メタル金融論-メタル・メルトダウン Vol.10「アクティブ運用とパッシブ運用」

メタル金融論~メタル・メルトダウン
素直に市場平均のリターンを狙うパッシブ運用と、市場平均を超過するリターンを目指すアクティブ運用とで、どちらが優れているかについてはしばしば論争になる。今回は両者の運用スタイルを解説するとともに、パフォーマンスの検証を行う。また、メタルの世界においても、一般に知られているメタルでは飽き足らずに、面白いメタルを発掘することに喜びを感じるアクティブ・メタルヘッズが居る。そうしたアクティブ・メタルヘッズが果たしている役割についても紹介したい。

アクティブ・メタルヘッズ

昔からメタルヘッズの中には、どこで情報収集しているのか、毎日どれだけメタルを聴いているのか分からないほど、色んなアーティストに詳しい人がいる。
伊藤政則氏認定のHEAVY METAL王座決定戦で優勝しちゃうような人である。
常により良いメタル、面白いメタルを求めて、情報収集に余念が無いのだろう。

今は誰もがインターネットで情報発信できるので、そういう識者が「このメタルを聴け!」的なサイトを運営していたり、変わったメタルを紹介していたりする。
なのでネットを検索すれば、昔なら一部の識者しか知り得なかったアーティストの情報の入手も容易だ。
そのため、識者はそのプライドにかけて、よりニッチな情報を求めて情報収集をエスカレートさせる。
メタルに詳しい人は他のメタルヘッズに尊敬されるからだ(とは限らないが...)。

こうしたアクティブ・メタルヘッズの存在は、アーティストにとって好ましい状況をもたらしている。
十分な資金力が無くても、自身のサイトを開設し、PVをYouTubeにアップしておけば、関心を持ってもらえるかもしれないからだ。
かくして最近では、これまでメタルの存在が知られていなかった地域のアーティストが発掘され、話題になることもある。

例えば、Эпидемия(英語表記: EPIDEMIA)は1993年に結成されたロシアのパワーメタルバンドである(Google翻訳ホント便利)。
歌詞はもちろんロシア語なので、何を歌っているかは分からない。
しかしなんと!今年の8月に初来日を果たした。
ロシア語で歌うバンドが来日するなんて、以前は考えられなかったことだ。

Эпидемия - Выбор Есть! (official video - премьера)

また、SCRATCHはアフリカはモザンビークのバンドである。
アフリカにもメタルはあるのだ。
コープスペイントに、すわブラック・メタルか、と慄いてしまったが、なーんだ!軽快なハード・ロックじゃんw
歌詞はモザンビークの言語だと思われ、何を歌っているのか分からないのは、ロシア語の場合と同様だ。
ところで、なんでコープスペイントなんだろ?

Scratch - Va fambi vamussiya ( Video by CrBoyProd. )

アクティブ vs パッシブ

アクティブ運用とは、投資対象の選別を行って、市場平均を上回るリターンを得ることを目指す投資スタイルである。
これに対して、市場平均と同等のリターンを目指す投資スタイルがパッシブ運用である。
単純な効率的市場仮説に基づくと、資産価値に関係する全ての情報が市場価格に反映しているので、割安も割高も無いから市場平均を超過するリターンを得ることは不可能である。
この仮説が成り立つならばパッシブ運用に理があるが、市場に非効率性があるならばアクティブ運用にチャンスがある。

投資家にはパッシブ運用よりアクティブ運用が好まれるようであり、野村資本市場クォータリー(2017 Autumn)によると、グローバルに見たときの2016年末運用資産は、ストックベースでアクティブ運用が全体の78%を占めている。
アクティブ運用が好まれる理由としては、スキルがあれば市場平均以上のリターンを実現することは可能だと信じられていることや、多くの投資家が市場平均のパフォーマンスに不満を抱いていることなどが挙げられる。

さて、市場平均と言っても漠然としているので、実務上はベンチマークとするインデックスを決める。
日本株投資の場合は日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)など、米国株の場合はS&P 500などがベンチマークとして採用される。

パッシブ運用ではポートフォリオの価値がベンチマークに連動すればよいので、ポートフォリオの資産構成と各資産への投資比率を、ベンチマークとなっているインデックスと同じにすればよい。
例えば、日経平均株価をベンチマークとするならば、日経平均に組み入れられている225銘柄を買えば、完全にベンチマークを模倣したポートフォリオとなる。
個人でやるならば、そうしたインデックスファンドを買うのが現実的である。
インデックスファンドは運用が単純であるため、運用報酬が安くて済むという利点がある。

これに対してアクティブ運用ではベンチマークに勝たなければいけないので、ファンド・マネージャーは徹底した調査を行なって投資対象を決める。
アクティブ・メタルヘッズが、手間と時間を掛けてより良いメタル、面白いメタルを探索するのと同じである。
つまり、アクティブ運用にはコストが掛かり、それが運用報酬に反映されることが投資家にとっての難点である。
また、投資対象の入れ替えを頻繁に行うため、売買手数料や税金などの運営コストも、パッシブ運用に比べて高くなる。

そうした意味で、自分が得たメタル情報を無料でサイトに公開してくれるアクティブ・メタルヘッズは良心的だ。
彼らにとっての報酬は名誉である。
やはり、メタルに詳しい人は尊敬しなければならない。

アクティブ運用のパフォーマンス

アクティブ運用は投資家に人気があるが、運用報酬が高い分、それに見合ったリターンが得られているかが問題となる。
そもそも市場平均を超過するリターンを狙ったものだから、リターンが市場平均を下回るようなことがあれば大失敗である。
運用報酬の安いインデックスファンドを、何も考えずに買っておけば良かったということになるのだ。

アクティブファンドの何%がベンチマークのリターンを下回ったかというデータについては、The Standard & Poor's Index Versus Active (SPIVA) Quarterly Scorecardsというものがある。
大型株式を対象としたアクティブファンドについて、2018年末の時点での投資期間別・地域別のデータをまとめたものが次の表である。
なお、ベンチマークとしているインデックスは、日本は東証株価指数、米国はS&P 500、欧州はS&P EUROPE 350である。
SPIVAのデータを基に筆者作成 (16251)

via SPIVAのデータを基に筆者作成
この表から分かるように、アクティブファンドのパフォーマンスは悪い意味で驚くべきものだ。
日本株については、2018年末から見て直近1年の投資期間では、8割を超えるアクティブファンドのリターンがベンチマークを下回っている。
投資期間3年と5年でも、5割以上がベンチマークを下回るリターンしか得られていない。

米国と欧州はもっと悲惨である。
米国株は6〜8割、欧州株にいたってはどの投資期間でも8割以上のアクティブファンドのリターンがベンチマークを下回っている。

これは効率的市場仮説が実は成り立っていて、アクティブファンドには意味が無いということなのか?

この点については1つ注意しなければならないことがある。
いずれも特定の国や地域の株式市場のインデックスをベンチマークとしていることである。
本当の意味での市場平均は、投資可能な全ての国、投資可能な全ての資産に分散投資した場合のリターンのことである。
しかし、それは分からない。

ただ、だとしてもアクティブ運用でパッシブ運用(正確にはインデックス運用)を上回るリターンを得ることは、相当困難なことのようである。

だからこそ、まだよく知られていないメタルを発掘して我々に紹介してくれるアクティブ・メタルヘッズの存在は貴重なのだ。
まだ聴いたことのない地域、まだ聴いたことのないアーティストのメタルに触れることは、投資の世界で本当の意味での市場平均に近づくことを意味する。
やはり、メタルに詳しい人は偉大である。