム、Vol.2「オプション理論(前編)〜オプション取引って何だ?」Vol.3「オプション理論(後編)〜オプションの価値ってどう考えればよい?」で解説したので参考にされたい。

簡単におさらいしておくと、オプションとは、あるモノを「将来」「今決めた価格で」売買する「権利」のことである。
例えば、モノの現在の価格が1,000円だったとして、それを1ヶ月後に500円で売る権利があったとしよう。
このオプションは、1ヶ月後にモノの価格が500円以下にまで低下していた場合に利益を得られる。
1ヶ月後のモノの価格が300円まで下落していれば、市場では300円でしか売れないものを500円で売ることができるので、200円の利益を得ることができるのだ。

現在1,000円のものが1ヶ月で500円以下にまで値下がりする可能性は普通なら極めて低いので、このオプションの現在の価値はタダ同然だろう。
しかし、市場の価格変動性が増してボラティリティが上昇すると、500円以下になる可能性が高まるので、オプションの価値は高まる。

米国市場では様々なオプションが取引されていて、その中にS&P500(米国の日経平均株価のようなもの)を対象とするオプションがある。
市場で決定されるオプションの価値は、投資家が将来のボラティリティを予測したもので、前述のヒストリカル・ボラティリティとは異なる。
オプションの価値が決まれば、そこから投資家が想定しているボラティリティを逆算することができ、これをインプライド・ボラティリティと呼ぶ。

S&P500オプションのインプライド・ボラティリティを指数化したものが、VIX指数である。
VIX指数は、投資家が将来の市場の価格変動性を、どのように予測しているかを表す。
価格が大きく上昇すると予測しても、大きく下落すると予測してもボラティリティは上昇するのでVIX指数は大きくなるが、大きな変化は下落時に発生することが多い。
相場は下がる時は速いが、上がる時はゆっくりなのだ。

そのためVIX指数は恐怖指数と呼ばれている。

次のグラフは、先程の日経平均株価と同じ期間について、VIX指数(終値)を見たものである。

日本で大暴落が始まる前日の2月24日からVIX指数は上昇をし始め、27日には30を超えた。
平常時のVIX指数は20以下であるとされ、30を超えると正常なトレードが困難になると言われる。
そして、3月16日にはついに80を超え、これは2008年のリーマン・ショック以来である。
ちなみに、VIX指数のこれまでの最高値はリーマンショック時の89.53であり、今回の相場はそれに迫る恐怖だったということだ。
VIX指数

VIX指数

via 筆者作成(データ出所:CBOE)

恐怖に打ち克つメタル

金融市場は当面怖い展開を続けそうだ。
投資を仕事にしている人は、その恐怖に立ち向かわなければならない。

新型コロナウィルスの収束も見えていない。
世界中の人がその恐怖に苦しめられている。

しかし、世界中が恐怖に包まれている中、1つの光明があるのだ!

どうやらメタルを聴くと、恐怖への耐性が上がるらしい!

METAL INJECTIONの記事で紹介されているアメリカ心理学会の報告書によると、SLAYERのAngel of Deathを30人の被験者に聴かせて、その前後でアンケートを取ったところ、死や死ぬことと上手く付き合える傾向が高まったとのことだ。

そうだ!私たちにはメタルがある!
メタルを聴いて恐怖に打ち克とうではないか!